《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》60 癖のある客人と癖のある商売人

お久しぶりです。活報告にありますように、今月から毎週月曜朝7時の更新となります。(臨時で更新することはあるかもしれません)

定期更新を心掛けますので、引き続き今作をよろしくお願いいたします。

「さて、本日はわざわざご足労願いまして誠に申し訳ございません。品が品ですので、國外に出すのが憚られまして……特級品を集めております」

相変わらず、商人という人種の顔というのは全く読めない。とてもニコニコとして、部屋も豪奢な応接室と歓迎されているが、私とイーリャンが並んで座った真ん前にいる、ドラグネイト王國の商工會長は長ーい機を挾んで遙か向こうだ。

イーリャンは今の所口を挾む気は無いらしい。それもそうだ、こういう時は代表者である私が挨拶をしなければいけないだろう。

「こちらこそ、無理を聞いてくださり謝の念に堪えません。ドラグネイト王國の寶石や金銀の質は間違いないものだと思い、シナプス國で最高の蕓品に仕上げてもらう……そのために參りましたので。品が品というのもありますが、私が出向くのは當然です」

Advertisement

軽く會釈をして挨拶を済ませると、侍がお茶を運んできた。控室にいるメリッサとグェンナも一応は歓待されている事だろう。

出て來たのは、緑茶と紅茶を足して2で割ったようなお茶だ。茶葉を砕せずにそのまま発酵させたもので、褐とも緑とも言える不思議な合いをしている。

これで分かった。私はまるっきり相手にされていない。

シンフェ國のお茶だ。茶菓子も、それに合わせた月餅というお菓子だ。取っ手のついてないティーカップなのは、シンフェ國のお茶はそんな熱いお湯で淹れるものではないからだ。

もしかしたら、他意なく珍しいお茶とお茶菓子で驚かせよう、喜ばせよう、という気持ちだったのかもしれないが、お茶が出て來るタイミングが遅い。つまり、今日の商談相手として、歓待する気なのはイーリャンの方。私はの価値も分からない小娘、と思われているということだ。

バラトニア王國が居心地がよすぎて忘れていたが、本來、確かに取引や契約というのは男の仕事である。

職能もそうだけれど、に付けるべき知識が違う。だから、私はこのお茶に次のメッセージが籠められていると解釈した。

『小娘は引っ込んでいろ』だ。

「あら、月餅にシンフェ茶ですか。珍しいをお持ちですね。……香りからして仕れたのは2年前ですか? トウがたっていないので保存狀態も良好。月餅の方も、地元のお菓子としてはとても有名ですものね。イーリャンには懐かしい甘味かしら?」

「いえ、バラトニア王國はフェイトナム帝國と易しておりますので、このような嗜好品もよくってきます、王太子妃殿下」

「そう、ならば今日は寛いで品を選べるわね。私もフェイトナム帝國では緑茶を飲むことが多かったので、久しぶりの香りと味にとても落ち著きますわ」

このやり取りに顔一つ変えずに合わせたイーリャンを褒めたいが、目を白黒させていたのは商工會長だろう。

たしかに私はフェイトナム帝國から差し出された嫁だけれども、淑教育の敗北だけれども、知識と好奇心と記憶力はずば抜けている自負がある。バラトニア王國ではそれが大いに役に立ったが、やはり外國ではこうして見下されるものだ。

私が用に楊枝を使って、薄いの下の餡を零さず切り取り口に運び、シンフェ茶を飲む姿には、どんなに淑教育の敗北があだ名であろうとも慣れがある。

イーリャンに関しては言わずもがなだ。私が手を付けてから食べるという順番は守っているが、私がなめられたおで故郷の味を無料で提供されて有難かったことだろう。ほんのり口元が笑んでいるように見える。

このドラグネイトの商工會長は、私たちがどれほどを知っているのか、を図りたかった可能もある。マナーとして茶菓子とお茶には口を付ける、というのもシンフェ國のやり方だ。ただし、月餅の下に懐紙と呼ばれる紙が敷いてあったら、お茶だけ飲んで茶菓子は持ち帰る。

今回はこの対応でよかったらしい。表を改めたドラグネイトの商工會長が、前のめりになって表を変えた。

「……大変失禮いたしました。お客様を試すような真似をしたこと、心よりお詫び申し上げます。改めまして、ドラグネイト王國の商會全てを取り仕切っているランディ・ボグワーツ、侯爵位をいただいております。品が品なのは本當です。さっそく運ばせますか? もうし、お茶を楽しまれますか?」

つまり、間違っても飲食と同じテーブルに載せられないような品を用意してくれているというわけだ。

「せっかく出していただきましたので、食べてからにいたします。私のことは、どうかクレアと。隣は渉役のイーリャンです。よろしくお願いいたします、ボグワーツ閣下」

私はにっこりと笑って返事を返す。

つかみはオーケーだったようだ。とりあえず、お腹に溜まる月餅を食べてしまおうとせっせと楊枝をかした。

    人が読んでいる<【書籍発売中】【完結】生贄第二皇女の困惑〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください