《サモナーさんが行く》33

魔方陣が消えた。

そこに佇んでいたのは黒い影だ。

こいつが相手か。

まるで人形のような奴だな。

【識別】を効かせてみよう。

ドッペルゲンガー Lv.???

イベントモンスター ???

えっと。

ドッペルゲンガー?

そいつは見る見るうちにその姿を変貌させていった。

オレの姿へと。

こうして見るとオレの容姿って普通なんだな、とまるで関係ないことを思ってました。

HPバーとMPバーは現在のオレと同じような長さになっている。

どうやらこういった所も公平のようだ。

ロッドを腰溜めにして構える。

も同じくロッドを持っていてオレと同じ構えになる。

姿形を真似るだけか?

大昔にやったテーブルトークではスキルも真似ていた事を思い出した。

こいつもそうなんだろうか。

それはそれとして、いつ始めたらいいんだろうか?

『メディテート!』

いつの間にか始まってました。

この魔、杖を掲げて武技を使ってやがる。

つかメディテートって杖の武技だよな?

そういえばオレは今まで使ってもいなかったし効果も確認してなかった。

々と抜けてるな。

それ所ではない。戦闘は開始されている。

メンタルエンチャント・ライトを選択して実行しながらダッシュして距離を詰めて行く。

『ブレス!』

またか。

またオレが使っていない杖の武技だ。

「メンタルエンチャント・ライト!」

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魔法防を一旦固めたのは、オレには遠距離攻撃手段がそれしかないからだ。

こいつがオレ同様のスキルを備えているのであれば呪文攻撃を仕掛けてくる、との予測があったんだが。

こちらが想定していた呪文が飛んでこなかった。

なんかやり難いな。

『メンタルエンチャント・ダーク!』

の方は魔法攻撃力を向上させてきた。

となればその利を生かそうといてくるだろう。

次の呪文を唱えさせない。

方針が決まれば迷いもなくなってくれる。

「フィジカルエンチャント・アース!」

既に選択して実行してあった呪文を発する。

これで理攻撃に対しても防力が向上できた。

こっちの狙いは接近戦だ。

次の呪文を選択して実行しておきながらロッドで足を払いに行く。

バックステップで避ける魔相手に追撃を仕掛ける。

ロッドを手放して一歩を大きく踏み出してタックルに行く。

右足の太ももを左手に抱えて右肩で腹を押す。

が抵抗するように上から覆い被さる様に重を掛けてきた。

そのままオレの首を締めようとしてきやがる。

【関節技】があるのなら自然な対応だ。

そして魔の口から紡がれている呪文詠唱が耳に煩い。

オレの右手はオーバーハンドで大きく弧を描いてその拳を振りぬいた。

確かなが拳に殘っている。

そして魔の呪文詠唱の聲が途切れていた。

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「フィジカルエンチャント・ファイア!」

接近戦となれば攻撃力を上げるのも必要だろう。

これで多は有利になったか?

は手に持ったロッドで構えて突きを放ってくる。

首を捻る様にして回避。

すかされたロッドを持つ手を摑むとそのまま引っ張ってやる。

そして肘の位置を支點にして関節を極める。

は魔でロッドを手放し、極められそうになっている右肘の側を左手で押して抵抗してきた。

お、け方も知っているのか?

でもそのけ方はオレも知っている。

左手が邪魔で足元が見えないのがそのけ方の欠點だ。

腹目掛けて右膝蹴りを飛ばしてやる。

直撃。

がくの字に折れ、頭の位置が下がった所に右肘を叩き込んだ。

これも直撃。

左拳を固めてフックを放つ。

顎に直撃。

姿勢を低くして、重心をより低く移させながら右正拳突き。

顔の中心あたり、恐らくは鼻の下に直撃。

さすがに魔勢を崩して距離をとった。

うむ。

失敗したかな?

接近戦を打撃メインで攻勢に出たし功もしていたのだが、最後の正拳突きは余計だったか。

いっそ寢技に持ち込んだ方が良かったかもしれない。

距離をとられちゃったじゃないの。

これはいかん。

迷ってる暇はない、呪文を選択して実行しておく。

し遅れて呪文詠唱を始めやがった。

できれば詠唱をやめさせておきたい。

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突進して距離を詰める。

後ろへとステップして距離をとろうとする魔

間に合うか?

「レジスト・アクア!」

『ウォーター・ニードル!』

対抗呪文は間に合ったが呪文そのものはまともに喰らってしまった。

ウィンド・カッターじゃなくて良かった。

水屬の攻撃魔法に水屬の対抗魔法の激突となった。

ダメージは減らせた筈だが、それでもHPバーが結構削られた気がする。

更に呪文を選択して実行する。

MPバーはもう3割とない。

ちょこまかと逃げて距離をとろうとする魔だが遂に追いついた。

足払いを仕掛ける。

は楽々と避けると、こちらが見せた隙をつくように毆りかかってきた。

ヘッドスリップで魔の右拳を避けて再び肘を狙う。

左腕で外側から側へと肘を抑え付けて逆関節を極めに行った。

だが魔は極まる前に拳を引いてオレにタックルを仕掛けてくる。

どうやら好機、と見たようだ。

だがこれはオレにとっても好機だ。

差法。

右膝を蹴り上げて右肘も同時に叩き込む。

互いの威力は魔を挾んで逃げ場を失い、容赦なく魔に浸した筈だ。

きが急に鈍くなる。

大きな隙を生んだ魔の背後に回り込むと腕を首元に回して締め上げた。

チョークスリーパー。

要するに絞めで頚脈を圧迫する技なのだが、この場合は気管を潰すよう位置をズラしている。

こいつは魔なのだ。

本當に頚脈を攻めてHPバーを削れるか分かったものではない。

気管を潰す位置であればHPバーが減っていく事を確認すると、本格的に締め上げる。

に飛びつくと両足でロックした。

そのまま地面に転がっていく。

そして後は締め上げるだけだ。

腕はロックしたまま、固定することだけに集中する。

背筋を使って締め上げていく。

のHPバーが見る見るうちに減っていった。

「アクア・ヒール!」

HPを一旦回復させる。

見た目でのHPバーの殘量がようやく逆転していた。

無理をせずにじっくりと攻め続けよう。形勢はもう決している。

なんとか逃れようと魔も抵抗するのだが、そう簡単に逃げられる筈もない。

正直、スノーエイプに比べたら膂力は低い。

怖いのは魔法なのだが、締め上げられた狀態で呪文詠唱も出來なくなっているようだ。

対してこっちはいつでも呪文が使えそうである。

MP殘量に余裕がないから使わないだけだ。

結局、スノーエイプとは比べにならない程、あっけなく魔は沈んだ。

ちょっと落ち込んだ事もある。

オレの分みたいな相手だった。

スノーエイプと比べたらフィジカル弱すぎ!

それはオレについても言える事なのだと思い知らされていた。

気が付くと魔の死と消えてしまっている。

周囲の風景も変わらない。

『汝にふさわしき道は開かれた!』

『汝には祝福を』

『そして我らは再び汝を待つ事であろう』

そんな言葉を殘すと風景が一転した。

夜の草原に戻ったのだ。

あの人魂の姿はどこにもない。

ヴォルフはオレの傍に佇んでいた。

ジーンもヴォルフの背中に収まっていた。

さっきまでの戦闘がまるでなかったかのようだ。

《只今の戦闘勝利で【火魔法】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【土魔法】がレベルアップしました!》

《【土魔法】呪文のレジスト・アースを取得しました!》

《【土魔法】呪文のアース・ヒールを取得しました!》

《【土魔法】呪文のストーン・バレットを取得しました!》

《只今の戦闘勝利で【摑み】がレベルアップしました!》

いや、確かに戦闘があったようである。

々と長できたようだ。まあそれはいいのだが。

狀況を確認していく。

特に変わった所はない。

何かキーアイテムを拾っている様子もない。

いや、あった。

稱號が増えている。

中庸をむ者、とある。

何ですかこれは?

とりあえず、MP殘量がの危険をじる領域まで減っているのだ。

突っ立っている訳にもいくまい。

ロッドを地面から拾い上げるとレムトの町へと戻る事にした。

夜の狩りは一旦中止だ。

ヴォルフとジーンの助けを得ながら戦闘をなるべく回避しつつ町へと戻った。

それでも2回ほど闇の中からのウサギの奇襲をけてしまった。

ダメージはポーションでなんとかする。

町の城門の中へ辿り著いた時には座り込んでしまった。

けない。

集中力がもうし持続してくれないものか。

宿屋に転がり込むとヴォルフとジーンを帰還させる。

消費したポーションの作をさっさと終えたらベッドに潛り込んだ。

そしてログアウト。

々と考えなければいけないと思うのだがそれも明日にしたい。

そんな疲労が殘っていた。

昨日の疲労はすっかり抜けきっていた。

ログインしたのはいいが時間はいつもより遅い気がする。

朝日の中、町の中の屋臺はフル稼働していることだろう。

朝飯を食える所を探すか。

《フレンド登録者からメッセージがあります》

やはりアデルとイリーナは先にログインしていたようだ。

即返信をしておく。

先に食事を済ませておくこと。

そして落ち合う場所は冒険者ギルドの前を指定しておいた。

ついでにサキにもメッセージを出しておく。

夕方あたりでウサギの皮を持ち込みたいからな。

れ違いにならないようにしておきたい。

その前に、だ。

昨夜できなかった荷の整理をしておいて、掲示板を覗いてみる。

攻略関連のスレッドは比較的すぐに見つかった。

草原の人魂に遭遇した件について書き込んでおく。

あまりネタバレしない程度にしておいたがいいよね?

稱號がトリガーとなって戦闘にまで至ったと思うのだが、確信は持てない。

予測として書き込んでおく。

こんなものでいいだろうかね。

宿を出ると建で殘月とヘリックスを召喚する。

屋臺で適當に買い食いしながら街路を進んで冒険者ギルドに向かう。

アデルとイリーナはそれぞれの召喚モンスターを相手に何かをしているようだ。

いや、アデルが馬のまーちゃん相手にモフモフしていた。

馬はさほどがフワフワじゃないと思うのだが、並みのだけでもいいのかね?

その表は恍惚としている様に見える。

これは危険だ。本なのか。

イリーナはロッドを水平に掲げて鷹のスカイアイを止めさせている。

そのロッドを水平にしたまま上下に揺らして遊んでいた。

上下させてもスカイアイの首の位置がかない。

大きく移させると翼を広げて抵抗する事もあるようだ。

これってじゃれてるだけなのか?

おっと、これはいけない。

二人に時間潰しをさせているのはオレの方だ。

「おはよう。遅れて済まなかったな」

「「おはようございます!」」

「では早速だが昨日の続きだ。あと3匹になる」

「え?」

「あと4匹じゃなかったんですか?」

「あの後で1匹は狩ってある。」

「「はあ?」」

「ま、心配ないだろう。それより今日は依頼が終了するしないに関わらずレギアスにも行くからね」

「「分かりました」」

野兎の皮は《アイテム・ボックス》に纏めてれてはある。

かなりの量になるだろう。

それでも皮そのものは小さいものだし、全を覆うにはあって困る事はないだろう。

心配なのは収納限界の方だ。

まあそこはそれ、三人で分擔して運べばなんとかなるような気もしている。

早速昨日の続きだ。

昨日と同様、野犬狩りの方は盛況のようである。

何故か分からないが確実に増えているよね?

それを橫目に馬二頭が駆け回って兎狩りである。

いや、アデルとイリーナに関しては正しく鷹狩りと言えなくもない。

が鴨のような野鳥じゃないだけだし。

そしてその果なんだが。

4匹目、そして5匹目のホーン『ド』ラビットは幸運にも立て続けで遭遇できて狩る事も出來た。

ところが6匹目がなかなか遭遇出來ない。

を求めて彷徨っているうちに々とスキルもレベルアップもしている。

《これまでの行経験で【識別】がレベルアップしました!》

《これまでの行経験で【鑑定】がレベルアップしました!》

スキル一覧を眺めていると補助スキルのびがいいのは分かる。

他にまともに育っているのは召喚魔法位か。

特に魔法系は相當に使い込んでいる気がするのだが、中々レベルアップしてくれない。

うん。

理由は分かっている。まあ自業自得なんだけどさ。

これは晝飯を挾んで狩りを続けることになりそうか、と思った矢先に6匹目に遭遇した。

そのホーン『ド』ラビットは今日一番の健闘を見せただろう。

まーちゃんの當たりが直撃してかなりの大ダメージを與えていたのだ。

アデルの怒りは相當なものだったように思う。

「モフモフだからって許さない!」

そんなじの怒り方だった。

もしかして今までモフモフなウサギ相手に手でも抜いてたんじゃないだろうね?

まあなんとか狩り終えたので良しとすべきなんだろうけどさ。

冒険者ギルドで縞野兎の角を6本提出すると、2件分での報酬は100ディネ銀貨で8枚だった。

微妙といえば微妙だ。

どう考えてもウサギから剝いだアイテムを売り払った金額のほうが大きい。

《ギルド依頼をクリアしました!》

《ボーナスポイントに2點、エクストラ評価で1點が加點され、ボーナスポイントは合計20點になりました!》

とは言ってもボーナスポイントがこうやって加算されるのであるから良しとしよう。

アデルとイリーナとウィスパーで確認しておく。

『合計で3點だった。そっちは?』

『同じです』

し余裕が出來ました!』

まあ上々って事でいいのだろう。

達の表も明るいし。

窓口を離れると依頼票のられている壁をざっと見回してみた。

ないだろうな、と思いながら野犬狩りの依頼を探してみる。

やはりない。

昨夜の人魂との遭遇だが、アレは何かしら稱號がないと遭遇してもイベントが進まない仕掛けのように思えた。

アレをクリアしたからには次に進めって事だよな?

でも彼達を連れて先に進めるかどうかは分からない。

そもそも先に進めばより強いモンスターと戦うことになるだろう。

今のオレでもスノーエイプと戦って勝つ事は不可能じゃないだろうが連戦となると厳しいのは明らかだ。

無茶はしない方がいいんだが。

「當初の予定通り、レギアスの村に行こう。防の作依頼は早めにしておきたい」

「はい!」

「私達の分の防ですか」

「もちろん。その後で森に狩りに出る。し試したい事ができたのでね」

あの通れなかった場所だ。

多分、予想通りなら通れる筈である。

問題なのは彼達も連れて行けるかどうかだ。

NPCの師匠がオレを連れて別エリアに行けたのだから大丈夫な気もする。

不安はある。

だがそれ以上に期待もある。

今まで知らなかった場所がそこにある。

今まで見ていない風景がそこにある。

それだけで十分だろう。

「その前に大切なことがあるな」

「ご飯!」

「正解」

空腹を満たすべく屋臺のある一角へと突撃を敢行する彼達だが。

お祭りで食いを買い漁る子供にしか見えない。

保護者のような気分でオレも彼達の後を追うことになった。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv5

職業 サモナー(召喚師)Lv4

ボーナスポイント殘20

セットスキル

杖Lv4 打撃Lv3 蹴りLv3 関節技Lv3 投げ技Lv3

回避Lv3 けLv2 召喚魔法Lv5

魔法Lv2 風魔法Lv3 土魔法Lv3(↑1)水魔法Lv3

火魔法Lv2(↑1)闇魔法Lv1

錬金Lv3 薬師Lv3 ガラス工Lv3

連攜Lv5 鑑定Lv5(↑1)識別Lv5(↑1)耐寒Lv2 摑みLv4(↑1)

Lv4 作Lv3 跳躍Lv1 耐暑Lv3

裝備 カヤのロッド 野兎の當て+シリーズ 雪猿の腕カバー

野生馬のブーツ+ 雪猿の革兜 背負袋

アイテムボックス×2

所持アイテム 剝ぎ取りナイフ

稱號 老召喚師の弟子(仮)、家畜の守護者、中庸をむ者(New!)

召喚モンスター

ヴォルフ ウルフLv4 お休み

殘月 ホースLv3

ヘリックス ホークLv3

フクロウLv3 お休み

ジーン バットLv1 お休み

同行者

アデル&まーちゃん

イリーナ&スカイアイ

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