《サモナーさんが行く》1289 蛇足の蛇足2 日常の風景

発作的に蛇足的なお話を追加するかもしれません。

本編は完結済みですが、設定変更が面倒なので連載中のままにしてあります。

私の名はヴォルフ。

召喚モンスターであり、種族は大神。

その姿はやや大きめの狼だ。

召喚主はキース様。

私達キース様配下の召喚モンスターはマスターと呼んでいる。

ただこの事をマスターは知らない。

我々の會話はマスターには聞こえていないのだ。

我々の會話は念じるだけで立してしまう。

ただ召喚モンスター同士だけなのが殘念だ。

例外はビーコンのみ。

いや、転生煙晶竜?

この際どっちでもいいか。

このドラゴンは我等ともマスター達とも會話が可能だ。

正直、羨ましい。

以前、その點を指摘したがビーコンは申し訳なさそうに謝った。

いや、謝ってしい訳じゃなかったんだが。

心底、羨ましかっただけだ。

愚癡ってすまない。

そして私はマスター配下の召喚モンスターの中では最古參だ。

そのせいかマスターの代わりに指揮統率を行う事が多い。

今も闘技場でマスターと共に激戦を繰り広げたばかりだ。

その戦いで私は終始、遊撃戦を行いつつ仲間に指示を飛ばしていた。

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途中からはマスターの戦い振りを見守るばかりだったけど。

今も継続中。

マスターは英霊を相手に戦っておられる。

今日の稽古相手は鬼一法眼か。

楽しそうだ。

ただ油斷はしない。

気盛んな仲間を參戦させてマスターの邪魔をさせてはいけないからだ。

戦鬼はどうだ?

すると手に負えない奴だが今は大丈夫。

鉄球でお手玉して遊んでいる。

傍に護鬼もいるし問題はあるまい。

エジリオはどうか?

仲間はまだしもマスターのご友人相手にすら悪戯しかねない奴だ。

大丈夫。

ナインテイルと命婦に絡まれていた。

これは放っておこう。

普段、マスターの見えない所で悪さをしているだろ?

お前を助けるつもりはない。

ただマスターの稽古の邪魔になってはいけない。

頭上にいたクーチュリエに伝達しとこう。

いざとなったらあいつらをつまみ出せ!

頼むぞ!

クーチュリエはここ召魔の森に常駐狀態だ。

は神魔蜂王であり養蜂を擔當している。

闘技場での対戦や周囲の森への狩りに參加する事もあるが最も重要なのは養蜂業だ。

ナインテイルにはストックされていた蜂を全滅させた前科がある。

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私ならば即制裁だがクーチュリエは鷹揚だった。

ただクーチュリエの護衛役の神魔蜂、スパークとクラックは違う。

こないだナインテイルの眉間に針ぶっ刺したいとか呟いていたし。

コラコラ!

気持ちは分かるが制裁は死なない程度にしろよ?

ペプチドが針で覚醒を促すのと意味が違うからな?

黒曜が私の目の前に舞い降りた。

大型のフクロウ、フォレストアイで私に次ぐ古參でもある。

で、重傷者はいたか?

極夜と出水が重傷だった?

既に祝福を使って回復してある?

ご苦労様。

殘るはマスターだけか。

稽古もそろそろ終わるだろう。

英霊は一定時間を経過すると消えてしまうからな。

問題は終わった後だが今日はどうなるだろう?

最近、マスターは仲間と一対一で対戦する事が多い。

しかもご自を武技や呪文で強化せずに、だ。

お相手も同様だから対等とも言える。

但し対戦相手がどの方もマスターより格が上だ。

ドワーフのお仲間もいるが背は低いものの重量級だ。

まあ不利な條件もマスターには問題ないだろうけど。

対戦慣れもしているから心配はしていない。

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だから気軽に闘技場へ星結晶を捧げて激戦を繰り広げてしまう。

消耗しても全く気にしていない。

その後で別の対戦もするとか、本當に元気だ。

そしてマスターが一対一の対戦を堪能する間、私達は暇になる。

人形組の久重達にはここ召魔の森で様々な作業に従事しているからいい。

クーチュリエにも養蜂業がある。

エジリオ達アマルテイアも酪農に協力している。

そういった役目があるなら暇を持て余す事はない。

でも大部分の仲間は暇になる。

観戦するのも大事だけど暇なのは事実だ。

戦ってこその召喚モンスター。

でもマスターはその事を忘れて戦いに沒頭するような所がある。

仕方ない、マスターはそういう方だ。

今更だが再確認。

あ、クーチュリエは養蜂場に行っていいぞ。

ナインテイルと命婦の監視は黒曜に引き継がせるから大丈夫だ。

替、替!」

「じゃあ次は私達がやるね!」

英霊が消えてマスター闘技場から退出する。

れ替わりで二人のが登場した。

春菜様、此花様だ。

お二方とも様々な召喚モンスターを引き連れている。

いずれも既に顔見知りだ。

いや、新人のゴールドシープがいる。

どうやらここでマスターが言う所の促栽培をするらしい。

「相変わらずだな」

「最後がいけない。攻撃が全部、捌かれてしまった」

「剣豪の英霊が相手だぞ? 贅沢な悩みだな」

「贅沢は素敵だ」

マスターが與作様と談笑しておられる。

今日もこの方と対戦かな?

恐らく周囲にいる方々も一対一で対戦されるだろう。

東雲様、ハンネス様は確定。

最近、ここに來るようになった各務様も確定。

各務様のお仲間も多分確定。

リック様もやるだろうか?

顔が引きつっているから多分やろうとわれているのだろう。

「ヴォルフちゃーん! おいで!」

「バウッ!」

來た!

お呼びが來た!

アデル様が手招きしておられる。

その手にあるのはブラシだ。

ご褒

ご褒

尾が凄い勢いでいてしまうが仕方ない。

黒曜、後は任せた!

「じゃあ反対側もやるわよー」

「ウォン!」

アデル様の目の前でを反転させる。

このお方のブラッシングは格別だ!

加えてでて頂くと幸せな気分になれる。

お側にいてここまで気持ちよくなれる方は他にマルグリッド様がいるだけだ。

しかし困った。

反転した私の視界に並んでいる仲間達が飛び込んできた。

ティグリス、獅子吼、極夜か。

多分、極夜の巨軀の向こうにジンバルと風花がいることだろう。

順番を待っている手前、延々とブラッシングをせがむのは止めよう。

仮にも最古參なのだ。

沽券に関わる。

だが困った。

仲間達の視線は確かに気になる。

気になるがこの気持ちよさには抗えない。

毎度のことだがこの際どうでもいい。

皆の衆、私のだらしない姿を存分に見るがいい!

それにこんな姿をマスターに見られたら?

今更だな。

もう既に何度も見られてるし。

そういえばマスターはどうされておられる?

うッ?!

あ、ダメ。

アデル様、そこダメ!

気持ち良過ぎてダメになっちゃう!

変な聲が出ちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅっ!

ふう。

ブラッシングという名のご褒タイムは終わった。

どうにか失には耐えた。

私はかろうじて最後の一線を守り切った。

自分で自分を褒めておく。

ご褒の時間は終わってしまえば短かった。

今はティグリスがご褒タイムだ。

あの雄々しい白虎が図のデカいだけのネコとなっている。

しかし困ったぞ?

風花の後ろに並ぼうかとも思ったがダメだ。

アデル様、イリーナ様配下の召喚モンスター達も並んでいる。

全員がモフモフで顔見知りだった。

ここは潔く諦めよう。

で、マスターはどこだ?

闘技場で観戦か、と思ったら違う。

座り込んで何かを手にして考え込んでおられた。

握りしめた拳を見つめておられる。

アレか。

多分、手にしておられるのは魔神の指だ。

數日前、海魔の島で何があったのか?

ナイアスから事件の推移について報告は聞いている。

マスターは丸一日、悶絶し続けたという。

祝福ですら全く役に立たなかったらしい。

そして魔神の指は誰にも外せなかった。

そう、誰にもだ。

だから私がいたとしても何の役にも立てなかっただろう。

悔しかった。

んな意味で悔しかった。

結局、マスターは自らの手で魔神の指を外したらしい。

良かった。

魔神に変化する事もなかった。

その事件以降、マスターの様子には気を配っている。

私だけではない。

仲間が皆、そうだった。

だからマスターの変化に気付いている者は多いだろう。

マスターのお仲間はどうか?

多分、気付いていない。

いや、イリーナ様は気付いているかもしれないな。

魔神の指が外れてからマスターは変わった。

思いに耽る事が多くなった。

その際には必ず自らが外した魔神の指を手にしている。

それに時折、魔神の指を嵌めたり外したりしているのが心配だ。

特に悶絶する様子もないけど心配だ。

今も傍からは観戦しているように見えるだろう。

でも違うのだ。

危険ではないだろうか?

ビーコンに確認したが魔神の指は破壊出來ないらしい。

そして今後、何をしようともマスターが魔神になる事はないとも斷言した。

何故、と問うたが明確な答えはなかった。

それでも私は信じた。

変な奴だが仲間だしな。

何よりも信じていたかったからでもある。

お?

黒曜が音も立てずに私の背中に舞い降りた。

急いているのが分かる。

どうした?

え?

ナインテイルと命婦が消えた?

幻影を使われて見失った、だと?

おい、その手は喰らわないってこないだ言ってたじゃないか!

いや、待て。

黒曜は私に次ぐ古株でその能力に疑念の余地はない。

この場合、ナインテイル達が上手く騙したのだと思おう。

よし。

あいつらは見付け次第、折檻だ!

制裁だ!

どうせ碌でもない事をやらかすに違いないのだ。

ここは私が自ら探すとしよう。

連中の匂いは知している。

辿っていけばいいだけだ。

行き先に心當たりもあった。

ナインテイル、そして命婦!

ここ召魔の森に逃げ場所などないものと知れ!

ナインテイルと命婦の居場所はすぐに判明した。

パンタナールの所だ。

そのパンタナールは城館の周囲にある塔のうちの一つにいた。

塔の上はそのいずれもがドラゴン組の指定席になっている。

パンタナールも観戦する際はここにいるのが常だ。

そのパンタナールも困った奴だ。

本當にドラゴンかと思える程でマスターも手を焼いている。

ビーコンによると貴種であるらしいが気品はじられない。

外見はしいが中は子供同然。

一人だけになるとすぐに泣き出すような奴だ。

その為、誰かが傍にいる事が必須になる。

ナインテイルも命婦もパンタナールと組む事が多かった。

當然、仲がいい。

隣の塔の上にはラルゴがいてその頭上には火がいる。

それですぐに分かった。

寂しくて堪らないならパンタナールは火を呼んでいるからだ。

他にも違和があった。

周囲に漂う甘い匂い。

これにも心當たりがあった。

塔の上であろうと私には問題ない。

も使って一気に塔を駆け上がった。

パンタナールの背中に到著。

ナインテイルも命婦もこっちに気付いていない。

こいつら、パンタナールの頭上で何をしている?

多分、予想通りだろうけどな。

「キュッ? キュッーーー!」

パンタナールが私に気付いた。

頭を背中側に転じて私を見ると、急に態度が怪しくなったんだが。

お前、何を慌てているんだ?

んでないで説明してみ?

いや、事は分かった。

ナインテイルと命婦が固まったまま、こっちを見ている。

用に両手に持つのは瓶だ。

周囲に漂う甘い匂いの正はやはりそれか。

瓶の中が何であるのかは明らかだった。

そうか、蜂か。

パンタナールも共犯か?

しでも舐めてたら共犯な。

違う?

場所として頭上を提供しただけ?

そうかそうか。

その言い訳はクーチュリエにしよう、な?

いや、あいつは優しいから許してしまうだろう。

スパークとクラックに弁明しときなさい。

ああそうだ。

ナインテイルと命婦はダメだから。

絶対にダメだから。

一度、その眉間にぶっとい針を刺して貰うといい。

いっそスッキリして生まれ変わった気分になれると思うぞ?

視線を転じる。

ラルゴと火も見ていたなら報告して貰いたいものだが。

話をしておこうと思ったがダメみたいだ。

ラルゴも火も惰眠を貪っている。

こいつらもダメだ。

ちゃんと観戦しろよ!

うん。

問題児が多くて困る。

今更だけどそう思う。

そしてマスターの代わりに面倒を見る役目は私だ。

そういう役回りになってしまっていた。

ナインテイルと命婦が何か言ってきてる。

泣き落としが効くと思うなよ?

首を傾げてアピールしてもダメなものはダメ!

針は痛いからってお前達な・・・

せめておにしてしい?

知らん。

もう遅い。

私は今からクーチュリエの所で相談しないといけないのだ。

の在庫管理狀況を聞いておかないと。

いや、この場合は保安狀況の強化を図らねばならないか。

マスターに直接、進言出來ないのが殘念だ。

本當に殘念だった。

だがこの場合は仕方ない。

マスターの手が回らない所は私が補完すべきなのだ。

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