《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》81 ポレイニア王都観・1
「本日より、ご滯在中の案役を務めさせていただきます。王宮にて文をしている、デュラハンです。よろしくお願いいたします、バラトニア王太子殿下、王太子妃殿下」
エントランスホールで顔合わせをした相手は、生まれつきと思われる白髪に黒い長、白いズボン、頭に巻いている布も黒に銀糸の刺繍が施された、裝飾品の無い若い男だった。バルク卿と同じ歳の頃だろうか。頭の布が白ではなく黒な事と、刺繍がっていることから、平民とはし違うようだが、裝飾品をに付けていない。
は白く、すらりと高い背に、細の背格好だ。きつそうに見える吊り目は金で、眥に男なのに赤いをれているのが、また似合っている。だけれど、話し方は実に穏やか……というよりも、し平坦にも聞こえる。
貴人は裝飾品をに付けると聞いていたが、貴族ではないのかな、と観察していると、アグリア様が困ったように笑って切り出した。
「アグリア、とどうか呼んでくれデュラハン。その呼び名では街中では下手に目立ってしまいそうだ、せっかく服裝を改めたのだし」
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はっとして私も言い添える。
「私のこともクレアと、どうか。こちらが通訳のイーリャン、私の侍兼護衛のメリッサとグェンナです。よろしくね」
「護衛……?」
ぴく、とデュラハンの片眉があがる。明らかな武裝もしていない、鍛えた風でもない侍2人が? と訝しんでいるようだった。そういうデュラハンはこれまた黒くて鍔の無い剣を帯剣している。
対して、メリッサとグェンナは何も武裝していないように見えたのだろうが、訝し気なデュラハンに対して、メリッサもグェンナもそっと太の辺りや腰元の布地にれて見せる。見えないように、だけれどすぐ取り出せるようにしている、というちょっとした意思表示だ。
デュラハンにとっては、護衛とは武裝していることを見せつけることで威嚇をするものだという認識があるようだが、それはアグリア様もデュラハンもしていることだ。の武裝は余計に目立つだろうし、何よりこっそり影のネイジアが付いてきている。
このことはポレイニア王國にもで、ガーシュ達もバレるようなへまをすることは無いだろう。
「分かりました。では、アグリア様、クレア様、そしてイーリャン殿、メリッサ殿、グェンナ殿、どうぞ。城下町までは馬車で參ります」
「ありがとう。よろしく頼むよ」
デュラハンに連れられて外に停めてあった大型の馬車に全員が乗り込む。狹いという事もなく、快適な広さに、座り心地のいい座席だった。
王城まで來た道は見ていたが、王都には泊まらずそのまま城に登ったので、今日はまず足元である王都観からである。
來た時にも見たが、平屋建ての建ばかりだった。ただ、普通の平屋建てより背が高いようにも思う。その事を馬車の中でさっそくデュラハンに尋ねると、的確な説明が返ってきた。
「ポレイニアは夏は程ほどに暑く、冬は雪が積もります。特に年明けからの2月程は積雪量が多く、そこから先はあっという間に融解します。なので、天井が低いと外気溫に左右されやすく、また、太くい木材を使わなければ屋の雪で家が潰れることもあります。なので、高層建築はせずに、なるべく天井を高く取り、夏場は天井に取り付けた小窓から風をれたり、冬は暖爐の熱気が上にいくので……」
「あぁ、そうね。空気は溫かいほど上にいくから、屋の雪を溶かすのね? 木造なら熱伝導はレンガよりも低いから、夏は涼しい、ということかしら」
「……えぇ、そういうことです。積雪の季節は年のうちで見れば割合がない。國土に適した建造になっております」
「素敵だわ。王宮も木で出來ていたし、渡り廊下が地面から離れていたのは……」
「屋はありますが、雪は真下に降る訳ではありません。高床にして冬は襖を張り、寒さと雪を凌ぎます。ある程度積もった雪は、ただ寒いだけの冬よりも保溫効果がありますので、地面の雪かきは道だけとなります」
「著きました」と者席から聞こえて來た時、私とデュラハンの話をにこにこ聞いていたのがアグリア様で、他の3人は「また始まった」と言わんばかりの顔で其々し困ったような顔をしている。
デュラハン本人は気にしていないようで、むしろ自國に興味を抱かれたのが嬉しいのか、行きましょう、とドアを開けて先に降りた。アグリア様、私、と続いて降りた所で、ドアを支えてくれている者の姿にし目を丸くし、それから素知らぬふりでアグリア様の腕に手を置いた。
ガーシュが者をやっている。一いつの間に王宮でその役についたのか、どんな手法を使ったのかは聞かないで置くことにして、よくもまぁ首尾よくこうして側についてくれるものだと思った。
デュラハンがこれを知っているとは思えない。ガーシュは者兼荷持ち、という事で一緒についてくることになり、イーリャンはデュラハンのし後ろを、その後ろにアグリア様と私が並んで、メリッサとグェンナのし後ろにガーシュが著いてきている。
メリッサもグェンナもこれは知らなかったらしいが、それを顔に出すようではバラトニア王國の王太子妃付きの侍ではいられない。素知らぬふりをしている。
「では、參りましょうか」
そういって、デュラハンはゆっくりと人で溢れる大通りに向って歩き出した。
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