《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》99 ただいま

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不思議なは天井を差しただけで、何か狀況が変わったかと言えばそうでもない。ただ、このがアグリア様の元に続いていることだけは理解できる。

この城の部に通じている人間は、私の周りには居ない。

ミリーという頼もしい味方がこうして現れてくれた。ここでミリーを信じられないのなら、私は生きる資格がきっと無いのだろう。

戦爭に無関心だった皇である私を憎むのは仕方ない。その憎しみで、フェイトナム帝國の皇室の人間を殺そうとするのも無理はない。

それを乗り越えて、ミリーは今、私を本當の窮地で、何の見返りもなく助けると言った。

練の騎士に比べたらか細いと、頼りない技であっても、一度は私を殺そうとした彼が私に命を奉げると言った。

今はこの言葉と、一條のを信じるしかない。

は移している。騎士は、控えの武である短剣を構え、じりじりと私とミリーを捕まえようとしているが、ミリーの武の方がリーチが長い。

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(お願いお願いお願い、間に合って! ミリーが死んだら意味がないわ、お願い!)

ミリーだって恐ろしいに違いない。私の祈りは何に向けたものか分からない。

それでも願う以上の事が、私にはできない。ミリーのように戦うこともできないし、ビアンカのようにわずかな時間で國を掌握する真似もできない。

私にできるのは生き延びるためにいっぱい頭を働かせることだけ。そして、名前も存在もよくわからない何かにいっぱい祈ることだけ。

が天井から壁を示す。地下まで、アグリア様が辿り著いたのだと理解できる。

けれど、この部屋の外がどういう造りになっているかまで私は知らない。そして、ガーシュがそこまで調べていたらとっくにここに飛び込んできているはずだ。

後はが導いてくれるのを待つしかない。

ミリーは短剣で力押ししてくる騎士をいなし、なるべく距離を取るようにしながら、私を背に庇っている。私も、ミリーの背から出ないように必死に位置を見ていた。

ビアンカの頭にが上っていてよかった。この至近距離で、青い炎があがったら布はその熱気だけで焦げてしまう。目に見えているよりも、火というのは範囲が広く燃えるものだ。

そのくらいは常識としてフェイトナム帝國の皇室では教えられる。

それに気付いていない。まだ騎士をなんとかして私の元へ送り込もうとしているが、先程のデモンストレーションが余程効いたらしい。

そのうちに、走ってくるいくつもの足音が聞こえてきた。

「クレア!」

「アグリア様!」

この薄暗い部屋の中、まっすぐにびたの先に、アグリア様の姿が見える。

が私の元から、アグリア様の手にる真珠に真っ直ぐ向かっている。

アグリア様の後ろにはガーシュが、メリッサとグェンナが、ゴードンとジョンをはじめとした護衛に來てくれた騎士たちがそろい踏みだった。

ビアンカが連れてきた騎士たちより數も多い。何より、私はたった一人、ここに落とされた時の不安が一気に霧散して笑ってしまった。

「この布団の上には來ないでください! とにかく、騎士たちをお願いします!」

「クレアぁ! ど、どこまで、どこまで私の邪魔をしてくれるのよぉ!」

ビアンカがヒステリックに頭をかきし、ぶ。もうその聲には理はない。確実に、私を殺す計畫は失敗した。

「ビアンカ、私は何も邪魔しなかった。――姉妹だから、これだけは教えてあげるわね。あなたは私憎さで、このウェグレイン王國からならいつでもフェイトナム帝國に戻れる、と思っているようだけれどね……、宗教はその人の、生き方なの。利用しようとしてはいけなかったわ。これからは、あなたはこの國で、リーナ教に殉じて生きるしかない。……助けてもあげられないわ、ごめんね」

「そんなことない! お父様はいかようにもしてくれるって……!」

「それは、私を殺せたら、の話よ」

私の言葉に雷に打たれたように目を見開き膝をついたビアンカに、駆け寄る人は誰も居なかった。

ビアンカの騎士たちは、バラトニア王國の近衛騎士たちによって首尾よく倒され、捕らえられていく。

ガーシュが一人布団の上まで飛び込んできたが、ガーシュならば問題ないだろう。

騎士を難なく昏倒させると、仕込みの鉄線で手足を縛って自由を奪っていった。

その景を見て、ミリーがぺたりと座り込む。安心したのだろう。もしかしたら、私を守って死ぬことまで想定していたのかもしれない。

だけど、私はミリーを殺す気なんて、もとよりない。フェイトナム帝國を、ビアンカを裏切ったと知られたら、きっと彼はもう生きていけない。

だから、一緒にバラトニアに帰る道しかもう殘っていない。

「ガーシュ。この布団は防火布だわ。この円から出る時に炎が立ち上るから、上手く騎士を包んでまずは蹴り出して。その後私たちを外に連れ出してちょうだい。――じゃないと、アグリア様が今にも飛び込んできそうなの」

「あぁ、だから平然と……はいはい、了解です。――無事でよかった、クレア様」

「……ありがとう、ガーシュ」

ガーシュは手持ちの短剣で防火布の巨大な布団を切り裂き、まずは騎士を包んで外に(重裝騎士を持ち上げる力がどこにあるのか分からない程細いというのに)放り投げた。予想通り、炎はあがったが、騎士自は焦げることなく床に転がっている。

その後、殘りの布を切り裂いて私とミリーを包むと、両腕に一人ずつ座らせるようにして抱え上げた。

「ガ、ガーシュ!」

「口を閉じて歯を食いしばって。布は保険、俺が飛んだ方が早いです」

そう言われてしまえば、そこまでだけれども。

アグリア様がはらはらしながらこちらを見ているが、ガーシュが私を傷つける真似はしない。

(だって、縁上の誰よりも私に優しいお兄様だもの)

ミリーはガーシュを知らないので不安そうにしがみついていたが、ガーシュは重裝騎士よりは軽い私たち2人を抱えると、高い天井に手が屆きそうなほど高く、ふわりと飛び上がり、何の衝撃も無く著地した。

そのまま私はガーシュの腕を降りると、アグリア様に向って駆けより、腕の中で聲を上げて泣いた。

私の帰る場所に帰ってこられた安心で、私は、もう堪える事が出來なかった。

「クレア……、遅くなってごめん。おかえり、……無事でよかった」

「はい……、ただいま、アグリア様」

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