《サモナーさんが行く》23
なかなか酷い目に逢った。
さすがにもうワイルドドッグを相手にしたくない。
狩場を変える意味でレギアスの村方面へ、森に行こう。
西へと向かいながらホーンラビットもワイルドドッグも関係なく狩っていく。
これでワイルドドッグの上位種らしき魔と遭遇しなくなる筈だ。
あの強力な魔と戦わずに済むとなると楽でいいな。
そんな所を襲ってくるのがステップホークです。
奇襲してくる鷹なのだがヘリックスがどうにか迎撃してくれている。
本當に有難い。
森の中の街道も楽なものだ。
プレイヤーが多いせいか、魔にはさほど襲われることも無かった。
ゆるゆると移しながら適當に魔を狩りつつレギアスの村に到著する。
いい合に夕飯時になっている。
ミオ達の屋臺を探そう。
もはや見慣れたミオの屋臺だが、販の店も含めて3つの店が並んでいる。
並んでいる売りは微妙に違うがフィーナさんの屋臺だ。
「あらキース。お久しぶり」
「ども。もうこんばんは、ですね」
フィーナさんとミオ、それに優香とリックはいるがサキとレイナはいなかった。
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「レイナは狩り、サキは貴方の裝備製作でこの村の工房に行ってるわ」
「そうですか」
「うん!話もあるけどまずは味見!」
そう言うとミオが何やらお椀を差し出した。
またか。
彼の料理は味いのではあるが後に何があるか分からない。
【食料アイテム】雷山羊のの蒸し煮 満腹度+20% 品質B- レア度3 重量1
ブリッツのをスープ蒸しにした料理。
野菜スープの旨味が馴染んで赤味の旨味も増している。
確かに味い。
それに品質も高いし腹持ちも良さそうだ。
これには間違いなくパンを浸して食うべきだな。
「パンはあるかな?」
「毎度ありー!」
やっぱりパンは別口として食事代はとられるんですね。
まあいいんですけど。
だがもう一品が待機していた。
【食料アイテム】牛蒡のきんぴら 満腹度+10% 品質B- レア度2 重量0+
牛蒡のきんぴら。胡麻と出の風味もあって非常に香ばしい。
繊維質を多く摂りたい人にはオススメ。
完全に和食惣菜です。
「今日は売れそうなのはあるかな?」
「リックさん、すみません。今日は獲がなくて」
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取り出したのは野兎のだがミオに攫われていく。
リックは計算をさせられるだけだ。
無殘。
「なんとなく理由も分かるわ。レムト周辺で野犬狩りの一件、掲示板は見たわ」
「はあ」
「確かに盲點ではあったわね。ドロップ品が100%ないからって軽く見過ぎてたわ」
「そういう機會があっただけなんですが」
「でも影響は大きかった筈よ。魔石をしがるプレイヤーが殺到してたでしょ?」
「そうですね。狩り盡くす勢いに見えました」
「まあそうなるでしょうね」
そこでがあった。
ミュータントの件を話しそびれてしまった。
「おらー!來たぞー!」
「レイナちゃんおっす!」
彼はいつも明るいな。
後ろには苦笑している篠原がいる。
他にもう一人、初対面のプレイヤーがいた。
手に短めの槍を持っている。
「貴方もあいさつしといてね」
「あ、はい。ファブリックファーマーのレン=レンです」
「サモナーのキースです」
互いに一禮する。
それにしてもフィーナさんとこのプレイヤーズギルドは職人さん達の職業が見事にバラバラだな。
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ファブリックファーマー、つまり服飾職人か。
「サキはまだ?」
「サキ姉は工房借りて篭ってるから今日は無理なんじゃない?」
「じゃあ夜の狩りの編はサキ抜きで行くか」
「あたしは店が」
「ミオは昨日店番だったじゃないの!今日は狩りに行くわよ。店番は優香とリックでお願い」
「むう」
ミオは夜が苦手か。
きっとあれだな。
アリが集ってくるのがイヤなんだろう。
アレは生理的に々と來るものがある。
そしていつもの調子でミオとサキがやりあい始めた。
マシンガントークでついていけない。
ウィスパーでお願いしたい。
「そういえばフィーナさん、稱號って何です?」
ちょっと驚いた顔をしている。
なんか変な事を聞いたかな。
「聞いたことがないわ。βではなかったし」
「そうなんですか?」
互いに分からないのなら話すしかない。
今日、ワイルドドッグ160匹目に狩ったワイルドドッグ・ミュータントのことを話す。
そして『家畜の守護者』の稱號もだ。
念のためフィーナさんにはメッセージでリーダー、ボス、ミュータントの各種野犬の姿も送っておく。
「フィールドクリアのトリガーかも!」
「でもレイナ、レムト近郊でトリガーというのはちょっとおかしい。先があると思うわ」
「フィーナ、でもこれは突破口よ!」
「何がトリガーなのかは分からないけど稱號を得られるような仕掛けがあるのは朗報だわ」
「早速レムトに行く?」
「ちょっと準備不足ね。それに全てのプレイヤーに野犬狩りだけで次のトリガーを用意するとは思えないのよね」
そう言うと難しい顔でレイナを諭し始めた。
「むしろ今は個人で請け負っている依頼をこなす方がいいと思うの」
「拠は?」
「勘」
「むう」
レイナもミオもそれ以上反論しない。
フィーナの勘に何かあるのか?
「いずれにしても野犬狩りは混み合っていて選り好んで狩れるとは思えないわ。回避しておくのが良策」
「でもなんか悔しいな」
「生産職は最速攻略を目指してるんじゃないんだから」
まとめ役は大変だな。
責任者は決斷する事が仕事である。そしてその結果責任の全てを負う。
リーダーたる者、そうありたいです。
「まあそれはそれとして。どんだけ強い相手だった?」
「その前に掲示板。ミュータントは載ってないから書き込んでおくといいと思う」
あ、そうか。
ワイルドドッグのリーダー、ボスは書いたけどミュータントは書いてなかったな。
報掲示板を覗いて見る。
だが以前書き込んだスレッドは既に報が埋まってしまっていた。
次スレ、次々スレも同様である。
早すぎませんか?
最新のスレッドを探してどうにか書き込んでおく。
「これでいいですかね」
「うん!」
「確かにこの野犬は強そう。まあ後は攻略組に任せちゃっていいかもね」
「キースはこれからどうするの?」
「適當に夜の狩りに行きますけど」
「いや、そうじゃなくて。あなたなら攻略でもいけると思うんだけど」
ああ、そっちですか。
いや、あまり興味が無いと言うか。
明日以降も依頼があるだろうから予定は空けておきたい。
そういう意味で攻略はパスなんですけど。
「ちょっと考えてないですかね」
「勿無い!」
まあそこはそれ、ボチボチとやりますから。
夕飯を求めるNPCやプレイヤー達が増えてきているようだ。
商売を邪魔するのも悪いので早々に立ち去ることにした。
「じゃあサキさんに宜しく伝えといて下さい」
「防作の件、ハッパかけとくわ」
頼みます。
実は結構、期待してたりするのですよ。
周囲はもう暗くなってきていた。
殘月、ヘリックスを帰還させて代でヴォルフと黒曜を召喚した。
MPバーは半分を切ったがこれは仕方が無い。戦力の増強を考えたら大いにプラスだ。
狩場はどうするか。
師匠の家の方から見て北を目指して森の中を行く。
ブラッディウッドがいた辺りだ。
魔法のフラッシュ・ライトは勿論、土魔法のダウジングを併用していく。
晝間よりもむしろ夜の方が黒曜石を拾うのに都合がいい気がする。
まあ気分だけなんだが。
傷塞草も見つけては採集していく。
無論、イビルアントは狩って行く。
首を捩じ切るだけの簡単なお仕事です。
但し、失敗したらあっという間に集られかねない罠が潛んでいる。
油斷はならない。
それに今日はコウモリも多かった。
黒曜のおかげで難儀はしないんだが、やはり狙われていると思うと冷靜ではいられない。
だが楽しい時間もある。
ブラッディウッドだ。
こいつはタフではあるが戦い方を々と試すのに丁度いい相手で気にっている。
こないだは投げで々と試したが、今日は打撃と蹴りから始めてみた。
面白いように決まっていく。
でも攻撃の効果は薄い。
細いや枝が束になっているような魔なので衝撃はかなり吸収されてしまう。
投げで大きな衝撃を與えると結構バラバラになるんだが、打撃や蹴りではそうはいかない。
々と工夫して練習を重ねる。
練習?違った、狩りだったな。
試して見るといくつか分かることもある。
このブラッディウッドは外側から剝がす様に攻撃を加える方が結局は早く倒せるとか。
魔法は大して効かないであるとか。
ウィンド・カッターもウォーター・ニードルもそんなに効いてなかった。
やっぱりこういう相手だと火を付けて焼くのがいいんだろうか。
森で見かけたとあるプレイヤーがブラッディウッドを燃やしているのも見た。
あれなら派手に倒せる。
でもオレの好みは格闘戦だ。
ヴォルフと黒曜そっちのけで熱中してしまった。
おっと。
我に返ると移しながら狩りを続けた。
そこからはイビルアントとハンターバットを狩り続ける。
ヴォルフと黒曜は蟻相手に鬱憤を晴らすような戦い振りを見せていた。
すまぬ。
今まであまり活躍させてやれなくてすまぬ。
今日は遅くまで付き合ってやろう。
夜としてはこれまでにない戦果があった。
それだけに待ちんでいた結果も伴うものだ。
《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『ヴォルフ』がレベルアップしました!》
《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
既に上昇しているのは用値だった。一桁のステータス値がなくなったか。
任意ステータスアップは筋力値を指定する。
召喚モンスター ヴォルフ ウルフLv3→Lv4
用値 10(↑1)
敏捷値 25
知力値 12
筋力値 12(↑1)
生命力 16
神力 10
スキル
噛付き 疾駆 威嚇 聞耳 危険察知
夜半が過ぎても更に狩りを続けていくうちにおかしなことに気がついた。
出現する魔に変わりはない。
ただ、魔のレベルが高くなってきているようなのだ。
微妙に強い。
イビルアントに至ってはLv.5とかもいてビックリだ。
それなりに強くてその個を仕留めるのには苦労した。
仲間を、それもLv.3とかLv.4とかを呼んできやがるので面倒この上なかった。
深夜過ぎともなると危険度は更にアップするみたいだ。
移しながら狩りをしていたら師匠の家周辺に近くなってきていた。
あまり調子に乗るのも良くない。狩りを切り上げ家に帰ることにした。
家の2階のベッドは1日使わなかったのになつかしく思える。
ヴォルフと黒曜を帰還させてログアウトした。
現実に戻るのが億劫だった。
こっちに長居をしたからなんだが反省はしていない。
再び早めのログインである。
実質、ログアウトしてから4時間も間を空けていない。
廃人だな。
まあ間違ってはいない。
昨夜の戦果を整理して2つの《アイテム・ボックス》と背負い袋に詰めて行く。
ポーション瓶も全部補充済みだ。昨夜はヒール系呪文で使わなかったからな。
そろそろポーション不足の狀況が緩和されてもいいのに。
回復呪文が使えるプレイヤーはかなり増えてきている筈なのである。
オレですら使えているんだし。
普段通り、殘月とヘリックスを召喚してレムトへと向かう。
森の領域と草原の領域を示す見張り櫓を橫目に草原に抜けていったら早速いた。
いくつかのプレイヤー達のパーティが狩りを続けている。
何やら様子がおかしい。
まさかとは思うが夜通し狩りをしていたとか?
まさか。
まさかね。
襲ってくるホーンラビットとワイルドドッグを蹴散らし、時々は黒曜石を拾いながらレムトに向かう。
朝日が昇る景もいいが馬上でじる風も気持ち良かった。
そして襲ってきたホーンラビットを狩った所でインフォが流れてきた。
《只今の戦闘勝利で種族レベルがアップしました!任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》
目の前の仮想ウィンドウにステータス畫面が現れる。
前々から決めていた通り、ステータス値は知力値を上げることにした。
基礎ステータス
用値 15
敏捷値 15
知力値 19(↑1)
筋力値 15
生命力 15
神力 19
うん。
しい。実にいいな。
數字の並びにしさをじる。
次とその次とで知力値と神力を上げて20にしていこう。
《ボーナスポイントに2ポイント加算されます。合計で20ポイントになりました》
ボーナスポイントもかなり溜まってきた。
こうも溜まってくると何かスキルを取得したくなる。
何か武方面でスキルを取得しようか。
魔法スキルは複數あるからパスしておこう。
こういうのは悩んでいるうちが楽しい。
まあ何か困る事が起きたらスキルをとってしまうというのもいいだろう。
今までもそうしてきたのだし今更だな。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv5(↑1)
職業 サモナー(召喚師)Lv3
ボーナスポイント殘20
セットスキル
杖Lv3 打撃Lv2 蹴りLv2 関節技Lv3 投げ技Lv2
回避Lv2 けLv2 召喚魔法Lv4
魔法Lv2 風魔法Lv3 土魔法Lv2 水魔法Lv3
錬金Lv3 薬師Lv2 ガラス工Lv2
連攜Lv4 鑑定Lv4 識別Lv4 耐寒Lv2 摑みLv3
馬Lv3 作Lv3 跳躍Lv1 耐暑Lv2
裝備 カヤのロッド 野兎の當て+シリーズ 雪猿の腕カバー
布の靴 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剝ぎ取りナイフ
稱號 老召喚師の弟子(仮)、家畜の守護者
ステータス
用値 15
敏捷値 15
知力値 19(↑1)
筋力値 15
生命力 15
神力 19
召喚モンスター
ヴォルフ ウルフLv4(↑1)
用値 10(↑1)
敏捷値 25
知力値 12
筋力値 12(↑1)
生命力 16
神力 10
スキル
噛付き 疾駆 威嚇 聞耳 危険察知
殘月 ホースLv3
ヘリックス ホークLv2
黒曜 フクロウLv2
【書籍化】天才錬金術師は気ままに旅する~世界最高の元宮廷錬金術師はポーション技術の衰退した未來に目覚め、無自覚に人助けをしていたら、いつの間にか聖女さま扱いされていた件
※書籍化が決まりました! ありがとうございます! 宮廷錬金術師として働く少女セイ・ファート。 彼女は最年少で宮廷入りした期待の新人。 世界最高の錬金術師を師匠に持ち、若くして最高峰の技術と知識を持った彼女の將來は、明るいはずだった。 しかし5年経った現在、彼女は激務に追われ、上司からいびられ、殘業の日々を送っていた。 そんなある日、王都をモンスターの群れが襲う。 セイは自分の隠し工房に逃げ込むが、なかなかモンスターは去って行かない。 食糧も盡きようとしていたので、セイは薬で仮死狀態となる。 そして次に目覚めると、セイは500年後の未來に転生していた。王都はすでに滅んでおり、自分を知るものは誰もいない狀態。 「これでもう殘業とはおさらばよ! あたしは自由に旅をする!」 自由を手に入れたセイはのんびりと、未來の世界を観光することになる。 だが彼女は知らない。この世界ではポーション技術が衰退していることを。自分の作る下級ポーションですら、超希少であることを。 セイは旅をしていくうちに、【聖女様】として噂になっていくのだが、彼女は全く気づかないのだった。
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