《サモナーさんが行く》16

師匠の目の前に3の召喚モンスターが現れようとしていた。

目を引くのは一番大きな影だ。

師匠の家の門番であるストーンゴーレムとも遜のない大きさ。

だがこいつはゴーレムではなく筋の鎧をに纏っていた。

レッドオーガ Lv.???

召喚モンスター 攻撃態勢

なんか頼もしそうな奴だな。

ロック鳥が両腳に摑んでいた魔を地面に放り投げた。

はその勢いで背中から地面に叩き付けられる、かに見えた。

は地面スレスレで勢を整えて著陸をしてのけたのだ。

一瞬、突風が周囲に巻き起こったようだ。

この魔、一何をした?

レッドオーガの影から何か小さなものが魔へ突進した。

速い、そしてなんという勇気。

レッドオーガも魔も大きいから遠近がおかしくて小さくじる。

だが間違いなくオレよりも格は良く大きい筈だ。

夜叉 Lv.???

召喚モンスター 攻撃態勢

名前が和風なんですけど。

それに何か怖いですよ、夜叉とか。

そしてその夜叉の後方でを伏せている召喚モンスターがいた。

妖狐 Lv.???

召喚モンスター 支援

は金と白の並みで四腳の先だけが黒く、鮮やかな彩で目が離せなくなる。

そのくせに炎のようでもあり、存在が薄く見える。

不思議な覚だ。

いや、実際にその姿が消えていくようだ。

見失ってしまった。

一方で目を転じるとロック鳥が師匠の後方に舞い降りた。

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師匠は回復魔法を既に唱え終えていたようで、ロック鳥のHPバーが大きく回復した。

でも全快には行かなかったようだ。

師匠はすぐさま次の呪文詠唱にる。

急に周囲の空気が震え始めた。

を中心に空気が収斂していくようだ。

風を吸い込んでいる。

はその大きな口で周囲の空気を吸い込んでいるようなのだ。

倒木やら小さな石礫も構わず呑んでいく。

そしてその風の流れが止まった。

次の瞬間、その魔は口からブレスを吐いた。

いや、まるで竜巻を口の中から生んでいるような不思議な景だ。

その竜巻は師匠のロック鳥に向かっていく。

空を飛ぶために大きな翼を持つロック鳥にとっては有難くない攻撃だろう。

そしてその攻撃は直撃した。

直撃した、筈だ。

だが変わらずロック鳥はそこに佇んでおり、ついでに師匠もその足元にいた。

何が起きた?

レッドオーガが魔の鼻を脇に抱えて口からびる太く短い牙を摑んだ。

そのまま引き摺り回そうとする。

夜叉は足元を駆け回っていた。

その手に持つのは幅広の鉈だ。

遠近がおかしくて小さく見えるが、かなり巨大な代だろう。

一振りする度にの飛沫の連なりが見えた。

同時に苦悶する魔の聲も。

ダメージをけたカニバリウス・テイパーの怒りは相當なものだろう。

凄まじい咆哮を上げるとレッドオーガの全に傷が生じていった。

小さな竜巻がレッドオーガの全を切り刻んでいたのだ。

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レッドオーガもまた獣の咆哮を上げる。

に染めているように見えるが、傷は見る見るうちに塞がって行くようだ。

そしてその背中の筋は更に膨れ上がった。

反撃。

の鼻を脇に抱えたまま振り回した。

そして投げつける。

は再び怒りをぶつけようと口を開けようとしたが果たせなかった。

レッドオーガに口元を踏みつけられていた。

地上に橫たわった魔の腹を夜叉が切り払っていく度に魔のHPバーが目に見えて削れていく。

そして攻撃が追加された。

いつのまにか空中にいたロック鳥が魔の上に覆い被さるように舞い降りた。

その頭を啄ばむ。

これまでにけた傷のお返しをするかのように、だ。

そしてその背中には師匠が乗っていた。

妖狐もいつの間にかロック鳥の上にいる師匠の傍に佇んでいる。

完全に勝負の趨勢は定まったようだ。

はかなり、いや、壯絶な戦いを見せたと思う。

だがその最後はあっけないものだった。

そりゃあ囲まれて集中攻撃をけたらたまったものではなかろう。

強い、な。

強すぎですよ師匠、あこがれちゃいます!

でも先は相當に長そうなんですけど。

が息絶えた戦場は酷い有様になった。

周囲の森の木々は荒れ果ててしまっていて倒木だらけだ。

いや、よくオレ達の方も無事だったものだ。

師匠は魔の死からアイテムを剝ぎ取る様子は見せず、何かを調べているようにも見えた。

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明らかに不機嫌な顔つきだ。

何か問題でもあったんだろうか?

だが師匠も決意を込めたようで、剝ぎ取りナイフを突き立てた。

あの魔の巨は煙となって消えてしまっていた。

いや、師匠の手元に何か小さなが殘されていた。

「大丈夫ですか?」

「うむ。問題ない」

師匠の足元を妖狐が纏わり付いていた。

尾は數本あるように見える。

いや。

何かがおかしい。

尾を見ていると一本にも二本にも見えたり、何もないように見えたりする。

まるで炎が揺らめいているようであった。

「こやつを直視してはならん。自然と幻されてしまうのでな」

そういうものなんでしょうか。

いや、さっきロック鳥が直撃したように見えたのはこの召喚モンスターの仕業かもしれない。

幻影を使って魔の攻撃を回避していたと考えたら納得できる。

狐っていう位なんだし化かされてるってことか。

近くに寄ってみると、夜叉はオレの頭二つどころか三つほども大きい偉丈夫だった。

革鎧を裝備しているその姿は何かに似ていた。

仏像だ。

邪鬼を踏みつける四天王像に通じるものがある。

但し頭だけが違う。

髪のはワイルドにばしたままだ。

髪で隠れた目元だが角度によっては見えることがある。

真っ赤に充した目だ。

恐怖、狂気、それに殺意が滲んでいる。

その恐ろしさに足が竦んだ。

そして夜叉を大きく上回る軀のレッドオーガだ。

相手に竜巻による攻撃をまともに喰らっていた筈なのだが、傷跡が見當たらない。

HPバーも全快になっているようだ。

師匠が回復させていた様子はなかった。

なんという回復力なのか。

レッドオーガの深く筋の盛り上がりが凄まじい。

まさに筋の鎧だ。

さすがにこのサイズが相手ではまともな攻撃が通じそうにない。

サイズが大きすぎて関節技とか投げとかどう考えても無理。

拳も蹴りもダメだな。

先々はレッドオーガみたいなのも相手にするんだろうかね。

師匠の召喚モンスター達が一斉にオレ達を見た、ような気がした。

一瞬だがヴォルフとヘリックスにも張が走る。

だがそれもすぐに終わった。

師匠はロック鳥を殘して召喚モンスターを帰還させていく。

「すぐに戻るぞ」

「はい」

どうやらオレにもう一戦やらせる事はなさそうだ。

実は張してました。

ここってさっきの魔みたいなのって多いんですか?

怪獣大戦爭みたいなのにはついていけません。

「ここらの魔が逃げてしもうては、な。呼ぶにもこの辺りからでは遠すぎる」

程。

だってさっきの戦いの巻き添えはむところではなかろう。

オレにとっては僥倖である。

師匠に促されて帰路についた。

何故だろうか、師匠の難しい顔付きは普段とまるで違う。

しだけ不安になりながらもヴォルフに抱きつくとロック鳥の羽の中で暖をとった。

その後はいつものようにポーション作の手伝いだ。

いつもの通りに。

だが事件は起きた。

師匠がポーション作でしくじったのだ。

しかも錬金で一度に作した十本全てが品質C-という事態である。

「おお、これはいかんな」

師匠はそう言うのだが、こっちが不安になる。

様子が明らかにおかしいからだ。

その後はなんとか品質Cで揃っていた。

だが師匠も自分の調子を把握しているようだった。

ポーションを250本ほど作した所で作業を止めてしまった。

「どうもいかん。し休んでから再開するとしよう。お前さんは自分の依頼を先に進めておくように」

「はい」

師匠は一通りの片付けはメタルスキンに任せて塔の下へと篭ってしまった。

さっきの魔、何か問題があったのかね?

まあ気にしてもしょうがない。

依頼を先に片付けよう。

そういえば今日は昨日までと違う事がある。

昨日までのパターンならばMPに余裕はなかったからな。

錬金を複數回使えるだけの事はできそうだ。

今までで一番うまくポーション作できたパターンを使って短再現を使ってみる。

傷塞草は1本でポーション2本分だ。品質B-を作ったパターンで行こう。

結果は品質C+が2本が出來た。

錬金スキルの短再現によるメイキングだが、どうしても品質の劣化があるようだ。

もう一回やってみても品質C+で結果を再現した。

ロットを大きくしてみよう。

傷塞草は2本でポーション4本分だ。

今度は品質Cが3本に品質C+が1本となっていた。

いかんな。

品質Cで揃えたいのに揃わないとか。

傷塞草は3本でポーション6本分でもやってみる。

品質Cが5本に品質C-が1本となった。

丁度良い塩梅ってどこなんだろうか。

《これまでの行経験で錬金レベルがアップしました!》

《これまでの行経験で職業レベルがアップしました!》

おお、都合良く錬金がレベルアップしたか。

ついでに職業レベルも上がったようだ。

どうやら職業レベルはその職業にふさわしいスキルが育っていないと上がらない仕様のようだ。

ずっと錬金がLv.2だったしな。

続けてポーション作を錬金の短再現を使って量産していく。

傷塞草は3本でポーション6本分だ。

全てが品質Cになった。

その後も調子に乗って何度も繰り返すが、品質C-が出なくなっていた。

傷塞草は4本でポーション8本分もやってみた。

品質C-が6本に品質D+が2本になった。

うむ、先は長そうである。

1つレベルアップしてもこんなものか。

その後もMPが許す限り短再現を使ってみる。

結果、冒険者ギルドから預かった空瓶を全てポーションで満たした。

ちょっとだけ調子に乗りすぎたか。

品質C以外が結構な數になっている。

それでも納品を指定された數が60本に対して87本が用意できている。

回復丸もついでに12個が出來上がっていた。

では次だ。

今度は手作業で丁寧にポーションを作ってみよう。

さすがに品質Bはできなかったものの、傷塞草2本で品質B-のポーション4本を作は可能のようだ。

一応、この工程は保存しておく。

さて、し手が開いたな。

このままポーション作もいいが、ヴォルフ達を遊ばせ過ぎなのも良くない。

させないと、ね。

狩りのついでに西の方向に行って見ようか。

ミオの話によると村があるようだし、その位置だけでも確認しておこうか。

まだ夕刻までは間がある。

雨は小雨か。

今の召喚モンスターは狼のヴォルフと鷹のヘリックスの構だ。

を考えたら殘月との代を選択するののがいいだろう。

さっきまでちょっと調子に乗って錬金を使いすぎたのを早速後悔し始めていた。

安全を考慮して召喚モンスターの構はそのままにしておこう。

を優先させるために街道沿いをやや駆け足で進んだ。

ちょっと迂遠なじもする。

一瞬、補助スキルの【耐久走】を取得する事も考えたが、オレには殘月がいる。

こういった場合には臨時で足が速くなる手段のほうがいいよね。

フィジカルエンチャント・ウィンドを選択して実行。

この呪文のおかげで僅かな差だが確実に足が速くなってくれる。

エンチャント系統の呪文はいいな。役に立つのは戦闘時だけではない。

當然ながら街道とはいえ魔の襲來がある。

暴れ銀鶏(メス)は既に見ていたから問題なく狩れた。

はぐれ馬が問題だ。

なにしろ足が速い上にタフで、一定のダメージをけたら逃げてしまうのだ。

オレもヴォルフも途中まで戦ってダメージまでけたってのに損した気分になった。

ポーションも消費したので損な気分は倍増だ。

そして初見の魔がいた。

パラレルラクーン Lv.2

 討伐対象 アクティブ

縞模様の貍のようだ。

小さいし倒すのは楽か、と最初は思ってました。

ところがこいつ、師匠の妖狐にも似た能力持ちだった。

を使ってくるのだ。

一匹だけが相手だったので、オレとヴォルフとで同時に攻撃するから大きな問題はなかった。

そしてこの魔は火をるようだ。

急に頭上で火の玉が現れたのにはビックリしました。

が、これも対応は比較的簡単である。

どうやら足を止めてじっとしていないとこの能力は使えないようなのだ。

森の茂みに隠れて使われでもしない限り喰らうことはないだろう。

うん、まあ、そのパターンで一発喰らったんですが。

火の玉への対応であるが、接近してさっさと毆れば雲散霧消するのが分かった。

鷹のヘリックスが空から襲うのはちょっと危ないんでヴォルフとオレとで分擔して叩くことにする。

ここでもフィジカルエンチャント・ウィンドの効果が底上げとなっていた。

小さな魔を街道だけでなく森の中でも追いかける事になるのだ。

しでもスピードアップできるのは大きい。

【素材アイテム】縞貍の皮 原料 品質C- レア度1 重量1

パラレルラクーンの皮。皮厚は薄くてらかく保溫は高い。

剝ぎ取れたアイテムはこれだけだ。

ウサギほどには厚みがないし細長いから防にするのが難しそうだ。

これを見てると大昔に狐や貍を模倣したマフラーを皆が首に巻いていた時代を思い出す。

今考えるとあれって不気味だ。

そして目に付くのがプレイヤーの姿だ。

明らかに多い。

そしてそのパーティには必ず弓持ちがいる。

中には6人パーティで後衛3名が弓使いといった実に分かりやすい構のものもあった。

凄いな。

需要があるとはいえ人気ありすぎだろ。

暴れ銀鶏(メス)が狩り盡くされないか心配だ。

そういえば森の中には暴れ銀鶏(オス)もいるんだよな。

あれはまだ狩っていない。

何を剝ぎ取れるのかね。

これだけのプレイヤーが來ているのだし、狩っているパーティもあることだろう。

一応、狩りの果でレベルアップしたスキルがあった。

《只今の戦闘勝利で【杖】レベルがアップしました!》

結構使っているイメージがあったのだが、杖がようやくレベルアップした。

初期に取得していたスキルでLv.3に達していないのは風魔法だけか。

種族レベルに比べるとスキルの上昇が遅いような気がする。

街道を更に先へと進む。

その村落らしきものは柵で囲まれた小さなものに見えた。

でも近づいてみるとそこそこの規模があり、結構な賑わいを見せているようにじられた。

いや、プレイヤーが多いってのもあるのかもしれない。

村の周囲は畑と何かの果樹園になっていて、それらも柵によって區分けがされていた。

牧場らしき場所まである。

働いているのはNPCの皆さんを示す黃のマーカー持ちだが、稀にプレイヤーの緑のマーカーも見かけた。

農作業の手伝いかな?

周囲を眺める間にも街道を行きう馬車が通っていったりしている。

は木材であったり飼葉であったりだが、行商人らしき姿もあった。

その中にもプレイヤーがいるようだ。

ふむ。

いい雰囲気じゃないの。

村のり口はあっさりとしたもので見櫓の間がそのまま門にしてあるようだ。

板切れのような看板に楔を組み合わせたような文字で何かが刻んである。

目を凝らすと小さな仮想ウィンドウで『レギアス』と翻訳された。

間違いなくミオ達が言っていた村だな。

門を通るのも自由だ。

見張りにヴォルフやヘリックスを見咎められる事もなく中にれたりする。

そして中は明らかにプレイヤーの數が多い。

どうやら似たような事を考えて稼ぎにきているプレイヤーは相當多いようだ。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv4

職業 サモナー(召喚師)Lv3(↑1)

ボーナスポイント殘11

セットスキル

杖Lv3(↑1)打撃Lv2 蹴りLv2 関節技Lv2

回避Lv2 けLv2 召喚魔法Lv3

魔法Lv2 風魔法Lv2 土魔法Lv2 水魔法Lv2

錬金Lv3(↑1)薬師Lv2

連攜Lv3 鑑定Lv3 識別Lv3 耐寒Lv2 摑みLv2

Lv1 作Lv1 跳躍Lv1

裝備 初心者のロッド 野兎の當て+シリーズ 雪猿の腕カバー

布の靴 背負袋 アイテムボックス×2

所持アイテム 剝ぎ取りナイフ

召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv3

殘月 ホースLv2 お休み

ヘリックス ホークLv2

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