《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》80 ポレイニアのオシャレ著

「アグリア様、イーリャン、とても似合っているわ」

著替えはさらに別の奧の部屋があるらしく、左右の壁に作り付けられた小部屋で著替えと化粧を施されて、私とアグリア様、イーリャンは裝部屋の前で合流した。

洋裝に近いが、やはりの丈が長い。膝下までの、袖なしの上著に、長袖の膨らんだ袖のブラウスを著ているようだった。首元は立て襟で、頭に何か布地を巻いている。髪を覆うようなものではなく、額からぐるりと模様りの派手な布地を巻き、その結び目に金屬の裝飾品が著けられているのが綺麗だった。

國王は王冠を被るので巻かないらしく、貴人の男はこのように裝飾品を著け、平民は無地の布を巻くらしい。ただ、の貴賤はないと、私の支度をしてくれたナイジェルが教えてくれる。

シンフェ國の服にし似ているが、あちらは暑さからか袖が広く、前で斜めに重ねて合わせるような服だ。バラトニアから北は寒いらしく、下にシャツを著ていたが、厚手の上著はいつも袖の広い頃を合わせる服だったが、今日は貴人の付き人なので控えめながらも裝飾品をに付けている。

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頭に巻いている布こそ派手なものの、服はアイボリーや濃いグレーという落ち著いた合いに、沢のある糸でできたボタン留めが、やはりし軍服を思わせる。かっちりしているようで、ゆったりもしていて、それがまた絶妙に似合うのだ。

帯剣も許されているらしく、アグリア様はもちろん、イーリャンも気付かなかったが両側に短刀を提げていた。語學も得意、渉も得意、文として仕事もできて、神の資格もあり、武の心得がある? どんな萬能人間だろう、と思ったけれど、ガーシュのことを考えればなくはないのだろうと思う。

「うーん、男の私に先んじて褒めさせてくれてもいいと思うんだけどなぁ、クレア。君もとてもよく似合っているよ。本當に素敵だ。異國の地で誰かに見初められないように、しっかり腕を組んでおかないとね」

「私ったら……すみません。あの、改めて……アグリア様、似合ってますか?」

私は頭を通すがついた倉の空いた厚手のドレスのようなものに、リボンやベルト、コルセットの代わりに帯というものを締められていた。コルセット程きつくは無いが、ぎ著するのが実に大変そうな結び方で、これはぐ時にもナイジェルの手を借りないといけないだろう。

その厚手のドレスの下にはフリルブラウスを著ており、寒くなったらこの上にスモックやポンチョという上著を羽織るらしい。使いが派手らしく、ブラウスのは青で、その上のドレスはくすんだ紫をしている。そこに金の帯を締め、足元は歩きやすいようし丈が短くなっており、下は下で白いフリルのついた膨らんだスカートをはいて、私も平靴を履いている。

帯から垂らす布は刺繍のった沢のある銀の布で、厚手のドレスにも刺繍がふんだんに施されていた。

頭は何も無いが、口元を薄手のヴェールで隠し、そのヴェールを押える為の寶飾品が髪を飾っている。

そんな私の姿をまじまじと眺めたアグリア殿下は、うんうん、と頷いて「とても」と言うと私の隣に來て腕を差し出してきた。イーリャンが先程からぼうっとしている気がするが、どうかしたのだろうか、と不思議に思って振り返ると、その背中に聲がかかった。

「クレア様、國王様との面會は終わられました?」

「あら、素敵なコーディネートですね。そのおも服裝も大変似合っていらっしゃいます!」

やってきたのはメリッサとグェンナだった。想像通り、二人も派手なの侍服に著替え、ヴェールを口許に纏っている。

それぞれの髪や瞳のにあった多濃いアイメイクもまた素敵だった。ここでは、侍もある程度賓客扱いしてくれるようで、控えめながらナイジェルはつけていない裝飾品をに纏っている。

「二人ともとっても素敵よ! あぁ、この服は買い取らせてくれるのかしら? でも、バラトニアで著る機會はないし……困ったわ。どこかで絵姿に殘してくれたりしないかしら」

私は男の格好も、の格好も、ポレイニア王國獨特の服裝や慣習が気にってしまった。せっかくこんなに似合うのに、この國以外ではし浮いてしまう、というのもまた寂しいものだ。

服の規格は各國で違うとはいえ、南國でも無いのにこうもとりどりで華やかなのも素敵だなと思う。どういった歴史があるのか、知りたいとも思う。それは本屋で帰りに買って帰るとして……。

「皆揃ったわね。では、案の方の所にいきましょうか」

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