《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》69 素晴らしい贈り

「クレア、お土産の品が屆いたよ。見るかい?」

「はい!」

四神教についてイーリャンから聞いて一週間、寶石を買って帰ってから10日目になる。

結婚式の返禮品をお願いした商人に、私とアグリア様はシナプス國での買い付けを頼んだ。予めそうしようと決めていたことだったので、商人の方も王宮で待機し、陛下や王妃様にお披目した後、すぐに商人もシナプス國へと飛んでいった。

この商人はシナプス國の職人との大きな伝手がある。私たち自が選びにいくよりも、確実に良い買いをしてきてくれるという信頼から任せたのだが、事前に話をつけておいたからか、商人の方もシナプス國に先んじて『蔵の品を』と頼んでいたようだ。

スムーズに事が進み、私とアグリア様は応接間へと向かった。

「ルーファス、久しぶりだな」

「ご無沙汰しております、王太子殿下、王太子妃殿下」

「今回は難しい仕事だったのに、手際よく進めてくれてありがとう。――どんなを買ってきたのか、教えてもらえるかしら?」

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ルーファス、と呼ばれた商人は細に糸のような細い目、質な金髪を後ろに香油ででつけた灑落者だ。服裝にも品があり、王侯貴族を相手にする商人の中でも最も忙しく、最も信頼できる相手でもある。

その細い目でらかく微笑んだルーファスは、私たちが向かいに座るとソファに座り直し、大きな鞄を艶のある木のテーブルにそっと載せた。中には緩衝材として大量の綿が詰まっているらしく、型紙で2つの箱を納める特注の鞄だという。寶石を運ぶときにも使ったらしいが、中の型紙を変えて工蕓品の持ち運びにも使ったらしい。

「こちらが、シナプス國の古い工房に掛け合い、手にいれてきた最上級の工蕓品です。実用品でもありますが、……どの國の王族の方でも、これを実用品にされる方はないでしょう」

鍵のかかった鞄を開くと、2つの黒い箱が、綿の上にい付けられた青い天鵞絨の中に収まっていた。

寶石よりは隨分と大きな箱だ。一何がっているのだろう、と思いながらルーファスが箱の蓋を開けるのをを乗り出して待っていると、アグリア様が隣でおかしそうに笑う気配がしたが、興味津々になってしまうのは仕方がない。

フェイトナム帝國にも回ってこなかった、蔵中の蔵の品。一何がっているのか、誕生日のプレゼントを前にした子供のような気持ちになってしまう。

「こちら、シナプス國で100年以上前に造られた、ジュエリーケースです。金屬と寶石によって造られており、長い年月を経ても劣化せず、特殊な塗料によってあせることもありません。――お手をれる際には手袋をどうぞ」

そういって蓋を開けた片方には、まるで金屬の糸で編んだレースのような繊細な模様に、ふんだんにとりどりの寶石をちりばめた、卵の形をしたジュエリーケースがっていた。

「シナプス國のブリッランテエッグ……! 凄いわ、こんなに素晴らしい裝飾のものは図録でも実でも見たことがない……!」

「ご存知でしたか……」

しがっかりしたようなルーファスの聲に、アグリア様はいよいよ肩を揺らして笑っている。

「ねぇクレア、ブリッランテエッグとは何だい?」

笑いを含んだ聲で私に尋ねられたので、ルーファスはいいのかしら、と思いつつを乗り出した私はソファに座り直し、隣のアグリア様に説明した。

「起源は、シナプス國の職人が修行の為に行っていた卵を使った細工ものなんです。竹串で小さなを開けて、中を取り出し、水で洗浄した後に卵の殻に模様を刻んでいくのですが……卵の殻ですから、とても力加減が難しいらしく、上手く出來たには質になる塗料を塗って見習いの練習の作だからと安価で市場に出されます。大き目のを開けて、中に油皿をれてちょっとしたランプ等にしたり。それは今も変わらず天に並んでいると聞いていますが、だんだんと本職の職人が卵の均一な形に裝飾を施したしさに魅られて、卵型の寶飾品としてジュエリーケースやランプシェードを作り始めました。100年以上前のという事ですから、工蕓品としての歴史は古いので比較的近年のではあるんですけれど……これほど凝った臺座に、ケース本となると、本當にあの寶石1つに値する値段がするでしょうね……素晴らしいわ、ルーファス。本當にありがとう」

「……私の言葉を悉く持っていかれた事はともかく、お褒めに預かり栄です」

あきらめたように苦笑したルーファスが軽く會釈する。商人の仕事を奪ってしまったのは申し訳ないが、しかし、何度見ても本當に素晴らしい品だった。

手渡された手袋で慎重に持ち上げる。臺座は銀で出來た蝶の羽を持つ妖が躍っている姿で、羽の部分に薄くカットされた寶石が、アゲハ蝶のようにとりどりにはめられている。

踴る妖から起こる風を模した金屬細工で、ブリッランテエッグ本を支えている。しっかり溶接されているようだが、あまりに自然に、そして細かやかな妖の姿で、置いたら折れるんじゃないかと怖くなるが、ルーファスが、どうぞ、と手を差し出したのでテーブルの上に置いてみた。

ちゃんと自立してびくともしない。妖の足元から広がる風を模した金屬のが、上手くバランスを取っているようだった。

寶石の散りばめられた金屬のレース編みの本の真ん中には、開く為にし太めの部分があり、中心にこれまた綺麗な瑠璃が嵌め込まれている。その瑠璃を押して軽く上に持ち上げると、蓋が開く仕組みだ。

中はまさにジュエリーケースで、複數の指、イヤリングを閉まっておけるようにらかな天鵞絨が敷かれており、嵌め込むための隙間が造ってある。

そして、蓋の裏には開いた時に丁度良く顔が映るように天鵞絨に埋まるように鏡が嵌っていた。

中に仕舞うジュエリーを傷つけない為に、中には金屬の裝飾は為されていない。

実用品でありながら、これを普段使いにするには恐ろしい品だ。高級品にはそれなりに慣れているつもりの私でも、このブリッランテエッグにれるのは怖い。

「素晴らしい品だ。これはきっと喜ばれるだろう。ただ飾っておくだけでも、ぐっと部屋の品格があがるような寶飾品だ。ジュエリーケースとしても使える実用品だというのも、こまやかな心遣いがじられる」

橫で見ていたアグリア様が褒めちぎるが、私は知識はあってもこうして褒める言葉というのは中々でてこない。

ただ、余程目を輝かせていたのか、ルーファスもアグリア様も満足そうだった。

私はそっとブリッランテエッグの蓋を閉じると、そっと箱の中に戻した。これを持って移するのは、とても張しそうだ。

「お気に召していただいて何よりです。では、もう一品ご紹介しましょう」

ルーファスはしっかりと箱の蓋を閉じると、もう一つの箱の蓋に手を掛けた。

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