《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》53 新婚初夜

窓の外にはまだ庭で騒ぐ宴の音が聞こえ、篝火が木の枝葉のからちらついて見える。

結婚式の後の披宴は、初めてバラトニア王國に來た時の宴と違い、コルセットを締め上げられたまま參加となったので、あまり食べる事はできなかった。そして、アグリア殿下と私は主役でありながら、早々に宴會を切り上げることとなった。

私はもう、それを聞いてようやく、そういえば今日は新婚初夜だった、と思い當たって頭が真っ白になってしまい、赤くなったり青くなったりしながらウエディングドレスの頃を解かれ、湯浴みを終えて特別に綺麗な寢間著に著替え、部屋で待つようにと言われてソファに座っていた。

なんとか懇願してミルクティーを淹れてもらったけれど、そのミルクティーも溫くなってしまった。冷めても味しいにしても、私はまだ接吻もしていないし、と思うとその先の想像はできなかった。

お部屋でお待ちください、と言ってグェンナたちは去って行ったけれど、私は落ち著かないあまりに逆に何も考えられず、くこともできず、だんだんと眠くなってきてしまった。これはまずい。

私の頭が回らない事態というのは中々ないのではないだろうか。思考停止していると、眠気が襲ってくる。

以前ガーシュに貰った丸薬を飲もうかと思ったけれど、あれは疲労回復の薬だったようだし、そう考えると今飲んでしまうと逆にぐっすり眠ってしまいそうな気もする。

どんな顔でアグリア殿下を迎えればいいのだろう。と、思っている矢先にドアをノックする音がした。

「ひゃいっ! ど、どうぞ!」

私は見事に裏返った聲で返事をしてしまい、アグリア殿下がし遅れて微笑みながら扉をそっと開けて中にって來た。

彼も寢間著姿だ。なんだか、夜はいつも一緒にお茶をしている筈なのに、変なじがする。

「クレア、お邪魔するね。……張してるんだろう?」

「…………はい。申し訳ありません、アグリア殿下」

慌てて茶を置いて立ち上がって出迎えた私の顔は真っ赤だったことだろう。張しないはずがないというか、免疫はほぼ0というか、アグリア殿下だからいい、という気持ちはあるけれど、いっそ政略結婚だったらよかったのかもしれない、とか々と急に頭の中に言葉があふれてきてしまう。

「謝る事はないよ。ね、おいで」

こんな時でも優しく笑ったアグリア殿下は、私の手を引いてベッドに座ると隣をポンポンと叩いて示した。

手を繋いだり、頭をでられたり、しずつ慣れて來たつもりでも全くそんなことはない。これは、これ。また別の事案で、私は小刻みに震えていた。

「クレア、そう怖がらないで。……それから、もう殿下はやめよう。夫婦になったんだから……ね?」

震える私の手をそっと握り、もう片手で私の肩を抱き寄せると、腕の中に閉じ込められた。

こんなにが広かったのか、とか、アグリア……様の手も熱い、とか、心音が早いとか、いろいろとダイレクトに伝わって來て、私だけじゃない張に、お互いがお互いの存在に慣れるまで、しばらく抱き締められていた。

(あぁ、なんだ……落ち著く……。私は、アグリア様を、ちゃんとれている……)

「私は、指南役が居た事がある。そこは理解しているね?」

「……いなかったら不自然です。王太子ですから、何をするか知らないというのはいけません」

「うん。でもね、あれは本當に授業だったんだ、と思っている。こんなに張して、心臓が張り裂けそうで、おしいのは……君だからだね」

そっとし離して顔を見合わせる。私の顔は赤かっただろうけれど、もう戸いや不安は浮かべていなかったと思う。ただ、熱に浮かされたように間近で囁かれた言葉だけが自分の中に反響していた。

「クレア、君にをしている。あの日からずっと。――そして、やっと、君と結婚できた。しているよ、もう離してあげない」

「……私も、私もアグリア様をお慕いしています。……どうか、これ以上は、言葉はもう」

難しいことだった。これ以上言葉を重ねるのが難しい程、私の気持ちはアグリア様でいっぱいになっている。

そうだね、と囁いた彼の大きくて熱い手が私の頬を覆うと、私は目を閉じて全てを委ねた。

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