《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》87 生贄という火種

「私なら……、いえ、フェイトナム皇帝ならば、自分の娘を、とてもちょうどいいウェグレイン王國に嫁がせるわ。宗教について私が淺學だったばっかりに、その予想を立てていなかったのは本當に嫌になるわね……」

「そこは俺もです。何が何でも止めるべきだった。……今頃はもう、とっくにビアンカ皇はウェグレイン王國の王妃の立場を手にれているでしょう。あそこの國王は獨だ」

「……そして、國を挙げて、古いリーナ教を信奉している……、妻にリーナ神の濃いを正當に迎えた裏で、私という濃いを生贄に捧げる……。私が死んだら、リーナ教の神の末に扱ったと、どんな面の皮の厚さを発揮してでもウェグレイン王國は、バラトニアを挾み撃ちにするわ」

「……予測でしかありませんが、まぁそれが一番考えられる線ですね。フェイトナム帝國側から戦爭を起こす正當な理由としては、バラトニア王國側の落ち度でクレア様が死ぬ、これにつきる」

「國の不審死ならば、バラトニアの貴族か王室にやはりフェイトナム帝國憎しという思想があり、というこじつけが利く。新婚旅行先で死ぬのなら、バラトニア王國は私を雑に扱ったとしてウェグレイン王國まで巻き込んで挾撃できる。……簡単なのは前者、戦爭で確実に勝つならば後者ね」

ガーシュはイライラとしたようすで頭巾の上から頭をかいた。

「その簡単な方は、実は俺らが勝手に処理してたんですよ。懲りないんでね、報告をあげたところでクレア様を怖がらせるだけだ。くそ……裏目に出たか。とはいえ、クレア様を殺させるという選択肢は俺らネイジアにも無い」

「……つまり、簡単な方は試したから、こんな大掛かりなことをして私を殺そうとしている……そして、戦爭を起こして確実に勝とうとしている。ウェグレイン王國を巻き込んで」

ビアンカのれ知恵ならば、私を長くウェグレイン王國に滯在させるつもりで親書を出させるのも簡単だろう。

私は『淑教育の敗北』だが、ビアンカはその正反対だ。まさに『完された淑』である。

を言葉や表で手玉に取るのは簡単だ。それが、信奉している神の濃いを引いていると信じられている國の國王に嫁いだのだとしたら……。

「ガーシュ、私、絶対に死ぬわけにはいかないの」

「もちろんです。最優先順位者をネイジアも殺させはしません。――兄としても絶対に」

自分が死ぬ可能に対して、私は恐怖だけを抱いていた。

けれど、こうなってくると話は違う。自分が死んだら、今、バルク卿が言っていたように歩き方を覚えたバラトニア王國という國が戦爭に巻き込まれ、また足を止めてしまう。

今度は屬國では済まないかもしれない。隷屬させられ、奴隷のように扱われ、國名も歴史も何もかも燃やされ、全てが白紙になる。

「バラトニア王國は私の國だもの。私が、殺される事で國まで道連れにさせるわけにはいかない」

私は強い口調でそう言い切った。

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