《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》44 極冬と呼ばれる國

「極めるに冬と書いて、極冬(きょくとう)と呼ばれる國がありまして。バラトニアはこの大陸の地図はお持ちじゃないでしょうが、これはネイジアが長年の仕事で作り上げた世界地図です、ご照覧ください」

ガーシュが懐から取り出した古い紙は幾重にも折りたたまれていて、テーブル一杯に広げられた。

私とアグリア殿下、陛下も覗き込む。私はフェイトナム帝國で見慣れた地図ではあるが、まずは國の地図とその普及にばかり目が行って、こういう大事なものを忘れてしまっていた。けない。

それにしても度の高い地図だ。ネイジアが大國ならば、それこそネイジア帝國としてフェイトナム帝國すら食いにしていたかもしれないと思う程の。

今はそんな妄想に浸っている訳にはいかないので、ガーシュの話に耳を傾ける。

「正式な名前はラ・ムースル王國。年中冬、この大陸……あー、世界の最北に位置する國です。2年以上前にこの國でも不漁があったでしょう? この極冬も不漁でしてね、保存食もあったし、この國は狩猟國家なんで栄養価の高い生きを狩って食ってる、まぁ食の國なんですが……。その不漁が響いてましてね。の數が減ってるんですわ。それで、自國では育たない穀類も買い付けてはいたんですが……獣が採れない、魚も採れないで國家予算は切迫気味。いよいよもってどこかの國を攻めるようなきにりました、全部が全部盡きてしまう前にね」

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「ふむ……理屈は分かる。だが、近くにも大國や同盟國などがあるだろう。なぜバラトニアが関係する?」

「海から攻めこめるからですよ」

ガーシュは、ぐるりと海を回ってバラトニアの港までをラ・ムースル王國を結んだ。

確かに、この極冬の國とバラトニアの港以外は、海路で攻め込み食糧をせしめるのに適した國はない。

海を渡っても1日も掛からない職人の國だって、食糧は自國の分を賄い切れていない。攻め込んでも味しい所はない。

「今まではフェイトナム帝國が邪魔でしたしね。それに、まだ食えていた。はそりゃ一定以上狩ったら再度増えるまで時間がかかる。なんとか保存食と魚で食いつないでますが、クジラってでっかい魚も獲れなくなった。どうやら不漁の年に目が変わったらしく、暖かい海の方へと流れて行って帰ってきてねぇって事みたいです。で、今せっせと造船してます」

造船、と聞いての気が引いた。港町は商會も多く、大事な易窓口だ。海沿いに続く鉱山を持つ國ともそこからが一番近い。戦爭になれば、この國の発展の要もつぶれる。何よりも人死にが出る。

私の頭からさぁっとの気が引いていく。結婚式や責正爵の話をいったん止めてでも、何か対策を考えなければいけない。

「食べ換するものがあっちの國にはねぇんですよ。基本的には狩猟民族で、通貨も王侯貴族が使うための外貨位です。著るもの……この場合は実用的な服じゃなく、ドレスとか寶飾品とか……だって自國じゃあ作れない。それに今はそんなもの作るより、食いをどうにかしないとって所らしいんで……どうやら飢が広まってるようでね」

難しい顔で陛下は黙り込んだ。

この國は今、戦後の復興と新しい技を取りれるために、國庫を削って発展していこうとしている。

海から攻め込まれたとして、こちらは陸、相手は海、港町に守りを配置したとしても、また疲弊する。

私もの気の引いた頭で必死に考えた。要は、極冬の國は食べが安定してしい。だが、対価がない。もう攻め込むしかない、という判斷に至るところまで來ている。

バラトニアも、対価が無いのに食糧を卸す程、今余裕があるわけではない。様々な國との取引があるし、一度戦爭で無くなった糧食を再度蓄えているところだ。だが、易ならば卸せる食糧は無い事もない。

「ちなみに、造船とは言っても……どのくらいの船を、どのくらい作っているの?」

「極冬は木材は困ってないんでね。雪山の木を切り倒して技者総出で……最後に確認した時には30は、一隻あたり兵士200人を乗せる船が出來てましたね。それが2週間前にあがってきた報告で、まだせっせと造っている……一萬の兵力で総力戦で乗り込んでくる気でしょう」

「……一萬。一隻に、200人……」

陸上戦とは違う。投石などを積んでいたり、クジラを獲る事ができる技のある船ならば、近海まで近寄って遠距離から陸上を攻撃することもできる。こちらにも船はあるが、あくまで易船だ。細かく兵を送り込んで白兵戦に持ち込むこともできるだろうけれど、兵を送り込んでは戻ってる間に船そのが捕縛されたり壊されては意味が無い。

そもそも、戦爭をしたくない。

ガーシュをふと見ると、悪戯がバレたような顔をしている。私は訝しんで尋ねた。

「ガーシュ、何か……戦爭を回避する手段を、ネイジアでは考えてあるのね?」

「クレア様には隠し事ができないなぁ。という冗談は置いておくとして、こっからはネイジアからの提案です。バラトニア國王、極冬の船を買う気はありませんかい?」

「何のために?」

「言ったでしょう、暖かい海にクジラは流れたって。魚ももちろんね。……つまり、兵士200人を乗せられる船を雇って、極冬の漁師を乗せて、漁業をかにするってのはどうかなと思うんですけど」

ガーシュの言葉に、私の頭の中ではぐるぐると、勝手に計畫が回り始めた。

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