《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》84 『好奇心』と『思い遣り』
その日の晩餐の後、隣室で宛がわれていた私とアグリア様の部屋は、中扉で通じるようになっている。
ポレイニア國王は大袈裟な程に寂しがっていたが、いずれもっと親しく國をするようになれば往來することもあるでしょう、というアグリア様の言葉に、それは是非、と言ってくれたので、新婚旅行の最初の國は実に平和に過ごせたと思う。
中扉を通ってアグリア様が寢間著で訪れ、私も寢間著のまま迎えると、しの寂しさを伴いながらポレイニア王國の思い出を語り合った。
「ねぇ、クレア。私はデュラハンに個人的にお禮がしたいと思うんだけど、君はどう?」
「えぇ、私も……毎日案してくれたデュラハンには何か贈りがしたいです」
「それで、この國では革製品があまり普及していないように思ったんだ。染料で染めた布というのは確かに軽くて華やかだけれど……」
「確かにそうですね。革製品をに付けている方は殆ど見けられませんでした。あまり、革を日常的にに付けるという習慣はないのかもしれません」
布の染技は進んでいるが、厚手の布はあっても革製品をに纏っている人はない。
「剣を扱うようだったし、りにくい革の黒手袋なんて喜ばれそうじゃないかい?」
「それはいいですね。えぇ、えぇ、帰ったら是非準備をして贈りましょう」
「よかった。……クレアの好奇心が私にも移ったと言ったろう? デュラハンの話を聞いているうちに、せめて手は隠せないものかと思ってね……布では剣がりやすいから、革手袋がいいんじゃないかと考えていたんだよ」
「……アグリア様。それは好奇心ではありませんわ」
長椅子に並んで座り、甘いお茶を飲みながら話していた私は、茶をテーブルに置いてアグリア様の手に自分の手を重ねた。
「それは、思い遣り、というのです。確かに相手を知ること、何かを知ることに興味がわくのは好奇心でしょう。ですが、好奇心の先に誰かにとって利のあることを考えることは、思い遣りです。私にはし欠けたものであり……アグリア様には好奇心よりも先にあった徳だと、私は考えます」
夜の控えめな照明の中でも夕にきらめく目は、今日も優しく微笑んでいる。その目をじっと見つめながら、私は本當にこの人の妻になれてよかったと思った。
旅をする中で相手の嫌な面が見えてくることがあるという話も聞くが、アグリア様との新婚旅行は楽しいことばかりだ。こうして、アグリア様の思い遣りにれることもできた。
いや、出會ったときからアグリア様は思い遣りに溢れていた。私の扱いにも最大限の配慮を行い、様々な自由を許してくれた。何かあればフォローをしてくれ、必ず私を喜ばせてくれた。
「……一緒に、新婚旅行に來られて、本當によかったです」
「クレア……、それは私も一緒だよ。……さぁ、明日は朝早くに出発だ。ゆっくり眠ることにしよう」
「はい。おやすみなさいませ、アグリア様」
「おやすみ、クレア」
他國の王宮でこのような部屋が宛がわれているので、もちろん……そういう夜も無いこともなかったけれど……明日は早くにこの城を発つ。
優しい口付けだけをわして、私とアグリア様はそれぞれの部屋でゆっくりと休んだ。
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