《サモナーさんが行く》2

迫っている2つの影はどうやら野犬のように見える。

まだ距離があるせいか【識別】ではモンスター名稱まで確認できない。

姿形は犬のように見えた。

いや、昨日も戦ったことがあるワイルドドッグと思われる。

赤の逆三角形のマーカーは點滅していて、俺達を攻撃目標と認識しているものと分かった。

昨日は一匹だけを相手に戦って問題なく勝ってはいる。

戦って見た覚ではホーンラビットよりは難敵、といった所だろう。

一応逃げる選択肢もあるが。

「ヴォルフ、戦うぞ。但し無理はせず俺から遠く離れるなよ」

戦闘中でもポーションが使えるよう一つだけ服のポケットにれてあるのを確認する。

一対一ならばノーダメージとはいかないがヴォルフが余裕で勝つだろう。

だが二対二ならばどうか。

ヴォルフとの連攜が試される。

ヴォルフが姿勢を低くして迎撃の構えをとる。

こっちに迫るのは確かにワイルドドッグだ。

一匹が先行して突っ込んでくる所をヴォルフが飛びかかった。

最初、互いに首元を狙うようにグルグルと回ったが、互いに攻めきれない。

ワイルドドッグの意識はこっちに向いていないようだ。

ロッドでワイルドドッグを突く。

但し腹の下側に向けて捻じ込むように、だ。

そのまま跳ね上げて宙に放り上げるようにしてやった。

もう一匹はこっちに飛び掛ってくる所を橫合いからヴォルフに當たりを喰らっていた。

地面に倒れたワイルドドッグの腹をロッドで突いて地面に押し付ける。

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一瞬だがきが鈍ったワイルドドッグの咽笛をヴォルフが噛み付いた。

ワイルドドッグのHPバーが一気に減っていくのが分かる。

もう一匹のワイルドドッグが迫ってきていた。

攻撃対象はヴォルフのようだ。

今、行を抑えているワイルドドッグの止めを刺すのを優先するか。

迫ってくるワイルドドッグを牽制するのを優先するか。

逡巡するが決斷する前にかしていた。

ロッドで抑えているワイルドドッグは右足で踏みつけ、ロッドはもう一匹に向けて構え直す。

ヴォルフに當たりするような勢いで迫っているワイルドドッグの橫っ面を叩いてやった。

そこそこダメージは與えたようだ。

だが距離が開いたので余裕ができた。呪文を選択する。

初期セットしてある共通魔法で最初から使える攻撃呪文《フォース・バレット》だ。

足元のワイルドドッグはヴォルフに咽笛を噛まれたままダメージをけ続け、HPバーが消失した。

これでもうあと一匹。

形勢不利と見たのか、殘ったワイルドドッグがを翻して逃げようとする。

「フォース・バレット!」

目には見えない魔力の塊が背後からまともに命中し、その威力で転がっていった。

HPバーは大して減ってはいない。

だが転がってしまったことでヴォルフに対する隙を生じてしまっている。

後足に噛み付いたヴォルフはそのまま引き摺るように移し、振り回すようにしてダメージを與え続ける。

こっちも即座に距離を詰めるとロッドで腹のあたりを突きまくる。

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程なくしてHPバーが消失する。

《只今の戦闘勝利で種族レベルがアップしました!任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》

目の前に小さくステータス畫面が現れて、視線を移するとステータス項目が點滅する。

基礎ステータス

用値 15

敏捷値 15

知力値 18

筋力値 12

生命力 15

神力 19

どうしようか。

他にパーティメンバーのプレイヤーがいるのなら特化したい所だが、今は相棒のヴォルフしか頼る存在がない。

戦闘ではロッドで毆りつける機會も多いことだろう。

筋力値を凝視する。

《筋力値に1ポイント加算しますか?》

《Yes》《No》と橫に選択肢が現れる。

《Yes》を凝視すると筋力値が12から13に変化した。

キャラクター長の最初の一歩だ。

《ボーナスポイントに2ポイント加算されます。合計で21ポイントになりました》

《取得が可能な武スキルに【棒】【両手槍】【打撃】【蹴り】が追加されます》

《取得が可能な補助スキルに【投擲】が追加されます》

《スキル取得選択畫面に移行しますか?》

一応《Yes》に進んで選択項目をザッと見る。

スキルは武、防、魔法、生産系、補助、と大まかに分けられている。

だが項目が多すぎて目移りしてしまい、真面目に選ぶ気は起きない。

・・・これはアドバイスをけてからのほうがいい。

ここは移を優先しよう。

最後にボーナスポイント殘が19から21へと増えていたことは確認しておいた。

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ワイルドドッグに剝ぎ取りナイフを突き立てると死は煙と消えていく。

ドロップアイテムは殘らなかった。

もう一匹も同様である。殘念。

そこから更に西へと進む。

昨日うろついていたあたりの丘の上から見た景は壯絶だった。

を求めてうろつくパーティがいくつも見えている。

を狩り盡くす勢いである。

だが西への移がリスクが低くなることでもある。

遠目に目標となる森を眺めながら街道に沿って歩き続けた。

ホーンラビットは町の周囲で出現するポピュラーな魔、らしい。

昨日も狩ったが、うまく立ち回れば、今のオレでも単獨で勝てそうである。

無傷で、とはいかないだろうけどね。

ヴォルフがいるおかげで、一匹だけで遭遇したホーンラビットは五匹連続ノーダメージで葬っていった。

ドロップは【鑑定】してみると皮二枚に三塊だ。角も三つ拾っている。

【素材アイテム】野兎の皮 原料 品質C レア度1 重量1

ホーンラビットの皮。まだなめしていない。一般的に流通する小さな皮。

【素材アイテム】野兎の 原料 品質C レア度1 重量1

ホーンラビットの。野趣に溢れる味で知られているが質はい。

【素材アイテム】野兎の角 原料 品質C- レア度1 重量0+

ホーンラビットの角。先端は鋭く尖っている。

現時點で換金できるのはこれらドロップ品が頼りだ。

ホーンラビットもワイルドドッグもお金を落としたりしない。

三匹目を倒し、ドロップアイテムのの確認を終えた所でインフォメーションがあった。

《只今の戦闘勝利で職業レベルがアップしました!》

《取得が可能な補助スキルに【解】が追加されます》

《只今の戦闘勝利で杖レベルがアップしました!》

《只今のドロップアイテム鑑定で鑑定レベルがアップしました!》

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ヴォルフ』がレベルアップしました!》

ほう。

一気に増えたな。

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》

おや。

召喚モンスターでもレベルアップ時に任意のステータスを上昇できるようだ。

俺の時の種族レベルアップと同様に目の前に小さくステータス畫面が現れる。

視線を移するとステータス項目が點滅していく。

召喚モンスター ヴォルフ ウルフLv1→Lv2

用値 8

敏捷値 25(↑1)

知力値 12

筋力値 10

生命力 15

神力 10

さすがに素早いんだな。

敏捷値には既に↑1となっている。

視線を移して點滅させて見た。

《今回のレベルアップで上昇するステータスとなります。任意での上昇選択はできません》

おっと、殘念。

どうやらステータスは2ポイント上昇したようだが、任意で選択できるのは1ポイントだけのようだ。

こうなると育方針はどうすべきか、考えていなかった事が悔やまれる。

悩ましいが。

今、オレがヴォルフに求めている事は何か。

やはり近接攻撃における打撃力強化がしい所だ。

筋力値を凝視する。

《筋力値に1ポイント加算しますか?》

《Yes》《No》と橫に選択肢が現れる。

《Yes》を凝視すると筋力値が10から11に変化した。

気のせいかヴォルフも嬉しそうに見える。

ご褒をあげていいかもしれない。

ヴォルフってば野兎のって食うのかね?

メニュー畫面を呼び出すと検索窓に『召喚』『モンスター』『エサ』と力して検索してみる。

召喚魔法の説明欄の一部が呼び出され、別窓に表示された。

《召喚されたモンスターはそのタイプに関わらず食事やエサの必要はありません》

《HPの回復、MPの回復はプレイヤーと同様の扱いとなります》

《召喚狀態を解除した場合、そのクーリングタイムの長さに従いHPの回復、MPの回復が行われます》

おっと。

関連項目にまで目を通しそうになった。危ない危ない。

読し始めると終わりが見えなくなるのはオレの悪い癖だ。

エサ不要とは便利だな。

でもまあ食わせてみてもペナルティがあるとも思えない。

「食うか?」

試しに食うかどうか、実地で試してみたらいい。

野兎のをヴォルフの目の前に差し出すと、うれしそうにがぶりつく。

ほう。

食うじゃないの。

ヴォルフの食事が終わるまで背中の並みのを楽しみながら待つ。

がっつき振りが半端ない。

野兎のは見る見るうちに骨だけになっていった。

「満足したか?」

舌で口元を舐めるヴォルフにそう囁く。

尾も弾んでいる。満足したようだな。

たまにならご褒はアリってことにしよう。

しようとするとヴォルフが口に何か咥えている。

野兎のれの果て、野兎の骨だ。

【素材アイテム】野兎の骨 原料 品質E レア度0+ 重量0+

ホーンラビットの骨。もはや食べられる部分は骨髄しかない。

【鑑定】してみても利用価値があるとは思えないが。

「必要なのか?」

ヴォルフが名殘り惜しそうにしているので、骨をけ取ると荷れておいた。

満足そうに見えるのは気のせいだろうか?

「じゃあ先を急ごうか」

それから暫くは道沿いに進んだ。

他のパーティの狩りの様子もたまに見える。

ドロップのあるホーンラビットは狙って狩りに向かっているパーティが多いようだ。

ん?

何か鳥のようなものと戦っているパーティがいた。

【識別】で見てみようとするが距離があって確認できない。

いや待て。

距離がまったようで【識別】できたようだ。

ステップホーク Lv.1

 討伐対象

頭上の赤い逆三角形のマーカーは點滅していない。

攻撃目標がこっちではないからだ。

この鷹はどうやら後衛の魔法使いを狙っているようだった。

いや違うな。

正確には魔法使いが持っている何かを狙っているように見える。

纏わり付くようにしつこく迫っていた。

そのパーティは五人いるようだが、攻撃を繰り出してはいるものの、その攻撃はまるで當たっていない。

魔法使いに攻撃が當たるのを躊躇しているためだろう。

魔法使いの頭を突いていた鳥は何かをその両足に摑んで飛び上がった。

塊だ。

【識別】なのか【鑑定】なのか分からないが、視線を合わせると野兎のであることが小さな別窓で表示される。

態勢を立て直した魔法使いが魔法を放つが、當たらずに終わった。

「あーーーー!!お返せえええええええ!!」

弓を持ったんでいた。

まあその気持ちは分かる。

ドロップしたホーンラビットのを橫取りされたって事なのだろう。

そういう事もあるのね。オレも注意せねば。

《只今のモンスター識別で識別レベルがアップしました!》

おや?

戦闘に參加していないのにスキルがレベルアップしてしまった。

こういうのもアリなのか。

それから更に西へ、道沿いにずっと進む。

まだ目印になる見櫓が見えない。

さすがに他のパーティを見かける事もなくなった。

に遭遇してもよさそうなのに・・・魔ウェルカムな時に限って遭遇しない。

だがいずれは出會う。

道の外れで佇んでいたホーンラビットを見つけた。

頭上の赤い逆三角形のマーカーが點滅し、こっちに迫る。

【識別】で見てみると確かにホーンラビットだが。

ホーンドラビット Lv.1

 討伐対象 アクティブ狀態

あれ?

さっきよりも表示容が増えているようだが。

識別がレベルアップした影響なのだろう。

「よし、行くぞヴォルフ」

ちょっとだけ強くなった手ごたえはあるだろうか?

戦闘は長引いていた。

おかしい。

このウサギってば隨分とタフだな。

ヴォルフがいる分、有利に戦えている筈なのになかなか倒れてくれない。

のHPバーは半分をようやく切った所のようだ。なんでこんなにタフなんだ。

なんで。

オレは一つ間違えていたようだ。

このウサギ、角が真っ直ぐではなく、微妙に反ってきているように見える。

実は別の魔か?

改めて【識別】で見てみる。

ホーンドラビット Lv.1

 討伐対象 アクティブ・激昂狀態

えっと。

ホーン『ド』ラビット?

運営め、紛らわしい名前の魔を用意するなんてバカじゃないの?(褒め言葉)

こういう遊びもあっていいと思う。個人的には好きだ。

でも今は別の事に注意を向けるべきだ。

激昂狀態って何だ?

このウサギは最初、ホーンラビットと変わらない姿形だったのは間違いない。

それが変容している。

角は更に反っていっているようだ。

も若干だが大きくなり、茶の一部が徐々に濃い黒になり縞模様になっていった。

口から牙のような前歯がびてきているのも分かる。

いやな予しかしない。

目が赤く走ってきている。

次の剎那。

目の前に何かが迫っていた、と見えたが次の瞬間には消えていた。

二つの獣の荒ぶる咆哮が響いている。

ウサギがこっちに飛び掛ると同時にヴォルフが橫合いからウサギに攻撃を仕掛けたのだ、と分かった。

危なかった。

ヴォルフは、と言えば、ウサギの首に噛み付いたまま振り回そうとしていた。

ウサギはウサギで、自分にもダメージがあるのもかまわず飛び跳ねている。

獣同士の命の削り合いだ。

フォース・バレットを撃てるよう準備するが、なかなか呪文を放つ機會が摑めない。

ヴォルフが一旦離れてくれないと間違って當たりそうで撃てない。

こちらの思考を読み取ったのか、ヴォルフがウサギが跳ねるのと同時にその牙を離した。

今だ。

空中に浮いた狀態のウサギに向けて魔法を撃つ。

「フォース・バレット!」

魔法は命中するが、HPバーはそんなには減ってくれない。

だが吹き飛ばされたウサギは背中から地面に著地してしまい、大きな隙を見せている。

ヴォルフが再び襲い掛かった。

噛み付いた箇所は後足だ。

そのまま振り回すと地面に叩き付けた。

何度も。

何度も。

その後はオレの出番はなかった。

「よくがんばったな」

ヴォルフのHPバーは半分を割り込んでこそいなかったが、三割ほど減っているように見える。

服のポケットにれてあったポーションを取り出すと、背中にかけた。

全快とはいかなかったが、余裕はできただろう。

オレはと言えば何度か攻撃が掠っていて一割ほど減っている。

自分にはポーションは使わないでおく。

時間経過で僅かではあるがHPは回復してくれるのも分かっている。

剝ぎ取りナイフを突き立てると、ホーン『ド』ラビットはドロップ品を三つ殘して消えた。

と角、それに寶もあった。

【素材アイテム】縞野兎の 原料 品質C- レア度3 重量1

ホーンドラビットの。野生の力が宿るだがこのままではくて歯が立たない。

【素材アイテム】縞野兎の角 原料 品質B- レア度4 重量0+

ホーンドラビットの角。先端は鋭く角そのものは反っている。

【寶】魔石 魔法アイテム 品質E+ レア度2 重量0+

に宿る魔力が集約されて核となった質。

品質はともかく、レア度が微妙に高くなっていた。

最初のフィールドのレアモンスターか何かだろうか。妙に強かったし。

六人パーティでなら手強くはあっても問題ないのだろうが。

さらに西へ。

道沿いにホーンラビットを狩りながら進む。

遠目に森が見えた頃にそれは起きた。

《これまでの行経験で召喚魔法レベルがアップしました!》

え?

してる最中にレベルアップ?

レベルアップしたのは召喚魔法スキルだ。

別に召喚魔法は使っていない。

いや。

召喚したヴォルフと行を共にしているだけでも経験値を稼いでいるのか。

もう一度、ヘルプで魔法スキルの説明を見たら済むことだ。

【魔法スキル】召喚魔法Lv2

使役するモンスターを召喚する魔法スキル。

Lv向上に従いより強力なモンスターの使役が可能となる。

召喚したモンスターはパーティメンバーにカウントされ、Lvアップすることで長していく。

※召喚モンスターと共に行する時間は長いほど、行に伴う経験が濃いほど早く長します。

※場所によってはモンスターの召喚を制限される場合があります。

※召喚モンスターは死亡することでロストとなりませんが、経験値減ペナルティとクールダウンが必要です。

うん、確かに書いてある。

確かに召喚魔法は呪文を発するようなスキルではない。冒険の最初に使う程度だし。

まあレベルアップの仕方としてはアリだと強引に納得する事にした。

主人公???

種族 人間 男 種族Lv2(↑1)

職業 サモナー(召喚師)Lv2(↑1)

ボーナスポイント殘21(↑2)

スキル

杖Lv2(↑1)召喚魔法Lv2(↑1)風魔法Lv1 錬金Lv1

連攜Lv1 鑑定Lv2(↑1)識別Lv2(↑1)

裝備 初心者のロッド 簡素な服 布の靴 背負袋

所持アイテム 剝ぎ取りナイフ 老サモナー宅への地図

ステータス

用値 15

敏捷値 15

知力値 18

筋力値 13(↑1)

生命力 15

神力 19

召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv2(↑1)

用値 8

敏捷値 25(↑1)

知力値 12

筋力値 11(↑1)

生命力 15

神力 10

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