私は暫くポカンとしてしまった。

この部屋は私が來る前は空き部屋だったろうし、私のためにフェイトナム風の仕上げにしてある。

おで居心地よく過ごせているし、私は外に出たり１階の業務部にも顔を出すので部屋は２階でちょうどよかったが、窓の外に男がいる環境、は々まずいかもしれない。

ガーシュと名乗っていった青年は、褐のに一部を編み込んだ黒くて長い髪をしていた。王宮では見た事がない民族的な織の袖のない服を著ていて、軽。

名前を名乗って緒にしてくれ、と言うことは、名前を緒にすればいいのだろう。褐のの人が外を歩いていた、とでも言えばグェンナが教えてくれるかもしれない。

「クレア様、失禮します。夕飯にはお出しできそうですよ、プリン」

「グェンナ、本當？　ありがとう！　廚房の人たちにも後でお禮を伝えておいて」

私はプリンが食べられると聞いて、自分でも驚くほど喜んでいた。なんだかんだ祖國の味は祖國の味でしかったのかもしれない。

「あ、ねぇ、さっき外の庭を褐のの子が歩いて居たんだけど……バルク卿は日焼けだけど、もっとこう、地黒というか」

「あぁ、城の下働きに最近った子ですね。間者をフェイトナム帝國に返す時に、商人から借りて雇いれたうちの一人です。養蠶を行なっている國の子ですよ」

「そうだったの。こちらの國の人の髪は黒はあまり見かけないから、褐に長い黒髪で驚いたの。遠目だったけど服裝も変わっていたし」

グェンナは笑って頷いた。

「そうなんです、彼らは１０年契約でこちらに來ているので。希すれば永住権も與えられますが、小國だからでしょうか、民族の帰屬意識が高いんですよ。下働きなので服裝は好きにしていいんですけどね」

「知らなかったわ……、養蠶のことももっと勉強しないとね。この國は大きいから、うまくいけばかなり普及するわ」

「えぇ。まだ定著するには時間がかかりますから輸ですが……クレア様のウェディングドレスは、練絹で作るんですよ」

私はまた驚いて目を見開いた。

最高級品の練絹のウェディングドレス……？

獻上品で染められたが一反あがってきたのを見た事がある。お父様の服に仕立てると言っていたそれは、しい沢のある生地で、しだけらせて貰ったがあまりにらかなに驚いただ。

それを、ウェディングドレスとして私が著る……。

フェイトナム帝國にいた間、私を著飾らせようとする人は誰もいなかった。

恥ずかしくないように。見た目だけでも。多は見られるように。そう言われ続けてきた。

「きっとクレア様にとても似合いますよ。もちろん、豪奢な刺繍も職人の手によって施されますが、私も一針刺しますので。クレア様の幸せを願って」

「？　それは、慣習？」

「はい。親しい人のウェディングドレスに、一針刺して想いを刻むのです。クレア様が幸せでありますようにと、……私、親しいですよね？」

「もちろんよ！　とっても嬉しいわ。ふふ、……あら、なんだか……興しすぎたのかしら、目眩が……」

視界がぐるぐるとまわりはじめた。

グェンナが慌てて駆け寄り、私を支えてベッドに連れて行くと、服を緩めてくれる。

「最近は夜更かしでしたからね。よく寢てください。風が気持ちいいので窓は開けておきますね」

「えぇ、ありがとう……おやすみなさい」

「はい、おやすみなさいませ」

私の意識はフカフカの枕の上に、すーっと落ちていった。