《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》86 行方不明の第一皇ビアンカ

道はそう複雑じゃない。一度バラトニア王國に戻って移する予定だったのは、1ヶ月の長旅なので休憩の意味もあったのだが、それを押してもウェグレイン王國の國王陛下が急いで呼び寄せる理由が分からない。

私は嫌な予を抱えながら、ウェグレイン王國の伝令によって用意されていたポレイニア王國でも栄えた街の宿屋の窓辺に座っていた。

「浮かない顔だな。まぁ、俺もあまりいいニュースを持って來たとは言えないんだけどさ」

そこに唐突に窓の外から聲が掛かった。ここは中庭に面した窓で、ポレイニア王國は平屋建てである。

姿が見えなくて驚いたが、窓からを乗り出すと、窓の外に『仕事著』を著たガーシュがいた。

「一何が……?」

「ビアンカ皇殿下のことだよ。――軽く見張っていただけだったのもあるが、すまない、消息不明だ」

「?!」

姉のビアンカが消息不明、と聞いて私は聲をあげそうになるのを両手で塞いで堪えた。

「……一、どういうこと?」

「いかにも病床に臥せっている、というを取っているが、フェイトナム帝國のどこにもビアンカ皇はいない。それだけは確かだが、それまでの間に怪しいきがあれば俺に報告があがっている。何せ、バラトニアに居た間者はフェイトナム帝國で殺されないか、は常に見張っていたんでね。――だが、ビアンカ皇が行方をくらますというのは予想してなかった。おで時間もかかったし、消息不明で何が起こったのかが分からない」

私の狹い世界の中では、影のネイジアが見せた片りんからして、この大陸で一番報に通していると思っている。

病に臥せっているフリをして、ビアンカがどこに消えたのか。私はじっと考えたが、今の所ビアンカが嫁いで首のを抑えるべき屬國の存在はなく、國の貴族の勢としても、稅があがったにしても重稅を掛けているという話はってきていない。それを取り持つ必要もないはずだ。

ビアンカの……フェイトナム帝國の側の思考に立たなければいけない。私はガーシュが側にいる狀態で、黙ったまま考え込んだ。

「……ねぇ、ガーシュ」

「えぇ、俺も同じことを考えていると思いますよ」

私が震える聲で呼びかけただけで、ガーシュは何が言いたいか分かったのだろう。心底不機嫌そうな聲が返ってきた。

「フェイトナム帝國からバラトニア王國に嫁いだとはいえ、私の祖國はフェイトナム帝國な事は、変わりないわね……」

「そうなりますね」

「その私が、新婚旅行中に……亡くなったとしたら?」

ガーシュにしては珍しく不機嫌そうな舌打ちが返ってくる。

「當然、責任は新婚旅行に行かせたバラトニアにあります。あからさまに殺そうとしてきた時に、恩を掛けてしまったのがまずかった。それから、気付きもしてなかったクレア様の有能さに気付かせてしまったことも」

つまり、私が旅行中に死ぬことで、フェイトナム帝國は自國の皇雑に扱ったと無理矢理にでもこじつけて開戦できる、ということだ。

バラトニア王國は各國との食糧の易があるが、極冬に対して食糧支援をしたばかりだ。糧食の蓄えはそこまで無いし、今はまだ収穫の時期でもない。また、改革にお金を使っているために、そこまで貴族に兵を出させられる程の國庫の余裕もない。

フェイトナム帝國そのものを遠ざけられたからと安心していた。全く、私は迂闊で嫌になる。

それでも、思考を止めることはできないし、諦めてもいけないことくらい、今の私は分かっていた。

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