《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》47 親書の返事

一週間後、本當にガーシュは親書の返事を持って王宮にやってきた。今日は長老は居ない、彼だけが王宮の下働きをいつも通りさっさと終わらせて、気軽な様子で陛下の執務室に訪ねてきたのだ。

その一週間の間を私たちも無駄にはしなかった。まず、陛下への取次の役人と、バルク卿にはネイジアの話を通してある。バルク卿と取次の人に絞ったのは、ネイジアの『仕事』の質上あまり喧伝するものではないと判斷したためだ。

ただ、同盟條約を結んだことは早めに公にした方がいいという聲がバルク卿からあがった。ネイジアとバラトニアだけが養蠶技を持っていることと、今後極冬の他にも國と國との繋がりや戦の予兆が出たときに、ネイジアを公には守る立場にある事を國民に知らせるべきだという意見だった。

私も、もちろんアグリア殿下も賛同した。そこは隠さなくてもいいと思う。養蠶の技だけでも大変な利益をもたらしてくれる國だ。蠶という蟲の育と定著からなので時間はかかるが、絹糸が紡げるようになればバラトニアは大いに富む。

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その技をもたらしてくれたネイジアを守るという同盟條約に関しては隠し立てする必要はない。屬國という扱いで広めてしまうと、ネイジアからの納稅を言い出す貴族が……殘念ながらどこの國にもいる。あえて、同盟、として発するべきだというのがバルク卿の意見だった。

各役所との連絡は綿に取っている。すぐに総務部でネイジア國とバラトニア王國の同盟條約の旨を記した書面を作り、印刷に回して各地に配った。

同時に、麥の貯蔵がある所は貯蔵の3分の2を港町に集めるようにと、陛下は指示を出した。それは國庫で買い付けることとして、一先ずは極冬の代表者が船で現れた時にすぐにも食糧を渡せるように準備した。

そして、ガーシュの來訪。私は取次の人に呼び出されるまま、國庫の殘りで買い付けた麥の分を何で補填するか、そういう関係を話し合うための財務部に詰めていたが、さっそくお聲がかかった。

バルク卿と私、アグリア殿下が陛下の執務室に向かい、取次の部屋で待っていたガーシュと共に中にる。

ガーシュは何でもないのように懐から親書の返事を取り出した。

陛下は無言のまま機に置かれた返事の封蝋を切り、中を読み進めて深い息を吐いた。

「……助かったぞ、ガーシュ殿。戦爭は回避、あちらはせっせと造っていた船を麥の輸送用にとりあえず10隻寄越す、ということのようだ」

「それは重畳。俺らも戦爭は嫌なんでね……、回避できるならそれに越したことはありません」

私はなんだかんだ戦爭にならないか心配していたところもあり、その場にへたり込んでしまった。両側からバルク卿とアグリア殿下が支えてソファに座らせてくれたが、なんだか泣きそうだ。

「よかった……」

戦爭は禍を生む。関係を複雑にし、さらにはどこにもぶつけようのない怒りや悲しみに囚われている人はまだこの國にも多くいる。

再び開戦、となったとして、一番の被害を被るのは兵ではない、平民だ。

土地は荒らされ、収穫したものをこそぎ持っていかれ、自分たちはいつ殺されるか分からないまま飢えを堪えて待つ。

私は先の戦爭では王城に居た。王都まで攻め込まれる事はなかったが、城の中も不安そうな気配でいっぱいだった。

バラトニア王國は獨立したいだけだから大丈夫よ、とめていた私がけない。こうしてバラトニアに來て、様々な人達と接して分かった。不安で當たり前だ。不安をじなかった私が麻痺していた。

新しい文化を一緒に作って行く。その中で知り合った人たちの生活が脅かされない事に、本當に、心から、安心して涙が出た。

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