《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》90 2つの再會

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馬車を降りると、私とアグリア様、イーリャンと、お土産の品を持ったメリッサとグェンナが後をついて早速國王陛下への謁見となった。

今日から1週間以上はここに滯在する。本來ならガーシュ達の仕掛けで3日程の予定だったが、1週間になったのは、……この王宮からじる圧で本能的に理解してしまう……ビアンカのせいだ。

もうとっくにこの場を支配しているのだと分かる。エントランスに飾られる花の趣味も、家も、燭臺も真新しい。

執事に案されてウェグレイン國王の元へと向かった。謁見室は、エントランスからすぐ近くにあるという。

サロンや応接間ではなく謁見室に案する辺りが、ウェグレイン國王がこちらをどう見ているのかがけて見える。

謁見室を警備する門兵が扉を開き、赤い絨毯の先には十段程の階段があり、高い位置に巨大で飾り付けられた玉座があり、そこに座っているのがウェグレイン國王だと一目で分かる。

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壁際には使用人と侍が、絨毯の橫には貴族が整然と並び、全員に品定めされるように見られているのが分かりながら、私とアグリア様、その3歩後ろをイーリャン、さらに後ろをメリッサとグェンナがついてくる。

階段よりだいぶ離れた場所で、私とアグリア様が膝を折り、後ろの3人が膝をついて頭を垂れたのが分かった。

「面を上げよ。よく來た、バラトニア王太子、王太子妃。我のワガママで旅程を早めたことをまずは詫び、心からの歓迎を示そう」

私とアグリア様が折った膝を戻して立ち上がり、見上げた先に居たのは……元は造りがいいのだろうに、無駄な脂肪がついてなんとなくだらしない印象の顔立ちとつきの男だった。

聲に威厳はあるし、彼の言葉で整然と並んでいた貴族たちが一斉に拍手をする。どうやらちゃんと國王として崇められているようではあった。

ただ、見上げた顔にはこちらを下に見ているというのがありありと書いてあり、底の淺さをじさせる。若い國王ではあるから、それも仕方ないのかもしれないけれど、その目には権力以上に、何かに狂おしい程心酔しているようなが見て取れた。

「我が許す。発言せよ」

「は、ありがとうございます。妻と違って私は淺學なため、イーリャンが訳すことをまずはお許しください」

アグリア様の堂々とした挨拶はフェイトナム帝國語だ。それをイーリャンが、似た言語ではあるけれどウェグレイン王國語に訳して伝えると、よい、と短く國王は返事をした。

「まずは、新婚旅行としての訪問のお許しをありがとうございます。こちら、シナプスの一級品の寶飾品です。土産としてお持ちしましたので、どうかお納めください」

アグリア様の言葉に続いて、丁寧な仕草でグェンナが進み出て、私に箱を渡してきた。

私の手で蓋を開けて見せてから、進み出てきた最前列にいた貴族が箱をけ取り、階段の端をあがってウェグレイン國王に品を見せる。目を見開いて驚いたのがよく見えた。

「これはこれは……、大層なをいただきましたな。さて、ここにいる我が國の上位貴族と一部の使用人は知っていることなのですが、先日我も結婚しましてな。この寶飾品は妻がきっと喜ぶだろう」

私は々驚いた顔をしてから、笑顔で淑の禮をした。やはり、という確信がどんどん裏付けられる。

「それはおめでとうございます。ウェグレイン王國のますますの繁栄と、末永い幸せをここに願わせていただきます」

「おめでとうございます、ウェグレイン國王陛下」

卒なく挨拶をした私とアグリア様に気を良くしたのか、しているはずの妃をウェグレイン國王は呼び寄せた。

「バラトニアの王太子と王太子妃のお二人にもご紹介しよう。――おいで」

そう言ってウェグレイン國王が呼び寄せたのは、やはり、と思うビアンカと、もう一人、心底驚く人がいた。

それを顔に出すアグリア様と私ではない。イーリャンは分からないことだが、メリッサとグェンナも一瞬反応しかけて頭を垂れることで堪えたようだった。

「妻のビアンカだ。ウェグレイン王國王妃であり、リーナ神のを継ぐ……王太子妃にとっては実の姉妹であろう。観の合間にでも一緒にお茶にするといい」

「初めまして、バラトニア王國王太子殿下。そして、久しぶりね、クレア。結婚おめでとう、と私からも返しておくわ」

華々しくしいドレスに、ルビーの瞳、綺麗に巻いた金髪にティアラを載せ、裝飾品をに付けたビアンカは、確かにも凍る程しい。久しぶりに聲を聞いたが、私に対して毒があるのは変わりないようだった。

けれど、今の私はそれ以上に揺している。

ビアンカの後ろに控えている、貴人の侍として、控えめながらドレスを著て無表にこちらを見ている……ミリーの姿に。

「おしいウェグレイン王國王妃殿下に、改めて結婚のお祝いを申し上げます」

いち早く立ち直ったのはアグリア様だった。私は言葉に合わせてさらに深く頭を下げるだけだ。

「ありがとうございます、バラトニア王國王太子殿下。新婚旅行、どうぞ楽しんでくださいませ。それと、大変素敵なお土産をありがとう、大事に『使わせて』いただくわ」

使うのは恐れ多いとすら思うような寶飾品を土産にしたのを分かっていて、これは実用品として扱う、と宣言してみせる。

この自意識の高さは、王族には必要なものではあるけれど、ここまであからさまに(ウェグレイン國王は元より下に見ているのは態度からして明らかだが)馬鹿にしてくる。そして、夫であり最高権力者であるウェグレイン國王はビアンカのその態度を窘(たしな)めない。

というよりも、國賓に対する態度として、二人とも大変失禮な態度をしている。國王は無意識で、ビアンカは意識的に、隠そうともしていない。

殺される、とかの前に、私はこの國の滯在は楽しいものにはなりそうにないと確信した。

そして、ミリーの存在がここにあることに、向けてきた無表な瞳の冷たさに、頭の中は混でいっぱいだった。

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