《サモナーさんが行く》9

レムトの町に到著した。

結局、師匠はオレが魔を狩っている間、何もしなかった。

眺めていただけだ。

たまに杖を掲げて魔を指し示す事があった。

そしてその先には大抵、ワイルドドッグがいたりする。

犬はドロップを殘さないから遠慮したいんですけど!

でも師匠の指示ですから當然狩りますけど。

それに結構な數の戦闘をこなした筈なのに、徒歩と比べると町に到著するまでの時間が明らかに短い。

これは嬉しい。

サーチ・アンド・デストロイをしていなかったら師匠の家とは片道1時間程度で行き來できそうだ。

町の中では、馬は降りて手綱引くのがルール、である。

門を抜けてすぐ馬を世話する一角があるが、師匠の馬もオレの馬も召喚したものだから世話は必要が無い。

それに多ではあるが荷も運ばせているし。

鷹であるヘリックスはオレが肩に擔いでいるロッドの先に用に止まっていた。

これもどうにかしたいものだ。

冒険者ギルドに到著すると、師匠の馬から《アイテム・ボックス》である鞄を下ろした。

馬は建脇にある馬留めに繋いでおく。

ヘリックスは馬留め一番上に自分の居場所を見つけたようだ。

師匠はオレに目配せするとギルドの中にっていく。

オレも荷持ちとして付き従う。

つかこの鞄、《アイテム・ボックス》のくせに大きくないか?

さほど重たくないのが救いだ。

ギルドの中は人が多いのは相変わらずだ。

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依頼票を見て回る者。

付で依頼をける者。

さすがに朝では獲を持ち込む冒険者は皆無であった。

町中もそうだが、初日、二日目に比べたら明らかに人が減っていた。

町の外で冒険を求めて出ているのであろう。

師匠は付の一番端、ギルド職員のいない場所に陣取ると、それに中年の職員が気がついた。

あ、オレに師匠を紹介した人だ。

「ああ、助かります!急な話で申し訳ない」

師匠に平謝りである。

オレの時とさすがに姿勢が違っている。

「モノはこれじゃ」

「すぐに數えたいのですが、別の部屋を用意します」

「なんじゃ、普段と違うのう」

「ちょっとした騒ぎになってますから」

付の男は真剣だった。

何か問題でもあったのかな?

男はカウンターの一部を上に跳ね上げると師匠とオレを中に案していく。

ギルド職員の機を橫目に一番奧へと進む。

男が一番奧の扉を開くと中へと通される。

そこは一種の會議室みたいな場所であった。

中で待っていたのは1人の老人だ。

見事な髭は真っ白で口元が見えないほど量がかだ。

「ルグラン!」

「オレニュー!」

あまりしくない老人同士の抱擁。

にはならなかった。

師匠が杖で床を鳴らして威嚇した。

続いて髭をワシ摑みにして下に引っ張る。

「ワシを便利屋か何かと勘違いしておるようでは、の」

「痛い!痛い!よさんかこれ」

「同時に冒険者駆け出しの面倒まで押し付けよるし」

「痛い!何を言うか、どうせ暇潰しに見ておるか便利にコキ使っておるんじゃろうに、痛い!」

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「理由を、言え。まずはそこからじゃ」

ようやく師匠は髭を手放した。

済まないって気持ちになったんで老人に一禮する。

「うむ、ちょっと困っておるんじゃよ」

この老人がギルド長であった。

オレが【識別】で見たらこんなじ。

レムト冒険者ギルド長 ルグラン Lv.???

エレメンタル・メイジ『』 接客中

うわ、なんか凄そう。

名前の前に分が表示されているのは初めてかな?

名刺いらずだな。

中年の職員はと言えば、機の端で《アイテム・ボックス》である鞄を何か紋章のようなもので開けていた。

ポーションを次々と取り出して10個単位で並べていく。

途中で年配の職員を呼んで作業を手伝わせていった。

検品作業だ。

オレもバイトでやりましたとも。

そんな景を見ながらも師匠達の會話にも耳を傾ける。

今、この町で起きている出來事は全ての冒険者に関わるのだから當然興味がある。

何が起きているのか。

冒険者が異常に増えた事によって、様々な所で需要と供給のバランスが崩れているそうなのだ。

その1つがポーション。

師匠によって持ち込まれたポーションの數は430本、それでも間違いなく足りないのだと言う。

素材になる傷塞草は無論在庫が迫しそうな勢いで、町にいる薬師にも増産を促しているそうだ。

そして全ての冒険者にポーション空瓶の回収を指示しているのだとか。

瓶もガラス工に増産を求めているそうだが、元々職人がないので困っているそうで。

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それだけでなく瓶の原料の石英にしてもガラス工職人の元の在庫がピンチになってるとか。

その影響で昨日まで30ディネだった販売価格が50ディネにまで値上げされていた。

商業ギルドが介するとややこしい事になるので、なるべく早く事態の沈靜化を図りたいそうだ。

既に闇マーケット価格は90ディネに屆こうとしているそうだ。

品質B-のポーション価格が200ディネを超えているとか、なんか怖い報も聞こえてくる。

オレも品質C+を1本持ってるけどさ。

不良に囲まれてブツ出せよヲイとか迫られたらどうしようか。

怖いよ。

問題なのはポーションだけではなかった。

他の所でも火種があるそうだ。

例えば矢。

消費に生産が追いつかず、木工職人が増産を始めて対応中。

その煽りをけて、魔師向けの杖の生産が止まっていて在庫のみで凌いでいる狀態。

例えば攜帯食。

冒険者ギルドお抱えの料理人だけでは対応できず、街中の主婦を臨時で雇用したのだとか。

ギルドも冒険者から買い取った素材でやや潤っているものの、固定費が増えていて嬉しいばかりではないようだ。

他にも既にギルドの建は移築を進めているのだが、木工職人がいないので部調度類の作業が進捗しないのだとか。

運営ってばこんな所に市場原理を導してどうするんよ。

「確認しました。全部で8,600ディネになります」

中年の職員が師匠に買取金額を提示していた。

買取価格は1個あたり20ディネか。

師匠は何も言わずに頷くだけだった。

100ディネ銀貨がジャラジャラと目の前で數えられていき、師匠の前で小袋に仕分けられた。

年配のは空瓶を次々と機の上に持ち込んできていた。

あれはなんだ?

「言いにくいんじゃがな。明日までにもっと數がいるんじゃがな」

「無茶を言いよる」

「のうオレニュー、お前さんがその無茶が無茶でないのは知っておるんじゃ」

「他の薬師ではいかんのか?」

「それこそ無理じゃよ。頼む」

ギルド長が頭を下げる。

師匠は渋面のまま頷いた。

「仕方ないのう。まあ手伝いもおるしなんとかなるじゃろ」

「助かる、恩に著るぞ」

「ワシが生きているうちに返せよ」

つまり今日もまたあの薬草採集とポーション作をやるって事だ。

今日の予定が決まりました。

「お前達が寄越したんじゃろ?もうポーションも作らせておる」

「ほう、それは上々ではないか。しでも薬師の手がしいんで助かる」

すみません、僕は召喚魔法を生業にするサモナーですが何か?

「別枠でも依頼をけてくれるかな?最初じゃからポーション15本を納品をしてしいんじゃが」

《ギルド指名依頼がりました。依頼をけますか?》

え?

師匠を見てるとニヤニヤしてるし。

けてもいいものなんだろうか。

「まだ駆け出しに過ぎませんが手助けになるなら否はありません」

《ギルド指名依頼をけました!ポーション15本を納品して下さい》

YesとNoが表示された畫面が目の前から消えていく。。

でもね。

そんなオレの背負い袋にはポーションがっている訳ですが。

背負い袋に手を突っ込んでポーションを機の上に並べていく。

とりあえず全部並べて品質C-以下のものは背負い袋に戻した。

品質C+は《アイテム・ボックス》に別保管してある。

「とりあえずこの22本はどうでしょう?」

ギルド長の表は驚きの表からすぐに笑顔に変わった。

中年の職員が數を數えて確認している。

気がつかなかったが、これは1つ1つを【鑑定】しているのに違いない。

「長、全て問題ありません」

「しかもいきなり依頼數を超えて納品とはありがたいのう」

職員さんからは師匠と同様に報酬を小袋にれて渡された。

100ディネ銀貨が4枚。

1ディネ銅貨が40枚。

師匠の場合と同様に買取価格は1個あたり20ディネか。

《ギルド指名依頼をクリアしました!》

《ボーナスポイントに3點、エクストラ評価で2點が加點され、ボーナスポイントは合計9點になりました!》

「では改めて依頼じゃ。次はなるべく早めにポーション30本を納品をしてしいんじゃが良いかな?」

《ギルド指名依頼がりました。依頼をけますか?》

ああもうけざるを得ない雰囲気だよコンチクショウ。

どうやら依頼をけてクリアすることでボーナスポイントを稼げるようだ。

ある意味でむ所だろう。

「分かりました、けます」

《ギルド指名依頼をけました!ポーション30本を納品して下さい》

30本か。

すぐ明日に納品、というのは出來なくもないだろうけど、他の行の自由度が極端になくなるのは痛いな。

年配の職員がオレの背負い袋に空瓶をれようとする。

「ああ、それはこっちの鞄に一緒にれておいてええぞ」

師匠が目聡く指摘してくれた。

鞄には余裕があるようだ。オレには知るはないんだけどね。

金額は僅かだが自由に出來る手持ちはある。

薬草の採集に行く前に最低でも予備の服は買っておきたかった。

「キース、ワシはこの爺とまだ話さねばならん事がある。暫く町の中でも見て回って待っておれ」

「はい」

願ったり葉ったりです。

改めてギルド窓口で野兎のだけは全て売り飛ばして冒険者ギルドの建を出た。

殘月の手綱を引きながら町を歩く。

ヘリックスは相変わらずロッドの先に用に止まっていた。

町の中はどこも昨日までと比較にならないほど冒険者の姿がなかった。

緑のマーカーがNPCを示す黃のマーカーに埋もれるかのようだ。

店も覗いて回ってみる。

まだ晝飯には全然早い時間なのに食を直撃する匂いが漂っていた。

そんな店の列の一角でオレは足を止める。

ちょっと興味を引く存在に目が向いてしまったからだ。

プレイヤーが店で食べを売っていた。

イカ焼きみたいだ。

それに焼きそばみたいなものもある。

恐らくは兎をツクネ狀にして串に刺したものまであった。

その隣は海産を売っているようだ。

魚介類、それに塩らしきものが並んでいる。

店にいるプレイヤーは3名、全員がであった。

纏っている雰囲気は異なるが面差しは和風風味な上に良く似ている。

「いらっしゃい!出來立てで味しいよ!」

思いっきり営業スマイルだが今は良しとしようか。

3人の中では一番く、人というよりもを振り撒くようなの子だ。

イカ焼き1本を買い食いしながら立ち話を仕掛ける。

「昨日と比べてプレイヤーがないけど何かあったのかな?」

「なんか々と資が足りないとかで細かい依頼やらイベントやらが増えたみたいよ?」

「へえ」

オレと話しているは料理人持ちなんだろうか?

やけに旨いな、このイカ焼き。

「もしかして、料理人?」

「もしかしなくても料理人持ちだよ、そっちはサモナーさんみたいだけど」

「ああ、苦労してるけどまあボチボチ進めてるよ」

「こっちもね。生産職の中では料理人って手堅いけど地味に稼がないといけない商売だからね」

そう言うと彼は殘月とヘリックスに目を向ける。

にも殘月とヘリックスの頭上にプレイヤーを示す緑のマーカーは見えている筈だ。

緑のマーカー付きの馬やら鷹やらを引き連れているのは確かにプレイヤーのサモナーしかいないよね。

「オレはキース」

「あたしはミオ。言っておくけどナンパはなしでね?」

「そうしたい所だけどね」

改めて彼のマーカーを見て【識別】してみると確かに料理人だった。

ミオ Lv.2

コック 接客中

に聲を掛けたのはプレイヤーだからではない。

その裝備故であった。

明らかにカスタムメイドされた革ジャケット。

ハートマークがあしらわれていて目立つデザインをしている。

明らかにNPCが作るような代ではない。

「実はお目當ては君が裝備してる革ジャケットの方。私も作ってしくなってね」

「へえ」

ニコリと実に嬉しそうな顔を見せる。

これはあれかな?

報がしけりゃ焼きそばも買えって事かね?

とりあえずはスルーで。

「いいでしょ。伝手があってね」

「紹介ってダメかな?」

「どうかな?」

の目が店の奧側にいる2人に目が向く。

「なにかお役立ち報があるとうれしいなあ」

「ミオ!」

奧にいたが2人ともこっちにきた。

この二人は良く似ている。

いや、髪形と裝備を除けば瓜二つだ。

雙子か。

「客なら私はウェルカムなんだからそう邪険にしないで!」

「むう、サキ姉は甘い!」

この子の言い返す様はなんか可いな。

「ああ、気にしないで。私はこの店とは無関係。ここでこの娘と待ち合わせなだけだから」

サキ姉と呼ばれたはやや大人びた腰で人當たりもソフトなようだ。

地味な格好をしているくせに顔つきは豪華な人ってとこか。

もう1人は顔つきが同じなのに人というよりの方が前面に出ている。

雙子でも印象がまるで違うな。

このは明らかにニヤニヤと他の2人のやり取りを楽しんでいた。

「私はサキ。レザーワーカー、つまり皮革職人よ」

「ついでに私も。マーチャント、商人で隣の店主のフィーナ」

「今は手持ちの皮素材はないから、素材持込ならなんとかするわよ?」

「そうですか。なら見て貰った方が早いかな」

「今あるなら見せて貰いたいわね」

店の裏に回ると座って食べるためのサイドテーブルがあったので、そこに素材を出していく。

野兎の皮には驚きの顔を見せなかったが、邪蟻の甲には興味を示したようだ。

そして雪猿の皮には食い付いた。

「これは初見だわ」

「うん。掲示板にもなかった、よね?」

6つの目が『どこで手にれた』と言っている。

なんか見えない圧力が。

「邪蟻の甲だって報掲示板では知ってたけど現は初めてだわ」

「軽いよね。でもそれだけに加工するのは難しいかも」

やべえ。

オレを見る目は獲を狩る大型食獣のそれだ。

「野兎の皮は15枚、か。ジャケットにするだけなら十分なんだけど、何か希はある?」

「オープンフィンガーグローブを両手分、それに當て。肘パッドと膝パッドも作れたら助かる」

サキが何やらブツブツと呟き始めた。

材料を計算しているのだろう。

オレの型を測らなくて大丈夫なんだろうか。

見るだけで分かってしまうのかもしれない。

「邪蟻の甲はグローブ、肘パッド、膝パッドにり付けて使いたいな」

「プロテクターみたいなじ?つかサモナーなのに格闘戦でもやる気?」

「そう。あと雪猿の皮だけど、この鷹が止まる場所に使いたいね」

「鷹匠プレイ?」

「鷹匠プレイで。左腕のカバーか左肩のカバーが出來たらありがたいな」

どんなプレイだ鷹匠プレイ。

「いやサキ姉、それを言うなら鷹狩りプレイだって」

ミオのツッコミはともかく。

サキはまたブツブツと呟いている。

會話してると普通なんだが呟いてるとなんか怖い。

呪われてるみたいだし。

「うん、それは両方できるよ。大丈夫」

「デザインは?この娘みたいにも出來るけど」

「いや、そこまで凝らなくていいよ。つか今日ってプレイ3日目だよな?よく作れたね、そのジャケット」

「そこはそれ、素材を集めるのにも作るのにも々と頑張ったからね」

サキの笑顔が何故か怖い。

「ね?ね?やっぱり當たりだって!いい宣伝になるじゃないの!」

「まああんたの言いたい事ってのは分かるけどさ、イカが焦げるわよ」

「おっといけない」

イカ焼きに戻るミオ。

料理人がんばれ。

「で、イカほどになるかな」

「それ、突っ込まれたいのかな?」

「ミオ、茶化さない。そうね、1,000ディネはしい所だけど」

わお。

手持ち分超えちゃったよ。

「ちょっと待って、サキ。キースさんに確認したいのだけど」

ずっと寡黙だった商人のフィーナが會話に割り込んだ。

「蟻のドロップ、他にあるんじゃない?」

「あ、そうか。レイナちゃん呼ぼうか?」

「放っておいても來るわよ」

なんで他にドロップ品があるって分かるんだ?

「ああ、確かに報掲示板に書き込みあるね。スクショはまだないんだっけ?」

「うん。ウサギの角以外にも底上げになりそうなのは全部検証すべきだって」

「ですよねー」

もう誰が何を話しているんだか分からなくなった。

三人寄ればしいとはこの事か。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv3

職業 サモナー(召喚師)Lv2

ボーナスポイント殘9

セットスキル

杖Lv2 打撃Lv1 蹴りLv2 召喚魔法Lv3

魔法Lv1 風魔法Lv2 土魔法Lv1 水魔法Lv1

錬金Lv1 薬師Lv1

連攜Lv2 鑑定Lv3 識別Lv2 耐寒Lv1 摑みLv1

Lv1

裝備 初心者のロッド 簡素な服 布の靴 背負袋 アイテムボックス

所持アイテム 剝ぎ取りナイフ

召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv3 帰還しててお休み

殘月 ホースLv1

ヘリックス ホークLv1

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