《草魔法師クロエの二度目の人生》136 混
あけましておめでとうございます。
本年もクロエとエメルをよろしくお願いします。
それを見送ると、校長が立ち上がり、私に向かって頭を下げた。
「クロエ嬢……いえ、ローゼンバルク辺境伯令嬢クロエ様、どうか、どうかこの話は外にらされませんように……あまりに……あまりに騒すぎる……」
「無かったことにしろと?」
思わず私の魔力がれる。すると、校長はビクッとを震わせつつも、私の目を真っ直ぐに見た。
「私も自白剤を飲んでいますので、正直に申します。できることならガブリエラ嬢の発言全て忘れてほしいです。でもそんなことは不可能だとわかっている。ダイアナ君はローゼンバルクの幹部ということならば。ただ、私たちも時間がしい! 軽々に判斷はできない」
そう言って首を何度も橫に振る。
しかし、どういう態度を取られようが、私の答えは一択だ。
「……祖父に報告し、指示を仰ぎます」
「辺境伯に……」
「先生方の立場、わからなくもないですが、私は怒ってます。大事な大事なダイアナを傷つけられたから。ダイアナの傷は私のせいで負ったもの。私がこの學校に來たばかりに! 私は、この學校を退學したいとこれまで何度も伝えたというのに!」
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『クロエ!』
エメルが耳元で唸ったあと、私の首筋をガブリと噛んだ。途端に頭が冷えた。
「……すいません。今回の件で言えば、八つ當たりですね。解決済みの問題を持ち出したりして……自白剤の影響で、常になく的になっています。ですが祖父に相談するのは決定事項です」
「やはり……ダメか……」
「そして、私にはおそらく王家の見張りがついています。この件を、きちんと報告するのか? なかったことにするのか……私は注目しておりますが、學校も対策を練っておくことをお勧めします」
「確かに」
「とりあえず、私とダイアナは、當分學校に來ません。よろしいでしょう? ですが隨時、迅速なご報告をお待ちしています」
校長は、はあと大きなため息をついたあと、気持ちを切り替えて居ずまいを正した。
「我々が手をこまねきなすすべもなかった命をクロエ様とダイアナくんは十分にその実力を発揮して救ってくれました。いずれ改めて謝の場を設けます。今後のことはまた連絡します」
◇◇◇
急ぎ屋敷に戻ると、ダイアナは彼の自室のベッドで橫たわり、ローゼンバルクと契約をしている醫者により、骨折箇所を固定されていた。そして、汗をかいてうなされていた。
「なるだけ足をかさないようにお願いします。あと、痛みと熱は今週いっぱい続くかと……高熱には十分に用心してください。薬はクロエ様の処方の方がよろしいかと」
「気を使わせてすいません。恩に著ます。先生の薬師が薬草切れしたときは聲をかけてください。すぐにご用意いたします」
使用人が醫者を丁寧に玄関に見送る。私は苦しげなダイアナから目が離せない。
『アイス』
エメルが一瞬で氷を作ってくれたので、それを袋にれて額や脇の下に置く。目についた汗を優しく拭う。
「ダイアナ……ごめんね……ごめんね……」
エメルが冷靜な聲で後ろから聲をかけてきた。
『クロエ、ひとまずローゼンバルクに戻るぞ!』
「そんな……こんなダイアナを置いて? そんなこと、できない」
私はブンブンと顔を橫に振る。
『クロエ、気持ちはわかる。でも今日一日で事態がきすぎた。ダイアナという護衛もない。これ以上王都にいても面倒ごとが立て続けに起こるだけだ』
「私のせいで怪我したダイアナを置いて、私だけ安全なところに戻れって言うの!? そんなのできっこない!」
『クロエ! それがダイアナのみだぞ!』
「大怪我してるときに、一人にされて寂しくない人間なんているわけないよっ!」
私とエメルが睨み合っていると、小さなノック音が聞こえ、ベルンが室した。両手で抱えられないほどの花を持って。
「クロエ様、エメル様、一足遅かったようです」
「ベルン?」
「王宮よりお見舞いの花と、クロエ様へのお茶會の招待狀です」
「……いつ?」
「明日です」
「どなたの名前で?」
「王妃殿下です」
今、私が屋敷にいることはバレている。王妃からのお茶會のいがあったのを蹴って、領地に戻るのはさすがにまずい。
「……すぐに、おじい様に連絡して。おじい様からの返事が來るまで、私は病気になる」
ベルンが小さく頷いた。
「よろしいかと。では心労から発熱し、面會謝絶ということにいたしましょう。して、花は?」
ベルンから花に視線を移す。ざっと見たところ毒花ではない。しかし、カラフルな王宮のものと思われるバラの中に、一般的ではない花が紛れている。
「確か、かすみ草の花言葉は無邪気。金魚草は……でしゃばり……」
「故意でしょうか?」
「さあ。でも私は〈草魔法〉MAX。気づくことは折り込み済みなんだろうね」
私がよほど目障りなのか? ならばなぜ放っておいてくれないのか?
『無邪気ねえ。無邪気で許されるのは五歳までだ』
エメルに頷く。無邪気や、悪気はなかった、を言い訳にする人間はロクなヤツじゃない。
「捨てたのを見咎められるのも面倒くさいから、いっちばんいい花瓶にれて、玄関の真ん中に飾っといて。花に罪はないから」
「かしこまりました」
ふと闇の中でキラリとるものが見えた。ベルンが歩み寄り窓を開けると、ガラスのようにき通った青い鳥。
「ジュード様の紙鳥です」
『ジュード、紙鳥使えるようになったのか? まあタンポポ手紙よりも早いし確実だからな』
「私がそばにいなければ、館様も使われますよ? まあでも、いささか速すぎますね」
確かに。〈木魔法〉マスターの祖父ならば、〈紙魔法〉の習得は難しいことではない。
ベルンが紙鳥にれると、數枚の便箋に変化した。
「やはり、先程の紙鳥ではなく學校の狀況までの手紙の返事です。ジュード様がこちらに向けてお発ちになりました。到著するまで決してくなと。全ての返事は自分が行うと。エメル様におかれましてはクロエ様からくれぐれも離れぬように、と」
ベルンから手紙を手渡され、私も目を走らせる。また、兄に面倒をかける……と思いつつも、ホッと力を抜く。
『オレがけないから、ジュードは馬……最短で四日後か。まあ仕方ない。ベルン、その間うまく躱して』
「かしこまりました。それではクロエ様、ダイアナのことは私に任せて今日はお休みください。そして明朝以降は起き上がってこられませぬように……念のために」
「……わかった」
この屋敷に、侵者がる可能はゼロではない。
腐っても王家。私より強い人材を數人くらいは囲っているだろう。
私は立ち上がり窓の外に向かって〈草魔法〉を流す。結界が強化される。そしてダイアナのベッドの周りにぐるっと二周蔦を這わせる。
不用意に近づくものに対して草繭を作り、ダイアナを囲うように。被害者で目撃者だ。狙われる可能はある。
「ベルン、今日は本當にありがとう。お休みなさい」
振り向きざまにそう言うと、ベルンがギュッと強めにハグしてくれた。
「クロエ様、安心しておやすみなさい。私がおそばにおります」
ベルンの眼差しはマリアのそれに、どんどん似てきた。
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