《サモナーさんが行く》17
村の中の一番大きな通りを端から端まで歩いて折り返して様子を見て回る。
レムトの町と違うのは木工を扱う店が多く、農作や家畜の扱いが盛んなことだ。
無論、町と村なのだから規模は違ってくる。
屋臺もそれなりにあった。
因みにミオの屋臺はないようだ。まだこの村に來ていないのかもしれない。
一応は冒険者が利用するような施設は一通り揃っているようである。
冒険者ギルドの窓口だけはさすがにない。
まあこんなものかな。
村の様子を概ね把握できたので師匠の家に戻るとするか。
戻る途中は出來るだけ森の中を通って狩りをしながら時間を潰すことに充てた。
移速度を上げるのにフィジカルエンチャント・ウィンドを常時効力があるように調整しておく。
鷹であるヘリックスは肩にあって周囲を警戒させた。
森の中で飛び回るのはちょっと危ないからな。
ヴォルフには獲を追い立てて貰う。
主に暴れ銀鶏(メス)が目標になった。
適當に狩るつもりでいないと夜の時間が迫ってくる。
あまり深追いはしなかったから、パッシブ狀態の魔はスルーした。
Advertisement
パッシブ狀態の貍にだけは奇襲をかけたけどな!
問題なのは夕刻が迫って群れになりつつある暴れ銀鶏(オス)だ。
暴れ銀鶏(メス)と併せて十數匹の群れも見かけるようになっていた。
こいつらは遭遇を回避すべきだろう。
偶然だが、プレイヤーが銀鶏の集団に囲まれて死に戻りした瞬間を目にしたが。
おっかないな、オスは。
メスとは比べにならないほどの暴れ者だった。
いや、名前に暴れ銀鶏ってある訳だから間違ってはいないのだが。
周囲が暗くなる。
これはいけない、帰路を急いだ。
見込み違いだったのは天候が曇りであることを失念していたからだった。
完全にオレのミス。
イビルアントが出現し始めていた。
何匹目かのイビルアントを倒した時點でヴォルフに回復丸を與えた。
ダメージは深刻とは言えないが、まだ何回かアリとは戦闘が起きそうな狀況と判斷したからだ。
まだ師匠の家まで距離がある。
最善の回復手段は講じておくべきだ。
鷹のヘリックスは幸運にも途中まで無傷で済んでいたが、蝙蝠の奇襲を迎撃した際に大きくHPバーを削られた。
Advertisement
こっちはポーションを與えて凌ぐ。
當然、オレも無傷では済まない。
アリは早めに全滅させておかないと例の蟻玉狀態になるのが目に見えている。
回復は後回し、先手で攻撃を加え続けて押し切る戦い方になってしまう訳だが。
そんな狀況でも剝ぎ取りは止められないこの貧乏人が憎い。
結局、師匠の家の前に辿り著いた時にはオレのHPバーが半分ほどにまで減っていた。
だが終わらない。
目の前に未見の魔が迫っていた。【識別】してみるが微妙に強そうではある。
ブラッディウッド Lv.3
魔 討伐対象 アクティブ
高さはオレと同じ程度、だと思う。
木のが絡み合って出來た人形みたいな魔だ。
どうする?
オレ達と師匠の家の門の間に立ち塞がる魔の頭上へと跳躍した。
いつでも門に走れる位置を確保しながら一撃を加えてみる。
ロッドからけた手ごたえは芳しくない。
どういう魔だ、こいつは。
手のように絡み合ったをばしてくるのを避ける。
きそのものは遅い。
もう一撃、ロッドで攻撃を當てて見る。
Advertisement
木と木がぶつかる音だけが響いたじがした。
ちょっとこれは効果的ではないようだ。
ヴォルフも噛み付き攻撃を繰り返すのだが、が絡みつこうとするのを避けながらになっている。
ヘリックスもどこをどう攻撃してよいのか悩む気配がする。
なんか時間がかかるだけの面倒そうな奴みたいだな。
手のようにばしたをまとめて抱え込むと引っ張った。
魔がコケそうになるように見えた。
ん?
きが急に悪くなったようだが。
MPもないしあの手を試してみるか。
ロッドを手放すと絡み合うを摑んで腰を落とす。
そのまま一本背負いだ。
本気で、投げた。
魔はまともに喰らって地面に叩きつけられる。
がいくらか散したようで、魔のHPバーも目に見えて減ったようである。
ロッドで叩くより大分マシだな。
いや、かなりマシだ。
投げにおける兇とは地面である。
実踐してみるか。
このブラッディウッドという奴は絡みついた獲からを通じてを吸い取る魔のようである。
オレの傷に対してをばそうとしてくるのだ。
嫌な相手だな。
でもこれは使える。導する意味で、だが。
魔がをばしてくるタイミングに合わせて投げを放つ。
だが今度は失敗した。何でだ。
そういえば【投げ技】は取得可能だったと思うが取得してなかったっけ。
早速取得して有効化する。
再度挑戦する。今度はうまくいくようになった、気がする。
それにしてもこの魔、戦う相手には丁度いいな。
一本背負いに良し。
落しに良し。
大外刈りに良し。
ついでにの四方投げもやってみたら決まったのに驚いた。
いや、この魔のきが単純だから出來たんだと思うのだが。
この魔はダメージが蓄積するに従ってその外観がバラバラになりそうになってくるようだ。
最後のほうでは魔のはスカスカであった。
ヴォルフもヘリックスも途中からは手出しせずにオレだけで投げの練習をしていたようなものだった。
いや、こういった稽古は久しぶりです。
稽古じゃないけどね!
魔の最後は絡み合ったが一気に散する形になった。
《只今の戦闘勝利で【召喚魔法】レベルがアップしました!》
おお、最後の最後で召喚魔法がレベルアップしたか。
これで新たな召喚モンスターが追加できる。
まあこれは明日に持ち越しだ。
バラバラになった魔の一番芯になるのであろう太いに剝ぎ取りナイフを突き立てた。
なんか奇妙なアイテムを手の中に殘して散していたが消えていく。
【素材アイテム】牛蒡 原料 品質C+ レア度1 重量0+
ブラッディウッドの芯。繊維質で固いが食用になる。
ゴ、ゴボウですか。
こんな魔にまで食材になりそうなアイテムが剝ぎ取れるとかどうなってる?
運営に料理好きなスタッフが混じっているとか?
ありそうで困る。
門に辿り著くと師匠のマギフクロウが出迎えてくれた。
し夕飯の時間には遅れたかもしれない。
作業場では師匠が待ち構えていた。
食事の用意も整っている。
「また奇妙な戦い方をしとったようじゃな」
「はあ」
見てましたか。
どうやら師匠は召喚モンスターを通じて々と見通しているようだ。
今のオレには出來ない蕓當だ。いずれオレにも出來るんでしょうかね?
実に便利そうです。
「さっさと食事を終わらせよう。ポーション作が進んでおらんのでな」
「はい」
食事を慌しく済ませると師匠のポーション作を手伝う。
とは言っても空き瓶にポーションのを玉杓子でれるだけなのだが。
これまでになくその量は多い。
こういっちゃなんですけど師匠、け取った空き瓶の分を全てポーション作するのがいかんのです。
仕事が出來る人間は早く仕事を終わらせるので、周囲より時間に余裕が出來ます。
それを見ている上司はより多くの仕事を割り振ってくるのが常です。
仕事を早く終えることが出來ない人間を教育するのが上司の仕事ではあるんですが、実態はそんなものです。
周囲が殘業する中、定時できっかり帰宅する図太い神経がないとそうなります。
そういうオレも持たされたポーションの空き瓶の分は概ね作しているんですが。
師匠の手伝いが済んだ後、さっき森の中で使ったポーションの空き瓶の分は作しておいた。
貧乏だよね。
こういった所なんかは人の事が言えない所以でもある。
師匠はポーションの確認はせずに《アイテム・ボックス》にれるのもメタルスキンに全て任せていた。
そして塔の地下へと篭ってしまう。
やっぱ何か様子がおかしい。
家の2階でヴォルフとヘリックスを帰還させる。
ああそうだ。
ログアウト前に4匹目となる召喚モンスターの候補を見ておきたい。
リストを呼び出してみると奇妙なことになっていた。
ウルフ
ホース
ホーク
フクロウ
ウッドパペット
バット
ウッドゴーレム
ビーストエイプ
鬼
赤狐
いつの間にか召喚できるモンスターの種類が増えてました。
これはどういった事態なんだろうか。
インフォで何かあった訳ではないんだが。
思い當たる節はないことはない。
今まで遭遇したモンスター達だ。
それがどういった由來のモンスターであるのかは関係なく【識別】した事があるモンスターの下位互換に見える。
例外なのは最初から召喚モンスターとして登録されていた狼のヴォルフだけだ。
ホース。はぐれ馬と遭遇している。但し倒してはいない。
ホーク。他のプレイヤーのドロップ品を奪っていた所を目撃していた。
フクロウ。師匠の召喚モンスターのマギフクロウだ。
ウッドパペット。恐らくはオートマトンやメタルスキンにシルバースキンといった師匠の人形達。
バット。これは森で遭遇したハンターバットだな。
ウッドゴーレム。この家の門番のストーンゴーレムだ。
ビーストエイプ、鬼、赤狐もそれぞれ今日見た師匠の召喚モンスターの下位互換だと考えていいだろう。
そういう仕組みなのか。
出來るだけ多くの場所を巡り、晝夜に渡って多くの魔に遭遇していく事で召喚できるモンスターの種類も増えるのか。
納得はできる。
だがその一方で怖い考えも思いついてしまう。
師匠のロック鳥だ。
あれに対応する下位互換の召喚モンスターっている、よね?
まさか、ホークがそうとかないよね?
でもそうでなければ辻褄が合わなくなる。
それにどんだけ育てたらヘリックスがあんな怪獣みたいなのになるというのか。
かわいいままでいてしいんですけど。
おっと。
4匹目に召喚するモンスターを決めておかないといけないんだった。
各モンスターの説明位は読んでおくか。
【ウッドゴーレム】召喚モンスター 戦闘位置:地上
木製のゴーレム。主な攻撃手段は手足による格闘。
きは鈍く細かな作業は不得手だが、タフで力が強く前衛での戦闘に向く。
疲れを知らない忠実な従僕。
【ビーストエイプ】召喚モンスター 戦闘位置:地上
猿獣。主な攻撃手段は手足による格闘。
格は人間並み。タフで力も強く軽でもあり前衛での戦闘に向く。
簡単な武であれば使いこなす事が可能。
【鬼】召喚モンスター 戦闘位置:地上
人型の魔。攻撃手段は武裝による。
格は人間よりもやや小さい。前衛も後衛もこなす用さがある。
人間が使う武はどれも使いこなす事が可能で夜目も利く。
【赤狐】召喚モンスター 戦闘位置:地上
狐。主な攻撃手段は噛み付きと屬の特殊能力。
格は小さいが、そのきは素早く、屬の特殊能力で周囲を支援する。
うーむ、新たに召喚できるのが1匹だけなのに候補がこうも増えてしまっては悩みが増すばかりだ。
當初の考え方に従えば、夜間行に対応するのがましい。
そうなるとフクロウか鬼だな。
今の所はダンジョンのような狹い場所で戦う機會がない。
フクロウでいいか。
師匠のマギフクロウのように先々では雷撃で支援してくれたらありがたいよな。
あれには憧れてしまう。
決めることを決めてしまったらスッキリした。
気持ちよくログアウトするとしよう。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv4
職業 サモナー(召喚師)Lv3
ボーナスポイント殘9
セットスキル
杖Lv3 打撃Lv2 蹴りLv2 関節技Lv2 投げ技Lv1(New!)
回避Lv2 けLv2 召喚魔法Lv4(↑1)
魔法Lv2 風魔法Lv2 土魔法Lv2 水魔法Lv2
錬金Lv3 薬師Lv2
連攜Lv3 鑑定Lv3 識別Lv3 耐寒Lv2 摑みLv2
馬Lv1 作Lv1 跳躍Lv1
裝備 初心者のロッド 野兎の當て+シリーズ 雪猿の腕カバー
布の靴 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剝ぎ取りナイフ
召喚モンスター
ヴォルフ ウルフLv3 お休み
殘月 ホースLv2
ヘリックス ホークLv2
異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンに入りたい! えっ、18歳未満は禁止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育成しようか
異世界から帰ってきた楢崎聡史と桜の雙子は、胸躍る冒険の日々を忘れられなくて、日本に発生したダンジョンに入場しようとする。だが〔18歳未満入場禁止〕という法律の前に、二人の希望は潰えてしまった。そこに救いの手を差し伸べたのは、魔法學院の學院長。二人の能力に気が付いて、即戦力としてダンジョンの攻略をさせようと、學院への編入を勧める。ダンジョンに入る権利を手に入れようと試験を受ける二人…… だが彼らの想像以上に、日本の魔法はレベルが低かった。異世界帰りの高いレベルと數多くのスキル、そして多種多様な魔法を生かして、學院生活を送りながらダンジョンを攻略する雙子の活躍に、次第に注目が集まっていく。 肩の力を抜いて読める內容です。感想等お寄せいただけると、とても嬉しいです!
8 193Duty
「このクラスはおかしい」 鮮明なスクールカーストが存在するクラスから、一人また一人と生徒が死んでいく。 他人に迷惑行為を犯した人物は『罪人』に選ばれ、そして奇怪な放送が『審判』の時を告げる。 クラスに巻き起こる『呪い』とは。 そして、呪いの元兇とはいったい『誰』なのか。 ※現在ほぼ毎日更新中。 ※この作品はフィクションです。多少グロテスクな表現があります。苦手な方はご注意ください。
8 180ランダムビジョンオンライン
初期設定が必ず一つ以上がランダムで決まるVRMMORPG「ランダムビジョンオンライン」の開発テストに參加した二ノ宮由斗は、最強キャラをつくるために転生を繰り返す。 まわりに馬鹿にされながらもやり続けた彼は、全種族百回の死亡を乗り越え、ついに種族「半神」を手に入れる。 あまりにあまったボーナスポイント6000ポイントを使い、最強キャラをキャラメイクする由斗。 彼の冒険は、テスト開始から現実世界で1ヶ月、ゲーム內部時間では一年たっている春に始まった。 注意!!この作品は、第七話まで設定をほぼあかしていません。 第七話までが長いプロローグのようなものなので、一気に読むことをおススメします。
8 70魔術で成績が決まる學園で魔法を使って學園最強
いじめの辛さに耐えてかねて自殺してしまった主人公カルド。そしたら神に君は自殺者10000人記念だからと転生させてもらった。そこは魔術で人生が決まる世界その中でどうやって生きていくのか
8 88永遠の抱擁が始まる
発掘された數千年前の男女の遺骨は抱き合った狀態だった。 互いが互いを求めるかのような態勢の二人はどうしてそのような狀態で亡くなっていたのだろうか。 動ける片方が冷たくなった相手に寄り添ったのか、別々のところで事切れた二人を誰かが一緒になれるよう埋葬したのか、それとも二人は同時に目を閉じたのか──。 遺骨は世界各地でもう3組も見つかっている。 遺骨のニュースをテーマにしつつ、レストランではあるカップルが食事を楽しんでいる。 彼女は夢見心地で食前酒を口にする。 「すっごい素敵だよね」 しかし彼はどこか冷めた様子だ。 「彼らは、愛し合ったわけではないかも知れない」 ぽつりぽつりと語りだす彼の空想話は妙にリアルで生々しい。 遺骨が発見されて間もないのに、どうして彼はそこまで詳細に太古の男女の話ができるのか。 三組の抱き合う亡骸はそれぞれに繋がりがあった。 これは短編集のような長編ストーリーである。
8 161俺の高校生活に平和な日常を
主人公・佐藤和彥はただのアニメオタクの普通の高校生。普通の高校生活をおくるところがある1人の少女と出會うことで和彥の平和な日常が壊されていく。暗殺者に吸血鬼に魔法少女etc… 果たして和彥に平和な日常が戻ってくるのだろうか?
8 84