《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》36 福利厚生と人事部

せっかくの休憩中なのに、私もこの2人もとんだ仕事中毒だ。

あんまり興味深そうにしているので、私は簡単な仕組みを説明することにした。これ以上新しいことを急に始めても人手も足りないし、式が先延ばしになってしまう。

「今、各地の役所も王宮も、自己申告した勤労時間を責任者がまとめて総務部で取りまとめて役職に応じた賃金を計算して、財務部から充てられた予算から支払っていますよね。人事部は、各役所に一人配置して、財務部から予め分かっている分と手當の分のお金を預かって役所で給與を支払ったり……つまり勤怠管理から給與の支払い、先のお茶を淹れたりする働く人への福利厚生を擔當する部署です」

アグリア殿下とバルク卿が視線をわす。そのまま2人であれこれと話し始めてしまった。

最近は仕事仕事で忙しくしていたが、こうやって仕事熱心な旦那様というのは、私にとっても嬉しい。

上に立つ人がちゃんと話を聞いて検討してくれる。な思考と頭の回転の早さ、剣の腕も立つし、見た目もとても素敵だ。

……私は面食いだとかではない、はず。わからない。

初めて好きになったのがアグリア殿下だから、好みを聞かれてもアグリア殿下としか答えようがない。

私の熱い視線に殿下は気付かずにバルク卿と話し込んでいたが、そんな私の様子をバルク卿がほろ苦く笑って見ていたことも、私は気付かなかった。

ちょうどいい所で置き時計の鐘が鳴ったので、それぞれの仕事に戻ることにした。

「夕飯は今日も7時だよ。また後でね」

「はい、アグリア殿下」

と言っても私の仕事はリュート探しだ。

メリッサとグェンナに、リュートという楽は知ってるか、と聞いたら特に知らないという。

王宮で使われている楽にはないという事だった。それは、メリッサが楽の管理をしている人に確認に行ってくれたから間違いない。

「クレア様、どうでしょう? 街に出かけて見ませんか?」

「いいですね! クレア様はまだ仕事以外で街に出たことが無いですもの、お忍びで行ってみませんか?」

街! 確かに、仕事で港町だとか印刷工房だとかを作るのに回ったけれど、市井の様子を見に行った事はない。買いもしてみたいし……と思って、はたと気付いた。

「私、お金持ってないわ……」

私の落膽した聲に、グェンナとメリッサが顔を見合わせる。

「あの、クレア様? クレア様用のご予算については、何も聞いていませんか?」

「それから、ここ數ヶ月のお給金も出ていますよ。いえもう、お給金というか、報償金ですねこれは」

「そ、そんなのあったの?!」

教育の敗北……と、思いかけたが、そもそも著飾るものは予め山のように用意されていたし、私にお給金が出ているとは全く思っていなかった。

「えっと……楽は、買えるくらい?」

「楽団が買えますよ」

とんだ大金をいつの間にか手にれていたらしい私は、詳しい金額を聞いて驚いた。

祖國ではそういう予算管理をされていて、支払いの金額などには私は興味を示さなかった。皇族としてそんなお金を気にするのは恥ずかしいと言われていたからだ。

「じゃあ、楽が買える金額とお小遣いを持って、明日3人でいきましょう?」

私の提案に、グェンナとメリッサも手を組んで喜んでいた。

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