《サモナーさんが行く》1286 蛇足もここに極まれり

本日三回目の更新です。

「クッ!」

まただ。

またしても凌がれた!

バカめ、戦い方が以前とまるで違うじゃないか!

確かに威圧は半端ない。

格は當然ながらこっちに不利でかしようがなかった。

スピードとパワーも圧倒的に不利だが、武技と呪文で補える。

そう、その筈だった。

でも今回は違う。

がおかしい!

スピードはまだいい。

パワーでもオレの方が上になってないか?

そう思えるが戦況は全く異なる。

まるで通じていない。

以前よりも通じていない。

躱され、凌がれ、時にはカウンターを喰らっている。

本気を出していない、とは思えない。

いや、思いたくなかった!

「どうした? こちらからも仕掛けるぞ?」

「ッ?!」

バカがく。

その姿が消えた?

いや、目前に拡がるのは水飛沫。

海水と共に砂も混じってる。

目眩ましのつもりか!

「チッ!」

真正面に突っ込む。

後退する気はない。

に回っていてはいずれ詰む。

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この魔神を相手にその選択肢は最初からない。

狙うのは超接近戦、関節狙い。

魔神の打撃が飛んでくるのは承知の上だ!

「!!」

だが今回は々勝手が違う。

首に巻き付く逞しい腕。

いつの間にか回り込まれていた?

しかも絞めを仕掛けられている?

クソッ!

魔神の右腕、その肘を押し上げる。

間一髪で腕から抜け出した。

脇に一撃、肘をれて押し込み腕を極めにいく。

出來ない。

オレの方がパワーでも上とじたのは錯覚か?

「ふむ。惜しい」

「何がだ?」

一旦、距離を置いた。

追撃はない。

バカめ、余裕を見せていやがるのか?

「今のうちに言っておこう。これを見るがいい」

「む?」

バカが手にしていたのは?

だ。

見覚えならある。

魔神の指だ。

以前、こいつの所持する魔神の指を預かった。

今もオレが預かっている筈だ。

その筈だよな?

「お前にはこれをプレゼントだ。我が嵌めてやろう」

「あんた、変な趣味があったりしないだろうな?」

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「さて、どうかな」

ヤバい。

恐怖とは別の戦慄が背筋を奔る。

心理戦かな?

そうだとしたらかなりの威力だ!

超接近戦で関節狙いのままでいいのだろうか?

迷いが生じているのが分かる。

分かってしまう。

それが攻勢を鈍らせてしまう!

悩むな。

今は目の前の筋バカに集中!

「フンッ!」

「クッ!」

いかんな。

突破口が見えない。

キースは未だ健在だ。

武技や呪文で強化しているから強くて當たり前、その有効時間はまだある筈。

待ってもいいが、それではこっちの集中力が保てないだろう。

キースを殺しては無意味だ。

生かしたまま捕獲して、指を嵌める。

至難と言える。

パワーを抑えつつ戦うのがこれ程に難儀とは!

心理的に揺さぶってはみた効果は?

確かにあった。

だが関節狙いに來ない。

打撃中心になっている。

これではいけない。

手札は?

まだある。

まだあるが決定的な手札は最後の一押しに使いたい。

別の手札を使うべきだろう。

きっとキースは驚くに違いない。

以前の私ならば考えもしなかっただろう。

魔神としての誓約と制約、その全てを失ったからこそ使える手だ。

「何っ?」

「驚いたか? そうだろうな」

「貴様ッ!」

「キースよ。お前も好きな得を使っていいぞ」

私が手にしたのは、棒切れが一本。

いや、地下世界で適當に木材削って木刀にした代だ。

【武アイテム:刀】黒檀の木刀 品質D+ レア度4

AP+3 M・AP+2 破壊力7+ 重量15+ 耐久値250

黒檀製の木刀。練習用だが兇そのもの。

正直、不出來な代だ。

まあ素人が作ればこんなものだろう。

それでも十分。

加減が出來る適當な長さに重量がある。

但し全力でキースの脳天に直撃させたら即死ものだ。

そうなるにはキースは速過ぎるからきっと大丈夫。

大丈夫な筈だ。

私の興味はキースがどんな得を手にするかであった。

を手にしない、という可能もあるが恐らくは刀を使う。

そうだろう?

「あんた、宗旨替えしたのか?」

「どう思われようが構わん」

片手で木刀を軽く一振り。

試しに何度も素振りをしているが覚はどうか?

奇妙に馴染んでいる。

ただ実戦ではどうか?

やってみなければ分からない。

木刀をまた一振り。

今度は地面に向けてだ。

そして跳ね上げた!

水飛沫が大量の砂と共にキースを襲う!

そして次に私が見たのは?

キースだ。

その手に刀を持っている。

そう、そうだ!

それでいい。

では、続きだ!

「ッ!」

「チッ!」

クソッ!

この筋バカ、得を使えたのか?

これまでこの魔神はのみを使う戦闘スタイルを貫いていた。

その筈だ!

そして得を使えばどれ程の力量を発揮するのか?

恐るべき存在だ、としか言えない。

表現するのも難儀だ!

救いがあるとしたら?

その剣筋が素直で読み易い事だろう。

但し読み違えてしまえばそこで終わりだ。

きっと一撃で死ねる。

武技と呪文で強化してあるから一撃死はないか?

いや、甘く見ていい相手じゃないぞ?

「いかんな、本調子が出ない。覚も違う」

「何の話だッ!」

「やはり慣れた型にしておくか」

魔神が構えを変える。

手にした木刀を八雙の構えに。

いや、違う!

木刀を更に高く掲げた!

急激に過熱された空気が顔を叩く。

それは狂気。

まさか。

まさか!

「チェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!」

「キィャャャャャャャャャャャャャャャャッ!」

オレは反的に蜻蛉の構えになっていた。

そして、猿聲。

二つの猿聲が、そして狂気が重なる。

疑念はあった。

迷いもあった。

それらが吹き飛んでいた!

間合いは一瞬で詰められていた。

多分、同時に手にした得が振り下ろされる!

「クッ!」

「フンッ!」

共に直撃ならず。

鎬を削る、ではないな。

鎬部分で大きく弾かれた。

続けて橫合いに手にした羅刀を薙ぐ。

だがこれも止められた?

鍔迫り合い、ではない。

刀を持つオレの右拳が魔神の手に握られている!

「×××」

「な、何?」

「×××」

「貴様ッ!」

刀がオレの手から落ちる。

右手は急速に痺れて覚はない。

左手は羅刀を手放し金剛杵を手にしていた。

そして魔神の腹に押し當てる。

刃を展開。

だが魔神は微だにしない。

「何故、お前が知っている?」

「知りたいか?」

が浮いた。

次の瞬間、海水が顔を叩く。

淺瀬に投げ打たれたのだと分かる。

オレは金剛杵を手放してはいない。

魔神もオレの右手を放していなかった。

「何故、オレの名前を、お前が!」

「その答えはこれからお前が見出すのだ」

オレの右腕は捻られて背中に押し當てられる。

完全に極められてしまった!

だがそれよりも大きな衝撃がオレを襲っていた。

何故だ?

何故、現実のオレの名前を、この筋バカは知っているんだ!

「キースよ。お前はこれからしの間、苦しむだろう」

「ッ?」

「その先で絶するか、明を見出すか。それはお前次第だ」

どういう意味だ?

そう問う事が出來なかった。

目の前が真っ暗になる。

そして激痛。

これは何だ?

バカが語る言葉も既に聞こえない。

もうダメだ。

オレは意識を手放すしかなかった。

次で蛇足もラストです。

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