《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》70 もう一つの贈り

「一、こちらには何がっているのかしら……!」

「落ち著いて、クレア。とはいえ、私も楽しみだな。開けてくれるかな、ルーファス」

私がどんどんを乗り出すので、アグリア様に肩をそっと押されてソファにぽすん、と座り直すことになった。

そんな私たちの様子を微笑ましそうに眺めたルーファスは、はい、と告げるともう片方の箱を開けた。

「まぁ……まさか、えぇ? 現存したの……?」

「はい。シナプス國の最も古い工房に、なんとか伝手で話をつけまして。ドラグネイト王國の虎の子の寶石との換ですから、応じてくれました」

箱の中に収まっていたのは、先程の華やかな寶飾品とは違う、下から上に向って薄桃から完全な明になる、綺麗なグラスが2つ1組っている。蒸留酒を飲む時に使うロックグラスだ。

余計な裝飾は何も要らない。これは素材、加工、全てが失われた技と素材と言われているものだ。

「……今度は、ルーファスに尋ねた方がよさそうだな。このグラスは?」

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「ピンクダイアモンドとダイアモンドの混合石を加工した、ダイアモンドのロックグラスです。――この原石は幻の原石とされておりまして、それこそフェイトナム帝國の図録には載っているでしょうが、いつの間にか行方不明とされておりました。それが、かにシナプス國に渡り、このようにロックグラスに加工されていました。このロックグラス2つは『同じ原石』から切り出されています……つまり、このグラス2つよりも巨大な、希なピンクダイアモンドとダイアモンドが混在した原石が、遠い昔に採掘されていたのです」

私はルーファスの言葉を聞きながら、ずっとロックグラスに見っていた。

私の両手に載せても余る程大きな巨大なダイアモンドを、明度が高いグラスに加工してある。つまり、おもいっきり削り出して、中もくりぬいて、丁寧に磨かれているのだが、ダイアモンドを加工するのはとても難しい。

まして、ピンクダイアモンドと呼ばれるダイアモンドは滅多に出土しない。それが、ダイアモンドと綺麗なグラデーションとなって混在している存在として、幻の寶石として図録に載せられていた。出土の記録を思い出せば、確か軽く500年は前だ。

シナプス國はずっと昔から高い技で國としてり立っていたが、このしいグラスに加工する技をそんなに昔から有していたとしたのなら……國の強化を考えた方がいいかもしれない。しかし、シナプス國に対してバラトニア王國が提示できるものは何だろう。

頭の中が新婚旅行から政治方面に切り替わってしまった私は、グラスを眺めながらルーファスと會話するアグリア様の隣で我に返った。いけない、これはお土産の品なのだから、ちゃんとどういったか説明できないと。

一通りはルーファスから説明をけたアグリア様が、口元に手を當てて何かを考えていた。

「しかし……たしか、『永遠の初夏』という石は別だけれど、『春』は同じピンクダイアモンドだったろう? 『春』の対価にしてはこの寶石を使ったロックグラスは過分に過ぎる気がするが……」

「いえ、あの『春』は今となってはほぼ出土されないピンクダイアモンドの巨大な原石です。このグラスの再現は無理ですが、工蕓品……いえ、もうこれは品ですが、そういった品は鑑賞する人、使う人がいてこそなのです。眠らせておくために造った訳ではございません。そして、長い間眠っていた工蕓品を他國の王族の手に渡らせる時、現在手にる最高の素材との換……シナプス國の最も古い工房も、それを嫌がる道理がございません」

今となっては『春』ほどの巨大なピンクダイアモンドはまず出土されない。採掘をすればそれだけ貴石は減る。長い時間をかけてまた形されるものではあるけれど、人間の時間と比べれば、本當に長い時間をかけてようやくできあがる。

今手にる最高の素材を前に、職人が工房で眠っていた最高の蕓品を差し出すのも、また當然とも言えた。

連綿とけ継がれてきた技を活かす數ないチャンス。本來なら眠らせておくべきではない工蕓品。シナプス國とのもっと流……頭の中はまた政治の方に考えが回り始めたが、今は意識してそれを橫に追いやる。

「ありがとうルーファス。最高のお土産だわ。大事に持っていくわね」

「いいえ、こうしてお二人のお役に立てて何よりです。この後は陛下と王妃様の懐中時計の調整をするためにお時間を頂いております」

「まぁ、ちゃっかりしているわね。でもちょうどいいわ、せっかくだから王都を回って調整していってちょうだい。早く売り出されるのを楽しみにしているわね」

「は。ありがとうございます」

こうして立ち上がった私たち3人は、ルーファスとアグリア様がい握手をわして別れた。

お土産も揃ったし、どこの國に行くかももう決まっている。護衛の選出はバルク卿がしてくれているし、荷造りは侍たちが進めてくれている。

3日後には、バラトニア王國より北の2國……ポレイニア王國とウェグレイン王國への新婚旅行に向かうことになる。

楽しみでもあるし、……イーリャンの言葉にしだけ不安もあるけれど、ルーファスが出て行ったあとにアグリア様を見上げれば、何の心配もないよ、と微笑まれて。

私はこの笑顔に、いつも大きな安心を貰っている。アグリア様と一緒なら大丈夫だと。

信じられる、きっといい旅になると。

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