《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》78 太の神様・天之真子

平屋建てといっても、小上がりのような階段はあるし、今まで歩いて來たのも木造の渡り廊下だった。

著いた、と言ってポレイニア國王が足を止めたのは、扉の無い門のような所。鳥居、と言うらしいが、私にもアグリア様にも聞き覚えはなかった。

ただ、そこは開かれている筈なのに、なんだか真ん中に立つことも、勝手に潛ることも憚られるような圧をじる。朱塗りの太く外向きに斜めに建った柱を、2本の梁のようなものが支えている。

その梁の所にポレイニア語で神様の名前が書かれていて、鳥居の向こうには斜め奧に荘厳な造りの小さな家が建っている。

庭石は白で、磨かれた大粒の石が敷き詰められており、歩いてその小さな家に行けるよう、飛び石が儲けられていた。

神様を高く扱うというより、まるで真正面から向き合うことすら失禮だというような造りだと思った。あえて鳥居という門から斜め奧に配置されているように見える。

「ここは、普通に潛っていただいて大丈夫です。あれは一の宮と言いまして、我らが神である天之真子(ようてんのまなこ)様の本宮はさらに二の宮、三の宮の奧に在らせられます。お客人ならば一の宮でお參りするだけでよろしいかと」

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「ご配慮ありがとうございます。つまり……神様をお祀りしているのはもっと奧で、ここは玄関のようなもの、ということですか?」

「はい。さらに言えば、分霊と申しまして、我が國にはここを総本山とした同じ神の家……バラトニア風に言えば神殿というのが馴染みがあるでしょうか。それが各所にございます。神の社と書いて神社なのは……そちらのシンフェ國の方はお馴染みですかな。信教の違いは確かに扱いの難しい問題ですが、我が國の神は大らかであらせられます。拝禮の手順なども特に厳にはございません、こう、の前で手を合わせて一禮頂ければよろしい。禮の間に語り掛けることで、自なる神との対話となります」

ポレイニア國王は自分のの前で掌を合わせて一禮する仕草をして見せた。その際、目は閉じるもののようだ。

私はこれまで、裏付けの乏しい天、各國の宗教、神、そういったものはでるようにしか學んでこなかったが、それもこれも自國で自分の人生が完結すると思っていたからだ。

しかし、バラトニア王國に嫁ぎ、神を戴かない國の中樞に関わり、そこからさらに違う國の宗教にれる機會が大きく増えた。國を一歩出てしまえば、そこに違う文化が付いていると頭では分かっていたけれど、こうしてれる空気、見る建造、宗教の表面ではない部分にれることとなって、私は新鮮な験ばかりしている。

今でも何かに信しようという気は無いし、祖國の宗教は最早人の手によって腐っていると斷じれる。

けれど、何故だかポレイニア王國の戴く神様には……大事にされているかどうかという部分も含めてだろうけれど……敬意を抱く気持ちがあった。

私とアグリア様、イーリャンは、ポレイニア國王が鳥居の前で待っているというので、飛び石を歩いて渡り、一の宮と呼ばれた小さく荘厳な家の前に立った。確かに飾りかしの彫りがった壁の向こうには、奧に同じような家が見える。奧に行くにつれ、裝飾が過多になっているようにも。

教わった通り、一の宮の前で3人で並んだ私たちは、の前で合掌して軽く腰をおり禮をした。

天之真子様、はじめまして。旅の機會がありこうしてご挨拶させていただいております。どうか、アグリア様と私、一緒に來てくれた皆が無事に旅を終え、得るものがありますよう、見守ってください)

私は、の中で神様に語り掛ける、というのをほとんど初めてやったかもしれない。

フェイトナム帝國のリーナ教の余りのゆがめられ方に、リーナ神を信じていなかったのが大きい。宗教家、と名乗る人間が信用できないのも、王室から見ていれば痛いほど分かるものだ。

しかし、ここまで祀りあげられていても、ポレイニア國王は「なる神」と言った。ここに祀っている神様ではなく、ここで祈って奉げる言葉は自分の中の何かと対話する言葉だ、という意味であっているはずだ。

ポレイニア王國の宗教について、もっと知りたいと思えた。城に滯在するけれど、1週間は國の主要都市を見て回って良いことになっている。もちろん、行ってはいけない場所もあるので、ポレイニア王國側のガイドの元でだが。

本當に何の気もなく、私は祈りながらそんなことを考えていた。けれど、急に元が焼けるように熱くなって、驚いて手を解いて目を開く。

「クレア……!」

「あ、アグリア様……!」

私とアグリア様の元には、服の下に、バラトニア王國で買った小さなルビーと真珠のネックレスをに付けていた。互いの瞳の換するように。

その石が熱をもって、を放っているのは、お互いの服の隙間かられ出る金で分かった。火傷するような痛みは無いが、単純に驚いたのだ。

イーリャンが目を見開いてその景を見ていたが、私とアグリア様が違いに視線をして戸っているうちに、は収まった。

後ろからポレイニア國王が丸いを揺さぶって駆け寄ってくる。

「い、今のは……! お、おぉ……、失禮ですが、服の下に何か……?」

「私は真珠を、妻はルビーを、それぞれ小さな石ですがに付けていますが……今のは、一

ポレイニア國王の瞳は丸い顔に埋もれて糸のように細かったが、その細い目を目いっぱい見開いて、彼の王は大袈裟な程に合掌して深く頭を下げた。

「それはそれは……今のは、天之真子様のご加護にございます。紅玉はそのまま太を、真珠は太ける月を模す石と言われています。旅の安全を願われたお二人に、きっと加護をお授けくださったのでしょう……!」

それこそ私とアグリア様は、戸いで一杯の顔を見合わせた。ここにきて、神の奇跡だとか言われても、という気持ちもあれば、今確かに不思議が起こったことは事実としてけ止めなければならない。

をする前に、私たちはもっとちゃんと、ポレイニア王國の宗教と神様について聞かなければいけないようだった。

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