《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》68 イーリャンの予言

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「……ねぇ、なんでそんなに嫌そうなの? 私のことを嫌っているのは分かるけれど……」

「……王太子妃殿下個人に対して、悪を持っているわけではありません。ですが……」

イーリャンはどう言ったものか、とし考えるような顔になった。どう説明したらいいのか迷っている顔であり、説明した結果私がそれをけ止めなかった場合、イーリャンの意思ではなく心が私を拒絶するのを、し恐れているようなじだ。

頭では仲良くしたいけれど、自分の心にあるものを否定されれば、思考よりが勝る。仕事以上の付き合いはこれ以上できなくなるだろうし、それはイーリャンにとっても悲しいことなのかもしれない。

フェイトナム帝國の腐った宗教を見てきた私にとって、イーリャンの見せたシンフェ國の四神教は全く違ったものだ。この宗教は、聖職者を金ぴかに飾り付けて豚のようにやすような寄進はけ付けず、あくまで修行をして司祭を目指し自然との會話ができるようになり、それによって司祭以外の信者が生きやすくなるようになるための一連の行いだ。

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それを否定してしまったら、埋められないができる。私は信者ではないのだから、今から言われる言葉を否定する権利はもちろんあるけれど、それにはイーリャンからの信頼というものを天秤にかけなければいけない。

「……私は、許容だけを求めます。貴信させようという気はありません。ただ……、フェイトナム帝國がシンフェ國を下したときの皇帝の言葉が、かった私の耳の裏にこびりついて離れない、のです」

そして、それを発した皇帝の娘である私が、イーリャンが心酔するバルク卿によくされていて、気にらなかった、と。

ただ、寶石の買い付けに出た私と今日までのやり取りの中で、イーリャンの私への苦手意識はだいぶ解消されたようだった。

「一……お父様は何を言ったのかしら」

「貴殿らの神を否定はしない。認めもしない。些事にすぎない。ただ、わが國のために仕えれば心はどこにおいても構わない、と」

尊重もしないし勝手に信じていればいいけれど、それはそれとしてフェイトナム帝國のために働け、と言われたという。

フェイトナム帝國の杓子定規ではかったような徹底した実利主義において、シンフェ國は自然との対話で生き方を変させる人たちの國だ。

相當面白くなかったに違いない。支配されるのに、一切の忖度もしなければ尊重もせず、支配者の関せぬところは好きにしていればいい、という力による制圧。

否定はされていないにしても、そんなことをいう親の娘に対して、いいなんてあるわけもなく……まして、尊敬する上司が機嫌よくその(私のことだ)と仕事をし、今となっては私と仕事をして宗教についてまでせがまれている。

「ごめんなさい、イーリャン。違うの、私は、王太子妃だから融通してほしかったわけじゃない。これは命令じゃなくて、私が興味を持ったから知りたかったのよ。お父様も、フェイトナム帝國も……私もね、苦手なの」

殺されかけたしね、とはとても言えないけれど、私の顔はさみしさを湛えて笑っていた。

イーリャンは言葉を一瞬詰まらせてから、し考えて、口を開いた。

「分かりました。……とはいえ、これからいうのは獨り言です。決して、返事をしないでください」

わかったわ、と言ってもいいのかしら、と思っている間にイーリャンは告げる。

「貴の新婚旅行は、波が付きまとう。奇しくも、それはまた別の信仰に基づいた何かによる。祖國とを同じにする、違う枝葉が、貴を求めるだろう。……嫌な話でしょうが、心にとどめておいてくだされば……これ以上、私の宗教についてお話することはございません」

どうか、とイーリャンは祖國の服を著た袖と袖を合わせて最上級の禮をした。

私はその獨り言も一言一句たがえず記憶し、扉の前で深く禮をしてから、イーリャンの元を去った。

彼なりの一杯の譲歩、優しさ、私個人を見てくれた結果だ。れて、立ち去るしかない。

それにしても、何と不吉なことだろうか。占いの一種のようだけれど、もし対話できるのが自然……だけじゃなく、時間や空間にも関係するのなら、そういう事もあるのかもしれない。

そう、確か、四神教の聖典の中でそれは『予知』と呼ばれていた。

私にできるのは予測だけだ。これからアグリア様と出かける新婚旅行先について、し調べる必要があった。

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