《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》22 本當の戦の終わり
寢室にノックの音がして、メリッサが開けてくれる。
お父様とリリア、そしてアグリア殿下がミリーに先導されてってくる。
ベッドサイドの椅子にお父様とリリアが、そして橫に殿下が立ち、ミリーは橫に控えた。
メリッサとグェンナはベッドを挾んで向かい側だ。
「大丈夫か……クレア」
お父様が本當に心配しているような聲で私を呼ぶのでびっくりしてしまった。まだ呼吸は苦しいが、顔を見ると今まで見た事ないような、悲痛な顔をしている。
どうして? 私のこと、一番要らなかったからこの國に送ったのでしょう? なんて聞けない。今更惜しくなったにしても、目の前で殺されそうになった(演技)は効いたのだろうか。
リリアは青褪めた顔で橫に座って拳を握っている。間者を使って私を毒で殺そうとしたのは知ってるのよ、でも、覚悟が足らなかったのかしら。
「えぇ……、薬湯も、飲みましたから……直によくなる、かと……」
「……そうか」
お父様が悲痛な顔のまま頷いて立ち上がる。リリアも急いで立ち上がった。
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「我々は明日の朝発つ。……クレア、せめて苦しまずに」
ベッドから2人が離れた所で、お父様が言った。瞬間、ミリーの暗が私に向かって飛んできたのを、殿下の剣が弾き、メリッサとグェンナがミリーを取り押さえた。
「殘念ですわ、お父様。間者はみんな押さえました。……そして、私の周りにいる人も、みんな、洗いました」
メリッサの事はグェンナとミリーに。グェンナの事はメリッサとミリーに。ミリーの事はメリッサとグェンナにそれぞれ洗わせた。
王宮がいくら信を置いていても、心の中までは見通せない。
戦をしたのだ。この中で、ミリーだけが病で先に母を、戦で父を亡くしていた。私が憎くない筈がない。
中和剤をれたミルクティーすら、し痺れる味がした。平気で飲んでいたから、きっとミリーは焦ったに違いない。
リリアがボロを出したから、ではなく、ミルクティーに既に毒が仕込まれていたから、私はスープを先にした。一番最初に出てくるメニューだ。お父様もリリアも私が毒を飲んだ晩餐などその後口にしないだろう。
國と國の平和が先、私のことは後。
「離して! 離しなさいよ!」
ミリーが泣きながら暴れる。
どう見ても不利な狀況なのに、私に刃を向けた。やれるのなら、きっと殿下もお父様もリリアも殺したかったに違いない。
「殘念ですわ、お父様……私を殺したいでしょう。ですが、私は死ぬ気はありません。……この國の人の痛みに、殺される気もありません」
ミリーは父がその點で目を付けていた。人との逢瀬のフリをして祖國と繋がり、私を殺す機會を狙っていた。
父に私のことを報告していたのも彼。一番近くにいるメイドという立場と、古い貴族の第二子という立場、その上で暗の訓練を積んだ彼なら、私を殺すのはいつでも容易かった。
でも、彼はお父様たちが目の前にいる時に私を殺したかったようだ。ミルクティーの中に毒を仕込んだのは、私が予定より早く倒れればいいと思っての事だろう。
だけど、倒れなかった。驚いた顔はよく見えていた。そしてスープに変えてもらった。
作戦は筒抜けだったから、リリアもボロを出したのよ。あの子の淑教育は完璧なの……本來ならね。
「ミリー……、全部間に合わなくて、ごめんね……。でも、死んであげないから、だから……、國が変わるのを、見ていて」
とは言え、フェイトナム帝國に生家ごと押し付けられる事は決まっている。他の間者と一緒に。
部屋からミリーが連れ出され、呆然と立つお父様と、床にへたりこむリリア。私を守るためにメリッサとグェンナとアグリア殿下が、間に立つ。
「フェイトナム皇帝。私の婚約者でありあなたの娘に対する殺人の意思、確かに確認した。——連行しろ」
警備兵を呼んで、お父様とリリアが連れて行かれる。私はやっと解毒剤を飲んで、水をもう一杯飲んで、息を吐いた。
そう簡単に解毒されるものじゃない、
この後父とリリアをどうするのか、私はとにかく、平和であってくれればいい。
ミリーのような人は國中にいっぱい居るだろう。
「……良い方向に、すすめてください、アグリア、でんか……」
解毒剤の効果で眠くなる。私は意識が落ちていくまま、布団の上で寢息を立てた。
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