《サモナーさんが行く》24

早朝の屋臺で朝食を済ませてから冒険者ギルドに行く。

ギルド長は不在で、いつもよく見る中年男職員さんが待ち構えていた。

「申し訳ないです。拡張工事の現場に昨日の夜から詰めていまして」

「何か問題でも?」

「工事が遅延しているのでその督促なんです。町長も巻き込んで折衝の最中だと思います」

なんか偉い人ともなると大変なんだな。

打ち合わせが多いし。

時として打ち合わせの為の打ち合わせもあったりするから困る。

「では今日の依頼は?」

「昨日と一緒です」

ポーション瓶作か。

まあ否はないですけど。

《ギルド指名依頼がりました。依頼をけますか?》

「もちろんけます」

《ギルド指名依頼をけました!就業後に工房側から伝票をけ取ってギルド窓口に提出して下さい》

昨日もやっている作業の続きだ。

今日の目標は昨日よりも良い品質のものをより多く作すること。

できれば全て品質C-以上にしたい。

目標は達可能な範囲でありながらも困難でハードルが高いほど燃える。

「おお!また來たのか、助かるよ!」

「今日も宜しくお願いします」

ニルスさんはいつ來ても工房にいる。

昨日もそうだったが、他の職人さんに比べても休憩時間は短い。

休憩時間が他の職人さんとの実質的な打ち合わせやら指導になっているのだ。

中間管理職、だな。

早速だが作業にる。

フィジカルエンチャント・アクアで用値に上乗せする。

これに加えてエアカレント・コントロールでガラス種に吹き込む空気の流れを微調整する。

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昨日と同じ手順だ。

最初の3つは品質Cで揃った。

そしてその次は品質C+が2つに品質Cが1つ。

うん、昨日の勘が思い出されてきたようだ。

し夢中になって作業を続けていった。

一回目の休憩を挾んで作業を進めていく。

うん、今日は調子がいい。

二回目の休憩を終えて工房にるとフェイも就業になるようだ。

昨日見かけた新人であろうプレイヤーもいる。

「やあ、おはよう。もう休憩帰りって仕事開始が早かったのか?」

「ああ、おはよう。今ちょうど2回目の休憩が終わった所だな」

「早いって」

「晝飯の時間でいい合に區切れるからね」

「そういう見方もできるか」

新人君も一禮してくるので目禮で返す。

「グラスワーカーの剣です!」

「サモナーのキースです。宜しく」

剣君は元気だな。外見も若々しくて好が持てる。

でも雑談している余裕はない。

ニルスさんの目もあるので名乗っただけで各々が作業にる。

三人で並んで瓶作である。

相手は本業とはいえ新人だ。作速度では負けても品質では負けんぞ。

休憩の時間になって結果を確認したら品質でもオレに迫る出來だった。

剣の作した瓶の品質はC-からCといった所で數量はオレを僅かに上回った。

むう。

やるではないか。

「あれから掲示板は見た?凄い勢いだったし影響が出たのもすぐだったな」

「野犬か」

「ああ。多分だけど野犬が凄い勢いで減ってるみたいで昨日だけでボスまで行ってるパーティはまだないみたいだな」

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「群がりすぎだと思うがなあ」

「だな。そこが最先端で狩ることの最大の魅力だよな」

主にフェイとオレとで雑談に興じる。

剣君は何かを聞きたそうな顔をしているけどなんだろう。

「お二人に相談なんですけど」

「ん?」

「なにかな?」

「実はまだ魔法スキルとってないんですけど。グラスワーカーならどれが一番いいんでしょうか?」

オレに聞かれても困るんだけどな!

とりあえず彼の悩みを一通り聞いてみる。

魔法スキルは取りすぎると長が遅くなるから絞るべきと聞いた。

で、今日のフェイとオレの作業を見ていて悩みが深くなってしまったらしい。

フェイは火魔法しか魔法スキルを取得していない。

彼は最近火魔法がLv.3となり、レジスト・ファイアの呪文と補助スキルの耐暑で暑さを凌いでいる。

それにより作業により集中できている訳だ。

彼の作する瓶も見てみたが、品質Cでありながらオレよりも遙かに短時間で瓶作ができている。

本業はやはり違うな。

オレの場合は全く別の観點から別の呪文を用いて品質向上を図っている。

フィジカルエンチャント・アクアで用値を強化、エアカレント・コントロールで作業度を補っているのだ。

おかげで本業でもないのに品質高めの瓶作ができていたりする。

剣はオレとフェイの間で作業していたから、両脇で呪文を駆使して作業する所を目の當たりにしていたのだろう。

それで悩みが深くなってしまったのだとか。

「確かにレジスト・ファイアあると楽だよ。でもキースのやり方もいいと思うけどね」

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「そんなに効果あるのか?」

「まあね。そうだ、お互いに呪文をかけて作業してみようか」

「いいな。剣君も加えて試してみるか」

「あの、いいんですか?」

「私も火魔法には興味あるから」

「こっちもキースの使ってる呪文の効果は知りたいね。品質アップがどこまで出來るか興味があるし」

こうして検証が始まった。

こういうのは大好きです。

大好です。

最初はレジスト・ファイアからだ。

プレイヤー間で強化呪文や回復呪文を掛け合う場合、抵抗しなければほぼ100%効果がある。

當然抵抗はしない。

さて、レジスト・ファイアの効果時間は約10分。

レジスト・ウィンドやレジスト・アクアも呪文の効果を調べたたが効果時間は同じであった。

そしてあの灼熱の作業現場でどれほどの効果があるのか?

絶大でした。

オレも耐暑を持っていて、その効果もあるのだろうけど実に楽なのだ。

意識がハッキリとした狀態で作業が出來た。

品質C-から品質Cが簡単に出來てしまう。

これはいいな。

作業途中で効果が途切れた時が困るけどな!

ここの作業は30分ほど連続で行われるので更に2回、フェイに追加して貰った。

確かに楽である。

これなら間に休憩なしで作業しても良さそうだ。

「大こんなじだな。どうだ?剣」

「楽でいいです。品質もし良い方向で作れましたし」

オレも同だ。

いかんな。

火魔法、取得しちゃおうかな。

ボーナスポイントには余裕がある。

どうしよう。

どうしようか。

休憩が終わった後はオレの番だ。

フィジカルエンチャント・アクアとエアカレント・コントロールの組み合わせになる。

こっちは効果時間が違うから面倒である。

フィジカルエンチャント・アクアは約15分、エアカレント・コントロールは約10分だ。

最後の10分はフェイがレジスト・ファイアも重ね掛けしてくれた。

これが一番楽でいい。

オレでも安定して品質C+が作れていた。

いいな。

レジスト・ファイアか。

オレも使えるようにしておきたい。

気がついたら火魔法を取得していた。

今、オレは何をした?

ああ、何て事をしてしまったんだ。

さっき剣君も言っていたよね?魔法スキルは取得し過ぎると長が遅くなるって。

オレってば本當に考えなしだな。

気がついたら闇魔法も取得してました。

毒を食らわば皿まで。

どうせ取り返しがつかない、と思ったら取得していた。

もうとことん行ってみよう。

ボーナスポイントは火魔法が2、闇魔法が3で合計5である。

被害は最小限で済んだと思いたい。

再び休憩時間になって今の作業について確認をした。

フェイがゆっくりと丁寧に作した瓶で品質Bが出たようだ。

凄いな。

オレの場合は品質C+止まりである。

「どうだ剣、覚はこんなじだ」

「逆に困っちゃいました。どれも使ってみたいです。それに何か変でした」

「変?」

「今の瓶作で【作】が取得可能になりました」

「へえ、ラッキーだったじゃないか。持っているけどあれはいいぞ」

フェイも【作】持ちなのか。

手先の用さが求められる生産職には當然あったほうがいいよね。

「早速取得して有効化しました」

「だけどボーナスポイントは大丈夫か?」

「魔法スキルを取得する分には問題ないです」

「そうか。キースはどう思う?」

「そうだな。耐暑があるなら火以外をとるのも手だけど瓶作の手ごたえを考えると火魔法がいいかな」

「そうか?」

「うん、風魔法と水魔法のどちらかとなると効果は薄いと思う。もっと先を考えるなら火でいいと思うよ」

「じゃあ剣、どうする?」

剣君も困った顔だが決心するのは早かった。

「火魔法にします」

「そうか。しかしさっきの風魔法と水魔法の組み合わせはかなりいいじだった」

そう言うとフェイはオレに語りかける。

「こっちも狩り仲間の意見も聞いた上で風か水を取りたいね」

「そんなにか?」

「まあね。品質Bは魅力だよ。長速度の上昇も見込めるから無視できない」

そこで休憩が終わって再び三人並んで瓶作である。

今度は最初から3種の呪文を重ね掛けだ。

凄くいいじで作業が進む。

最後の作業分が終わった所でインフォが飛び込んできた。

《これまでの行経験で【ガラス工】レベルがアップしました!》

《これまでの行経験で【耐暑】レベルがアップしました!》

《フレンド登録者からメッセージがあります》

最後のインフォ、被っているよね?

何かと思えばメッセージはサキからだった。

の防か?

『頭部の防は出來上がりました。現在ブーツと腰周りを作中。待ち合わせはミオの屋臺で』

出來たのか。

添付してあるスクショを見るとミオが兜を被ってやがる。

何をしてる何を!

【鑑定】結果のハードコピーで能を見てみる。

【防アイテム:革兜】雪猿の革兜 品質C+ レア度3

Def+5 重量2 耐久値120

雪猿の皮を加工した皮革製の兜。

革部分と重ねて防力を向上させてある。

うん、なかなかいいじに出來上がっているみたいだ。

後でメッセージに返信を出しておこう。

「おつかれさん!キースは今日はここまでだ。メシも食っていけよ!」

「はい」

昨日よりはかなり楽ではあるが汗だくなのは変わりない。

水をガブ飲みし終えるとニルスさんからガラス塊をけ取った。

昨日のとは違って黃一のものだ。

「じゃあ私はここで」

「ああ、またな!」

フェイと剣に挨拶を殘して工房の待合室で晝飯を貰う。

今日の達は高い。

意気揚々であった。

いい気分のまま晝飯を平らげると冒険者ギルドに向かった。

冒険者ギルドに顔を出すといつもの中年男の職員さんに話しかけた。

まだギルド長は戻っていないのだとか。

めていそうな雰囲気がする。

この中年男の職員さん、スルー耐が高そうな方なのだが妙に張している。

ニルスさんに貰ったガラス塊を渡すと換で100ディネ銀貨2枚に10ディネ銅貨3枚をけ取った。

うん、ちょっとだけ報酬額が上がってきているな。

《ギルド指名依頼をクリアしました!》

《ボーナスポイントに2點が加點され、ボーナスポイントは合計17點になりました!》

2點か。

確実に評価が上がってきているものと思う。

僅かな一歩だが確かな進歩だ。

さて、午後からどうする?

決まっている、狩りをしよう。

だがレムト周辺はプレイヤーがやたら多くて狩場に向かない事は明白だ。

西の森で狩りをするのもいいが新たな展開もしいな。

東には港町があって海がめる。

北は山地で高山があり臨時のキャンプがある。

南は荒地で石切り場があるとどこかで聞いた事がある。

拠點になりそうな場所は一通りチェックしとこうか。

まずは港町の位置と賑わいぶりを見ておこう。

レムト近郊の草原地帯とはやや趣の異なる風景が広がりつつあった。

街道もレギアス方面と比べたら幅が広いし人通りも多い。

整備狀況もそこそこ整っているように見える。

街道は途中から川沿いに進むようになり、そのまま進んでいけば河口にある港町に到達するようだ。

レムトよりも農地が広く魔の影もない。

街道そのものはそのうちに川堤の側に沿って進むようになる。

そこから見える畑も放牧地も良く整備されているようだ。

この辺りは治安がいいようだ。

がいない。

主な狩場は海岸だと聞いたが川にはいないのかね?

たまに堤の上に登って川の様子も眺めてみる。

川幅は広く地も見えた。

肩にいるヘリックスの眼は何かがいるのを捉えているようだ。

生い茂る草の背が高く何が潛んでいるのか分からないのだが、確かに何かいるようだ。

堤を越えて來るような魔ではないのか?

こっちから狩りに行くとなると川の中か。

足場が確保できそうにないし川での狩りはパスだな。

他にプレイヤーもいないようだし。

港町に到著した。

河口を挾んで2つの町が並んでいる形になっている。

門に掲げてある町の名前が仮想ウィンドウに翻訳されて表示された。

町の名はレジア。

別の標識によると川向こうの町はソルトロックという名前らしい。

町の規模そのものはレムトよりも大きいようだ。

ただ町の防備はレムトに比べてしまうと明らかに溫い。

の襲來がないのだろうか。

一応、港町なのだから海は見ておきたい。

街中をスルーして港を目指す。

さすが港町、の匂いが濃い。

船著場も大きく立派なもので、周囲の倉庫らしき建も數が多い。

漁船らしき小船は數艘しかいないが、この時間では漁に出ているのだと思われる。

そこから海岸方面に向かってみる。

すぐに砂浜があったのだが、町の領域とを區切る門の周囲は防柵が三重になっていて守備兵もいた。

砂浜にはプレイヤーらしき人影も多い。

海の方にもプレイヤーが狩りをしている様子なのには驚いた。

結構な遠淺の海岸のようだ。

そして海では宙に浮いているようにも見える魚が、砂浜では人の半分ほどもあろうかという蟲が狩られている。

結構、人が多いな。

しだけ砂浜を殘月で走ってみようとしたが、腳が沈んでしまい思ったように速度が出ない。

淺瀬は最初からる気がしなかった。

まあ今日は様子見って事にしておこう。

狩りは後日だな。

一応、魔がどんな奴なのか【識別】だけはしておく。

砂船蟲 Lv.2

 討伐対象 アクティブ

フライングフィッシュ Lv.2

 討伐対象 アクティブ

フナムシか。

嫌な予しかしない。

釣りに行ったら大抵は遭遇する定番の相手ではあるが、魔サイズともなると気持ち悪さは倍増どころではない。

現実のフナムシは逃げるだけで問題はないが、あのサイズで迫ってこられるとちょっと引く。

と割り切って戦う分には問題なさそうなんだが。

來た道を戻り、川向こうの町であるソルトロックにも行ってみる。

結構幅が広い川なのだが、無料の渡し舟があったのだ。

ついでだし見て回る。

レジアの町に比べたら港町としての雰囲気は薄く、レムトの町に近い雰囲気の町であった。

ついでだが冒険者ギルドの出張所みたいな所まである。

屋臺や料理店もこっちのほうが多いようだ。

こちらの町の方も郊外に砂浜があってその向こうには岬がびているのが見えていた。

小さく燈臺らしきものも見える。

そして砂浜にはフナムシ。

先を急ごうか。

このソルトロックからは北西方面への街道があった。

レムトの北方面に行くにはちょうどいいな。

古ぼけた標識によるとドワーフの集落グリンディールとある。

そんな所もあるのか。

それはさておき街道があるのは有難い。

殘月を駆り先を急ぐ事にした。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv5

職業 サモナー(召喚師)Lv3

ボーナスポイント殘17

セットスキル

杖Lv3 打撃Lv2 蹴りLv2 関節技Lv3 投げ技Lv2

回避Lv2 けLv2 召喚魔法Lv4

魔法Lv2 風魔法Lv3 土魔法Lv2 水魔法Lv3

火魔法Lv1(New!)闇魔法Lv1(New!)

錬金Lv3 薬師Lv2 ガラス工Lv3(↑1)

連攜Lv4 鑑定Lv4 識別Lv4 耐寒Lv2 摑みLv3

Lv3 作Lv3 跳躍Lv1 耐暑Lv3(↑1)

裝備 カヤのロッド 野兎の當て+シリーズ 雪猿の腕カバー

布の靴 背負袋 アイテムボックス×2

所持アイテム 剝ぎ取りナイフ

稱號 老召喚師の弟子(仮)、家畜の守護者

召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv4 お休み

殘月 ホースLv3

ヘリックス ホークLv2

黒曜 フクロウLv2 お休み

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