《草魔法師クロエの二度目の人生》138 読めない思
エリザベス王が帰るやいなや、私は解毒剤と水を大量に飲み、その回復を待つあいだもエメルとベルンが屋敷に結界を張りなおす。レベルMAXの魔法使いを二人もこの本丸である屋敷の中にれてしまったのだ。
ベルンが「ちっ!」と舌打ちして部屋を出て行く。何か仕掛けられていたのだろう。
二時間ほどで、私も毒が方抜けて、起き上がれるようになり、私も極細のとの草の種を撒き散らし、両手で全方向を覆うフォームを取る。
「長」
草を屋敷中隅々まで潛らせると、じたことのない魔力が屋裏や、廊下の絵畫の裏に張り付いている。それを力でねじ伏せ、潰す。
ようやく手にった私の安寧の地、おじい様のそのものであるこの屋敷を汚してくれた……許せない。
エメルが外周もチェックから戻ってきて、むむっと唸る。
『オレたち、取りこぼしてた?』
「……うん。4つだけ」
『ちぇっ! 五十は廄舎に飛ばしたんだけど』
廄舎に……先ほどの魔法師は、しばらく馬や牛の鼻息や鳴き聲を知することになるだろう。
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「ありがとうございます。王の付き人は二人ともレベルMAXでした。あいつらが仕込んだものを全て発見できるのは……クロエ様がMAX越えしているからでしょう」
戻ってきたベルンが頭を下げながら、周囲を警戒する。
「……役に立ってよかったわ」
トムじいのおかげだと、手首をさする。
『オレはMAX越え魔法はないからね〜』
「その代わり、エメルの知識は幅広いでしょ」
『まあね〜』
「ベルン、ダイアナの様子は? おじい様とお兄様に手紙は出してくれた?」
「王との面會中、ダイアナは念のため起こした上で、結界を張り巡らせておりました。接はありません。お館様とジュード様には連絡済みです。ジュード様はもうこちらに向かわれています」
「うん」
とりあえず、最優先事項はやり終えた。
ベルンが椅子をベッド橫に持ってきて座った。
エメルと三人、しばらく黙り込み……結局私が口火を切った。
「ガブリエラ、死んでしまったわ……」
ベルンがそっと私の手を取り、両手で包み込んだ。
◇◇◇
自分に言い聞かせるように、狀況を整理する。
「ダンジョンの壁面を破して、ダイアナを閉じ込めて殺しかけた実行犯はガブリエラ。ガブリエラはエリザベス王に命じられたと言った。しかしそのガブリエラは死んだ。死人に口なし」
『レベルMAXのクロエが作った自白剤を飲んで、王に命じられたと発言したのに?』
「校長は納得したそうよ。つまり自白剤なんて飲んでないことになったのでしょうね」
あの場にはもちろん、王家の偵もいただろうけれど、王(・)家(・)の(・)偵ゆえに、王族が不利になることを、勇んで口にするわけがないし、王が「そんな事実はない」と言えばあっさり無かったことになる。
「刃向かえば殺されると、はっきり示されたのです。教師の中には抵抗した人もいたかもしれないですが、自分の矜持のために、自分だけでなく自分の大切な人が殺されると思ったら……王の言いなりになるでしょうね」
ベルンが自分のを抑えて、平坦な聲で言う。
『クロエの作った自白剤を、バカにされたことになるけれど?』
それも見過ごすことのできない案件だけれども、それどころじゃない。
「ガブリエラ……死んでしまった」
私が自白剤を飲ませたせいで、王に殺された。直接的な原因は私?
冷靜に考えれば違うとわかる。彼がダイアナを殺しかけ、私は糾弾した。それだけ。
「ガブリエラ……」
昨日、彼の態度は悪かったけれど、相変わらずしかった。王子の隣に立つ資格があると自稱するだけはあった。ピンピンしていた。
しかし、もうこの世にいないのだ。
私は聖人君子ではない。ガブリエラのことは大嫌いだ。
一度目の人生において、ドミニク殿下とともに私を率先していじめ殺した相手。今回の人生では、ドミニク殿下の婚約者ではない私をピンポイントで狙ってきたことはなかったけれど、それでも何度も面倒ごとを引き起こしてくれた。
でも、嫌いであっても、「死ね」と思ったことはない。私に関わるな!ほっといて!というだけだ。
「自分に不都合な人間は排除する。最悪ですね」
そう、何もかも最悪。彼の死も、彼を口封じしたエリザベス王も、偵の報告で何もかも知っているうえで、王を容認した王家も、最悪。
そしてこうなることを見越せなかった私も……最悪だ。
『クロエ、何を考えているか手に取るようにわかるけれど、おまえは悪くない』
エメルがそう言いつつも、めるように私の頰をペロリと舐める。私はエメルにキスを返しながら、そばにいて力づけてほしい人を思い浮かべる。
「お兄様……」
到底私の手に負えない。賢く視野の広い兄ならば、今後のローゼンバルクの行を決めることができるだろう。今回ばかりは早く兄に頼ってしまいたい。
でも、兄が來るまでは私が持ち堪えなければ。
「私はローゼンバルクのクロエ。おじい様の娘。切り抜けるのよ……」
ベルンが私の肩をトントンと叩き、気負う私を落ち著かせる。
「エリザベス王による、ガブリエラ嬢への非道はとりあえず脇におき、まずは狀況を整理しましょうか」
私は頭をスッキリさせ、狀況をきちんと見つめることができるように、両頬をパシンと叩いて、ベッドの中ではあるけれど、座り直した。エメルも私の膝に落ち著く。
「そもそもダイアナをケガさせたのは、クロエ様を領地に戻さないため、とのこと。クロエ様に何か仕事をさせたかったか? クロエ様を人質にローゼンバルクをかしたかったか? というところでしょうか?」
『単純に、クロエに対する嫌がらせかもしれないよ?』
「會ったこともないクロエ様に?」
『王家にとって、イエスマンじゃない家臣など、目障りでしかないだろう。それにリドを奪われた! と思ってるかもしれないし?』
私はちょっと待ってとばかりに止める。
「奪ってないし! それにリド様の話では、エリザベス王との間にはなかったのよ?」
それはリド様の主観であり、王はリド様をしていた?
『人間は、はなくても、自分のものが自分の意思でなく取り上げられるのを嫌うものだ』
「そんな……」
そんな一つで、排除にかれたらお手上げだ。
「……私に対する個人的な恨みなら、手の打ちようがない。おじい様ごめんって謝って、あとは任せた! と言ってエメルと國を出る」
「それは……最善ではないにしろ、良策ですよ」
『うん。ようやく自分一人で出て行くと言わなくなったね。褒めてやる』
思わず苦笑した。私が死ねば、エメルも死ぬし、兄も追うと言われてるのだ。今回の人生、私は一人で生きているのではない。ちゃんと皆に相談する。
……獨斷は本當に一人ぼっちに追い詰められた時だけだ。
お久しぶりです!
お待たせしたあげく、暗めの展開で申し訳ないです。
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