《サモナーさんが行く》20

いつものように地下の作業場に顔を出す。

師匠は何やら難しい顔付きで考え込んでいたようだ。

その傍らにはいつものメタルスキンが控えている。

そして他にも人影がいた。

冒険者ギルドの長、ルグランさんだ。

でも何かがおかしい。

中がっているのだ。

それになんか半明のように見えるんですけど。

り輝く幽霊?

生霊か何か?

何にせよ現実離れした景だ。

どことなく神々しいような気もする。

「おお、帰ってきたようじゃな」

「うむ。早速じゃがキースよ。話がある」

二人がオレごときに何の用があるんだろうか。

なんか構えてしまうではないか。

「暫しの間じゃが急用が出來た。あちこちに出向かなきゃならん。そこでじゃ」

「お前さんの弟子りの件、ワシの方で預かることになった」

「は?」

聞いてない。

聞いてないよ。

「まあ暫くはこの耄碌爺の言う事を聞いておればいいじゃろ」

「耄碌はよせ」

「ま、冒険者ギルドの依頼を押し付けられるのは必至じゃが。気にらぬようであれば毆る位のことはしてええ」

「毆られて堪るか」

雰囲気が和らいでいくように見えて師匠の纏う空気は和らいではいない。

何か余程の事態なんだろうか。

「まあ見所はある。見極めは更に先になるが現時點では合格でいいじゃろ」

《稱號【老召喚師の弟子(仮)】を得ました!》

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妙なインフォが流れた。

稱號?

仮想ウィンドウの文字を凝視する。

が、何も起きない。

これは何なのか、簡単な説明でもいいからしいんですけど。

「ワシもここに戻らんという訳でもないじゃろ。だが長く留守にするのも確実じゃ」

「はい」

「その間、上の家と地下の塔の3階層まで自由に使ってよい。塔の管理も敷地の警備は気にせんでいいぞ」

あの門番達にメタルスキンですね。

オレの方が頼りないのは確実ですけど。

「食い扶持は自分で稼げとるようじゃし大丈夫じゃろ。メシは自分でどうにかせい」

あ、さすがにそこまで面倒は見てくれないみたいだ。

まあここからならレムトの町もレギアスの村も馬で移するならそう遠いってこともない。

面倒になったら【料理】スキルを取得するのも手ではあるんだが。

料理だけは鬼門だ。

自信がないなんてものではない。

オレはカレーを不味く作れるような男だぞ。

「では確かに預かろうかの。キースよ、明日はいつでも良いから冒険者ギルドに顔を出してくれ」

そう言うとギルド長の姿は消えた。

まあ実じゃなさそうだとは思ってたけどさ。

なんか凄い。

「今のはギルド長の魔法なんですか?」

「奴は魔法を得意とする魔法使いじゃ。今のはを使った分をここに跳ばしてきておったんじゃな」

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「なるほど」

魔法でそんなことも出來るのか。

なかなか便利そうだ。

「さて、食事としよう。終わったら早速だがワシは旅立つ事になる。後は頼むぞ」

師匠は食事の後、ロック鳥を召喚すると大空へと飛んでいってしまった。

周囲は既に夜になろうかという時間だ。

寂しい雰囲気はある。

しかしあの師匠はオレなど比べにならないほどの戦力である。

心配される筋合いもないだろう。

明日からは冒険者ギルドに通いって事か。

時間がとれるうちに狩りをしておく方がいいだろう。

夜の森に行こう。

今のオレのMPバーは全快ではない。

だがそれでも馬である殘月を帰還させて狼であるヴォルフを召喚する事は余裕で出來る。

余裕?

いえ、MPバーが半分を割り込んでしまいました。

強くはなってきているのも確実ではあるが、余裕なんてそうそうあるものでもなかった。

もう外は暗い。

ヴォルフと黒曜は夜の闇を苦にしないがオレは別だ。

魔法で照らしていないと夜の森は踏破できないのだ。

さて、狩るか。

夜の闇の中。オレの周囲だけを魔法のフラッシュ・ライトが照らしている。

ヴォルフも黒曜もオレから距離をとって周囲を探索していた。

森の中は晝間ほどではないが他のパーティもいる。

なるべく狩場が重ならないように森の中の奧深くに進んだ。

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主な獲は相変わらずイビルアントだがブラッディウッドも結構いる。

タフではあるがきが鈍いので投げの練習に丁度いい。

こいつと戦うのは正直楽しかった。

ドロップ品のゴボウはどうかと思うが。

そしてイビルアント。

あまり時間をかけて狩るのは好ましくない相手だから瞬殺できる方法を々と試してみた。

その結果、一番効率の良いと思われる方法を見出した。

首を、捻るのだ。

そして引き抜く。

他にも首を畳む様にして折る方法も試してみたが、これはあまりいい方法ではないという結論に達していた。

折ったつもりでも折れていない事が多かった。

無論、首を捻ってやるには著しなければいけない訳で、ダメージは蓄積する一方になる。

回復は主にポーションで、クーリングタイム制限に引っ掛かる場合はウィンド・ヒールを使った。

ライトはどうしても必要なのでMPは出來るだけ節約したい。

とはいえ夜の森だ。

油斷ならない。

イビルアントとやりあった直後にハンターバットの奇襲に遭遇した。

オレは気付いていなかった。

だが黒曜はオレに攻撃が加えられる寸前でコウモリに襲い掛かっていた。

飛び回る速度ではコウモリの方が早い。

でも迎撃ならばなんとかなるって事なのか。

黒曜により地面に落とされたコウモリはヴォルフによって仕留められていた。

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『黒曜』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》

おお、初日だけで黒曜がレベルアップしてしまったようだ。

黒曜のステータス値で既に上昇しているのは知力値だった。

任意ステータスアップは用値を指定した。

森の中では攻撃を確実に當ててしいからな。

召喚モンスター 黒曜 フクロウLv1→Lv2(↑1)

用値 12(↑1)

敏捷値 16

知力値 20(↑1)

筋力値 12

生命力 10

神力 15

スキル

撃 無音飛翔 遠視 夜目 奇襲 危険察知

スキルは増えなかったか。

まあ地道に長してくれたらいいだろう。

森の奧に進もうとするが傾斜が酷く急になっている場所が増えてきていた。

進みたくとも進めない。

そしてこういった場所の斜面にがいくつか発見していた。

何かな、と思っていたらイビルアントの巣の出り口でした。

何度か奇襲に近い形で襲われてしまった。

巣が近いだけに仲間を呼び寄せるとすぐに集ろうとしてくるのだ。

ちょっと面倒な場所だ。

さすがに長時間留まる訳にいかず、一旦戻る事にする。

戻りながらもイビルアントとブラッディウッドを狩って行く。

中々にいいペースだったと思う。

ヴォルフと黒曜は競うかのように獲を見付けてくれるのだ。

戦闘力も頼もしいのだが、魔を探し出して導してくれるのは非常に有難い。

オレもいくつかのスキルでレベルアップを果たしていた。

【関節技】に【投げ技】それに【摑み】だ。

うん。

そういう戦い方ばかりしてるんだからしょうがない。

夜の狩りもなんとか目処がついた。

まあ森の中だけなんだけど。

師匠の家に戻って整理して見たが今日の獲は多い。

中でも野生馬の皮が目を引く。

何に加工して貰おうか。

師匠から借りっ放しにしている馬裝にするのもいい。

加工するのが大変そうな気もする。

々と楽しく悩んでいた。

悩むのも楽しい。

だがもうかなり遅くまでログインしたままだ。

ログアウトして明日に備えることにした。

いつもの時間にログインしたらいきなりメッセージが來ていた。

《フレンド登録者からメッセージがあります》

レイナからだった。

マメだよな、彼って。

『今日は朝のうちはレギアスの村にいるよ!目印はミオの屋臺で!』

新しいロッドをけ取りにレギアスの村に行って、それからレムトの町に顔を出す。

方向が逆ではあるが仕方あるまい。

大まかな予定をたてて、殘月とヘリックスを召喚する。

早速レギアスの村へと向かう。

朝飯は村で何か食べようか。

ミオの屋臺はし苦労したが見付かった。

ただ別の屋臺と合同のようにして併設してあって、最初は気が付かなかったのだ。

今まで彼達のパーティでは見かけなかった別のプレイヤーもいる。

忙しそうに仕込みと調理を分擔しているらしい。

ミオには聲をかけたが「おっす!」で終わってしまった。

仕方が無いのでウサギを挾んだパンを注文して食べながらレイナを待った。

「おらー!來たぞー!」

いつもの調子でレイナが屋臺に來た。

サキも一緒である。

そして見慣れない男プレイヤーも二人いた。

「お?キースもお早うさん!早速見るかい?」

「ええ」

初見のプレイヤーに目禮だけしておいてロッドを見せてもらう。

【鑑定】してみるが間違いなくカヤのロッドだ。

手に持って重量を確かめる。

し広い場所に移して振り回してみた。

いいじだ。

なくとも今使っている初心者のロッドより斷然いい。

「いいですね」

「當然!」

素材費は意外に安かった。100ディネで済んだ。

安くていいものであるのなら不満などあるはずも無い。

「おっと、自己紹介しておいてね!」

レイナに促されて未見のプレイヤー達が次々と紹介された。

「ども。マーチャントでリックって言います」

「ボクはウッドワーカーの篠原です」

「私はミオと同じくコックで優香よ」

「こちらこそ。サモナーでキースって者です」

彼らの間にしだけ驚きの表が垣間見えた。

「あ、ごめんなさい。緑マーカー持ちの馬に鷹がいるんだし分かってはいるんだけど」

「いえいえ」

リックは大人しい印象が強いが格はいいようだ。佩剣しているし前衛だな。

篠原はやや小柄で背中に弓と矢筒を背負っている。ウッドワーカーは弓使いが多くなるものなんだろうかね。

優香は名前の通り日本人の外見を備えている。ミオとは対照的に靜かな雰囲気がある。

サキ、レイナ、ミオと併せて六人でパーティを組んでるってことなのだろう。

生産者は生産者で固まってく事にしているのか。

その後は暫くミオと優香は接客と調理で手一杯になった。

オレは他の四名と雑談で時間を潰していく。

殆どの話題は新しい狩場が東西南北で見付かった事だった。

ただそれぞれが途中で封印か何かがあって先に進めないそうだが。

何がイベントトリガーになっているのか、掲示板の話題はそこに集中しているようだ。

攻略目的だと大変そうだな。

新たに出來上がったミオの料理を頂きながら聞き役に徹する。

ポーション不足の話題も出た。

回復魔法持ちのパーティはかなり多くなってきているとか。

むしろ遠出をするようになった故にポーションの需要はむしろ高まっているとか。

殘念なお知らせが多い。

「冒険者ギルドの臨時窓口も今日から営業開始なのよね!買取りとポーション販売だけなんだけど!」

それはまあ仕方が無いかな。

ポーション補充のためにだけレムトに戻るとか、プレイヤーも大変なことになる。

「ああ、頭の防だけどもうちょっとかかるわよ?なめし加工にし時間をかけてるから」

「大丈夫です。待てます」

そういえば売れるアイテムがいくつかある。

「あと売れそうなアイテムがまたあるんですけど」

「見せて!」

レイナが食いついた。

次々と《アイテム・ボックス》から売れそうなものを出していく。

邪蟻の針、蝙蝠の牙といった矢の材料、銀鶏の翼、草原鷹の翼といった矢羽の材料。

野兎の皮に縞貍の皮に野生馬の皮。野兎のに雷山羊の、そして牛蒡。

邪蟻の甲もある。

かなり狩りまくったから結構な量になる。

「こ、これはまた大量に」

「いやーこんだけの大きい皮があると職人として腕が鳴るわー」

「それより見たことも無い食材が」

「待て待て、計算できないって」

急に慌しくなったな。

オレそっちのけになったよ。

ようやくサキがオレに話を振った。

「で、これってどうする?」

「皮は何か作ってしいですね。ブーツか馬の鞍とか」

「馬の皮でブーツはいけるけど鞍にするには足りないわね」

「じゃあブーツで」

「おっけ。ブーツだと逆に余るわね、あと野兎の皮で腰周りが作れるわ。縞貍の皮だと防は無理なんだけど」

「腰周りはお願いしたいですね。タヌキの方は売ります」

「他には?」

「食材はミオに売りますよ。他のも全部売っておきたいですね」

サキさんはブツブツと呟きながらオレの足のサイズを測り始めた。なんとなくくすぐったい。

が多い、か。

確かにオレはソロプレイではあるのだが、何しろ召喚モンスターのおかげで狩りの効率がいいようだ。

を見付け、追いかけ、狩る。

當然貢獻しているのは召喚モンスターなのであってオレではない。

おかげで借りの《アイテム・ボックス》もすぐに満杯になりそうになる。

実際、さっきまでギリギリだった。

売れるものは売り切って軽くしたい。

「ゴ、ゴボウか。それに謎だよ」

手が空いたのかミオがこっち側を覗き込んでいた。

食材の雷山羊の2つを手に取ると自分の屋臺の裏でなにやら始めたようだ。

いや、まだ売ってないんですけど。

鉄板の上で薄が何枚か焼かれていく。

立ち昇る香りはいい。

さほど時間を置かずに焼きあがった片を口にするとミオは顔を顰めた。

何か問題でも?

ミオが小さなパンに片を乗せてオレに差し出した。

食えって事か。

香りを楽しみながら頬張る。

味は、いいよな。

いいんだが、ちょっと歯ごたえがありすぎる。

ないようだ。

としての旨味はあるんだがこれは惜しい。

「ちょっとこれは工夫しなきゃだわー」

そういうとミオと優香がなにやら相談を始めていた。

NPCのお客さん、來てるぞ!

「リック。計算は?」

「大丈夫。終わってる。しかし凄いな」

「私らが狩った數に迫るものね」

リックからけ取った100ディネ銀貨は18枚になっていた。

としては申し分ない。

「生産者同士で商売もしながら移もしてるのか?」

「そう!私達のプレイヤーズギルドは生産者の括りで職種は問わない!」

「互いに都合がいい所でパーティを組んで行商と狩りをやってるようなものかな」

「屋臺も2名が店番、他の4名が狩りと生産活ってじですね」

「明後日にはフィーナ達も來る予定」

「へえ」

「今は先行して矢の生産で儲けてる途中!一応私達は矢の調達で大きく貢獻できたよね!」

レイナも自慢気だ。

「でもレイナ、狩りの方はもうし人手がしいよ」

「うん!他のプレイヤーからも買取れる矢と矢羽素材はどんどんけ付けるよ!」

「キースも売れる素材は持ってきてよね」

まあ頷くしかないよな。

互いに益がある話だ。

朝食を求めるNPCにプレイヤーも増えてきたようだ。

邪魔にならないようその場を辭去した。

ミオが何かを呟いているのが気になる。

ゴボウか、どう料理しようか。

そんな臺詞が耳に屆いていた。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv4

職業 サモナー(召喚師)Lv3

ボーナスポイント殘11

セットスキル

杖Lv3 打撃Lv2 蹴りLv2 関節技Lv3(↑1)投げ技Lv2(↑1)

回避Lv2 けLv2 召喚魔法Lv4

魔法Lv2 風魔法Lv3 土魔法Lv2 水魔法Lv2

錬金Lv3 薬師Lv2 ガラス工Lv1

連攜Lv4 鑑定Lv3 識別Lv3 耐寒Lv2 摑みLv3(↑1)

Lv2 作Lv2 跳躍Lv1 耐暑Lv1

裝備 カヤのロッド 野兎の當て+シリーズ 雪猿の腕カバー

布の靴 背負袋 アイテムボックス×2

所持アイテム 剝ぎ取りナイフ

稱號 老召喚師の弟子(仮)

召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv3 お休み

殘月 ホースLv2

ヘリックス ホークLv2

黒曜 フクロウLv2(↑1)お休み

用値 12(↑1)

敏捷値 16

知力値 20(↑1)

筋力値 12

生命力 10

神力 15

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