《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》49 支度が始まってしまった

極冬との易條約を結んだ後は、ほぼほぼ平常業務に戻った。

責正爵についての本や取り決め、験の仕組み等の細かなことは私の手を離れてバルク卿が引き継ぎ、アグリア殿下は極冬との易、遠洋漁業についてなどをグレン侯爵と陛下と話し合い、細かな取り決めを行った。

船の仕組みやどうやって1ヶ月単位で魚を保存するのかなど興味は盡きなかったのだが、私はいよいよ、結婚式に向けてとしての支度を始めることになってしまった。

採寸から始めて、生地選び、デザインの打ち合わせ等が私の部屋でだらけで行われていく。王妃様も立ち會い、まだバラトニアでは生産制にっていない、ネイジアの練り絹を使った白いドレスにする事に正式に決まった。

それだけでも目玉が飛び出そうな金額の筈だが、一生に一度の事よ! と王妃様が譲らなかった。たしかに、責正爵という新しい仕組みの下、結婚の証書をわす、というこの國で初めての事でもあるし、華やかでもいいのかもしれない。

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ただ、私のこのぼんやりとした薄いプラチナブロンドに灰の瞳というのは、白いドレスだと余計にぼんやりするのではないか、と私が零したら、その場にいた全員が首を大きく橫に振ったのには私は首を傾げるしかなかったのだけれど。ぼんやりに真っ白なんて、傍目からみたら石膏像みたいじゃないだろうか?

「あのね、クレアちゃんはすっごく素敵な花嫁になるわ。私が保証する。だから自分の事、ぼんやり、だなんて言っちゃ駄目よ」

「え、えぇ、あの、はい……」

王妃様が私の手を両手で握って鬼気迫る表で言ってきたのだが、私は自分の彩をぼんやりだと思っているのは事実なので、曖昧に頷くしかできなかった。

しかし、デザイナーが紙を使ってドレスの形を起こすのを見ていて、し嬉しくなった。

紙が普及している。今まではフェイトナム帝國のデザイン畫や、そのまま服を輸したり、服を作る時には輸したものを真似て造ったりと紙が無い事で隨分不便だったらしい。

溢れる創作意を紙にぶつけられるようになった服飾や寶飾の業界は、どんどん質のいいデザイナーが生まれ、競爭し、今や最も賑わう市場になっている。

市民の服裝もしずつバラトニアの気候に合わせながら、変化していっている。今までフェイトナム帝國とあまり変わらなかったように見えた街並みが、平民や貴族の服裝の変化でバラトニア王國のになっていく景は、私にとって嬉しい事だった。

私のウエディングドレスを擔當してくれるのは、王妃様よりし年上のマダムだ。彼のデザイン案は、フェイトナム帝國の保守的なデザインは殘しつつ(今はデザインの奇抜さを競っているところもある、下手な人に頼むととんでもないデザインの服が出される可能がある)練り絹という滅多と無い素材を活かした華やかなものだ。

式は秋ごろなので、袖の先にレースをあしらっている。手袋は付けず、定番のプリンセスラインの大きく膨らんだスカートに、首から肩とデコルテまではレースで覆うようだ。

そして、極冬からは意外なが屆いた。あまりフェイトナム帝國でも浸していない、真珠、という寶石だ。なんと貝から採れるらしいのだが、それがまた練り絹と合う煌びやかな白い丸い寶石だ。

外貨が足りない場合に、という事でグレン侯爵が持ってきたものなのだが、加工しやすく、形は均一でしい。鉱山からはとれない寶石というのも珍しいし、真っ白なこの石は大きさもまばらだった。

食べても味しい貝だというので、養はできないのか、と聞いてみたが、今は難しいとの事だった。それはそうだろう、攻め込むために船をせっせと造っていたのだ。飢えは何よりも優先して解決されるべき問題だろう。

食べておいしく、中に寶石のった貝……これは、うまくやれば極冬が他の國とも易できる品になるはずだ。バラトニア王國だけが穀倉地帯を抱えているわけでは無い。極冬は雪に斷絶された國だというから、この國でもっと商品価値のあるものを見つけられるかもしれない。

新婚旅行に極冬に行ってみたい、と言ったら殿下は呆れるだろうか? いや、その前に新婚旅行はできるのかな……?

などと考えているうちに、ではこれで、と私のウエディングドレスのデザインが決まっていた。

練り絹にあえて沢のない糸で華やかな白い刺繍を施し、ところどころに真珠をあしらうデザインだった。

私はこのデザインを心から気にった。的センスは無いけれど、練り絹はネイジアとの、真珠は極冬との繋がりを表すようで、それでいながら形はフェイトナム帝國でも定番のウエディングドレスの形。

このバラトニア王國という國が、獨立し、新たな制度を設立する、そういう節目に相応しい気がする。

……あと、これだけ豪奢なドレスを著たら、アグリア殿下も綺麗だと言ってくれるかもしれない、という気持ちも、もちろんあったのだけど。なんだか王妃様にされそうな気がしたので、私は「とっても気にりました」と笑顔で告げて緒にしておくことにした。

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