《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》41 ネイジア會議

「ふぅむ……」

陛下、王妃様、アグリア殿下、バルク卿、今は騎士団に戻っていないジュリアス殿下には決まってから話を通す事として、あとはグェンナとメリッサと共に、私は昨夜の事を話した。

出來上がって來た國全の地図の草案の寫しに、さらに紙を継ぎ足して、私は祖國で見た地図と地形を思い出しながら、周辺諸國の大まかな地図を書いていく。

「このフェイトナム帝國とバラトニア王國の間にある山脈と山脈の間に、ネイジア國があります。小さな國で、養蠶による絹の量産が目立っていました。本當に小さな國なので、たぶん昨夜言っていた影のネイジアというのも、実働部隊はなく、それを支える裏方と、本業の養蠶の人數の方が多いでしょう。ただ、大きな國では……特に帝國、及びバラトニア王國の帝國と反対側の國々の貴族階級は、なかなかなまぐさいものです。昨日の口ぶりから、今までは個人単位、もしくは家と家同士の単位での爭いに影でく者として加擔しお金にしていたものだと思います。しかし……」

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私は山脈の一部を裂くように、ネイジア國からバラトニア王國への道を描いた。これはまだ地図に記されていない。商人たちのしる道ではない、新しいできたばかりの道なのだ。

「この道ができた。今までなまぐさい事に加擔してきたのがネイジア國というのはわざわざ喧伝していないでしょうが、バラトニア王國がフェイトナム帝國の反対側にある諸國との戦爭となった場合……その被害はネイジア國にもおよびます。私はきっかけですが、もともと國としてバラトニア王國にくだる気はあったと言っておりました。――私は、頭でっかちですが、ネイジアと組まない手は無いかと思います」

「クレア様!」

「あ、あの無禮な男のいう事を信じるのですか?!」

私の提案に難を示したのは、グェンナとメリッサだ。彼たちは、私と一緒にガーシュの技の冴えを見ている。

一歩間違えて敵に回せば、ここにいる全員がいつの間にか暗殺されていてもおかしくない。それほどの早業であり、得の知れない技だった。それだけに、怖いのは分かる。

だけど、私はガーシュに恐怖をじた事はない。彼はなんだかんだ禮節を知っているし、風土に合わせる。そして、先に自分たちの正を、私とアグリア殿下に揃って見せた。

アグリア殿下が王太子であり、私が王太子妃となる。この國の將來の國王と王妃である事を見越して、あえて國王陛下や王妃様の前に姿を現さなかった。それだけ脈々とけ継がれてきた『生業』なのだろう。そして、初めて國を外に開いたのが、バラトニア王國。

そのバラトニア王國の未來の話をするために、ガーシュは私に正を明かした。他にもいろいろやりようはあっただろうけど、私を試し、私を気にったという特別扱いにすることで、私はまたしても『生贄』になったのだ。一番気にったと言った私がある日死んでいたら……それは、ネイジアが我が國を裏切る、もしくは、見限る合図だ。

「怖くないと言ったらウソになります。ですが、彼らは道を開き、養蠶という伝を我が國に託してくれました。託す相手として選ばれたバラトニア王國に、庇護を求め、その代わりに更にネイジアという國のを賭けて託してくれているのです。……すべては陛下がお決めになることですが、私は、影のネイジアを引きれることに賛です」

「私も……、私も、賛する。私はネイジアはよく知らない。養蠶についても、私よりもバルク卿の方が詳しいだろう。ただ、養蠶はバラトニアにとって新たな特産品になる事、そして、ネイジア國とのつながりを強く持つことは、お互いの國のためになる。そう、我々がネイジアの盾になった……が、ネイジアも自國を守るために、バラトニアという盾も守る。そのつもりで接してきたのだと思うので。そして何より……ネイジア國はクレアを気にってしまった。さらわれるのはごめんです」

何故私がさらわれるという話になったのだろうか? 目を丸くしていると、何故かそこのところに同意が集まって行った。

「確かに、クレアを手放したくはない。嫌じゃ。孫の顔が見たい」

「クレアちゃんは私の娘よ。渡してなるものですか」

「私としても、クレア様には今後も國政に攜わっていただきたく思っております」

こんなことで満場一致しないでくださいませんかね? という言葉を飲み込んだ。もっと騒な話で、騒な確証をもって、騒に備えるためにネイジアと手を組もうという話をしていたはずだ。

「では、ネイジアと手を組もう。こちらの意思は、指定した時間にアグリアから伝えてくれ。正式な書面や細かな取り決めが必要ならば、私も時間を作る」

解散! となったのだが、私はいまいち納得しきれない顔で暫く呆けてしまった。

もっと大事なところで決めませんか?! とは、とてもじゃないが言える空気ではなかったのだ。

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