《サモナーさんが行く》1295 蛇足の蛇足8 集結

「ご無沙汰しております。陛下」

「キース様、そう他人行儀にならずに」

いや、そういう訳にもいかないでしょ!

サビーネ王は確かに戴冠して日が淺い。

時代に共に行していた時期もある。

周囲にいる護衛の竜騎士も顔見知りだ。

だから免禮、というのも気が引ける。

それにオレニュー師匠もいる。

ギルド長のルグランさんもいる。

分かる。

シルビオまでいるがまあいいだろう。

事実上、ジュナさんとゲルタさんの下僕だし。

そのジュナさんはいるけどゲルタさんの姿が見えない。

王陛下と気軽に話していい雰囲気じゃなかった。

何よりサビーネ王の背後には金紅竜がいる。

まあベルジック家の守護竜だし不思議じゃない。

それにしても金紅竜は派手だ。

まるで臨時の玉座の間にいるかのよう。

いや、その姿はどんな玉座よりも派手だ。

サビーネ王も妙に似合っている。

この威厳を前にしているのだ。

これで軽口を叩ける程の強い心臓をオレは持ち合わせていない。

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金紅竜の右隣にはエルダードラゴンの長老が控えている。

いや、控えていないな。

寢ている。

間違いなくアレ、寢ているよね?

左隣には水晶竜。

金紅竜の放つしていてこちらも派手だ。

ここはN4E17マップにある巌城、竜騎士の拠點として定著している。

しかも水晶竜がここの地下に巣を設けていた。

數はまだないが、各所から集められたドラゴン達が駐留している。

ただ、ここにサビーネ王が來る理由が分からない。

港町サリナス、ターニャの砦を行き來しつつ、白壁城の再建をしている筈。

いや、より正確に言えば街道整備と魔の駆逐だ。

白壁城の跡地は流拠點としての最低限の機能が備わっているだけ。

王家の拠點として再建が果たされるのはもっと先の話になるだろう。

ただギルドを通じて生産職に多數の依頼が出ている。

予想以上に早く再建される可能はある。

ここ巌城には本來、コンティ家への警戒戦力が詰めているだけだ。

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その主力は水晶竜配下のドラゴン達、その筈だ。

だが現在、巌城の上空には浮島が見える。

これは翡翠竜の拠點だ。

オレとしては気になる。

尋常ではない警戒だが、その意味は何だ?

王陛下の前でオレニュー師匠やジュナさんに聞くのもどうかと思う。

後で聞いておこう。

巌城は以前と比べてかなり拡張されている。

かつて城外に設けられた資材搬用の広場は様変わりしていた。

まるで闘技場だ。

ただ現在、ドラゴン達の休憩所のようでもある。

巌城の設備は現時點でも不足しているらしい。

だから翠玉竜の拠點まで員している、と思われるが・・・

本當にそうだろうか?

「このドラゴンの數に驚かれたでしょうね」

「ええ、陛下」

「そうする必要があったのです」

「何故でしょう?」

『キースよ、すぐに分かる』

金紅竜の頭が至近距離まで迫っていた。

張しているのが分かる。

やはり尋常じゃない。

いや、気にする程でもないのか?

オレニュー師匠は楽しそうな様子を見せている。

王陛下の前で神妙な態度を崩していないようで隠せていない。

所々で綻びが目立つ。

ジュナさんは平靜そのもの、これは年の功かな?

『どうやら、來るか』

「來る?」

金紅竜の視線が上空に向いていた。

浮島の周囲に無數の影が出現している。

その全てが恐らくはドラゴン。

遠距離でもセンス・マジックで判別可能な程だ!

そんな中でも巨大な魔力を発する個が複數いる。

恐らくは名前持ちのドラゴン達。

翡翠竜は當然いると思えるが・・・

數が多い。

いや、名前持ちのドラゴンの全てが集結しているのでは?

そうとしか思えない數だ!

配下の召喚モンスターの陣容を確認しておく。

黒曜、ヘザー、言祝、蒼月、折威だ。

空中戦用の陣容、迎撃に出るのはいつでも可能。

切り札はいずれも使用可能。

の何かが襲って來てもいいぞ!

問題は周囲にいるドラゴン達だな。

オレの獲が減る。

いや、殘るかどうかすら怪しい。

突如として空が割れた。

いや、黒い渦が空中に生じている。

何度も見ていたから分かる。

ドラゴン達が大規模な転移を行う際に見られる現象だ。

何が來る?

影が二つ、黒い渦の中からゆっくりと降下していた。

その魔力の大きさは名前持ちのドラゴンに匹敵する。

何なのか、分かってしまった。

恐らくは琥珀竜と雲母竜だ。

まだだ。

まだ、我慢だ。

王陛下の前で、笑うな!

多分、あの筋バカの魔神が、來る。

笑うな!

そもそもオレと戦えるとは限らない。

ドラゴン達の餌食になってしまう可能は考慮すべきだろう。

頼む。

お願いだからオレに戦わせて!

そうしたい理由があるのだ。

爺様と筋バカとの三つの戦い、その記憶をオレは思い出していた。

記憶の混を整理する上で幾つかの疑問が殘った。

それに払拭出來ない程の違和

あの筋バカはその答えを知っている。

間違いなく、知っている。

詰問せねばならない。

いや、尋問かな?

拘束して答えたくなるようにせねばならない!

可能だろうか?

いや、やるのだ!

それで拘束したとして、どうやる?

ちょっとだけ優しくするとしよう。

加減を間違えてはいけない。

ここは冷靜に。

そう、冷靜にならねばならない。

だが溢れそうな熱量がオレの中に生じている。

ダメだ。

を取り繕えそうにない!

これ、気付かれているかな?

オレニュー師匠は何故か苦笑している。

ジュナさんとルグランさんは知らん顔で空を見上げていた。

シルビオは明らかに怖がっている。

サビーネ王の表は?

良かった。

上空をずっと見続けていたようだ。

ただ竜騎士プリムラには見られたな。

視線が合った途端、目を逸らしている。

・・・震えている、のか?

そんなに怖いか?

金紅竜がサビーネ王の前に出る。

著陸した雲母竜が目の前だ。

だが衝突はしない。

至近距離で睨み合っている。

ただそれだけだ。

だが強烈な殺気が周囲に充満している!

これだけで失神する者がいておかしくない。

いいぞ。

オレの放つ殺気など吹き飛びそうだ!

『息災のようで何よりだ、雲母竜』

『相変わらずか、金紅竜』

互いに放たれた言葉は挨拶にしては普通だ。

大地が振しているけど気のせいだ。

空気が震えていて耳が痛いけどな!

それでも気のせいだ。

その筈だ。

雲母竜の後方に琥珀竜が著陸。

その周囲に名前持ちのドラゴン達も著陸する。

まるで包囲するかのように。

それでも琥珀竜は平然としている。

このドラゴンは強固な多層結界を常時展開している、と聞く。

それでこの余裕が生まれているのだろうか?

ここにいるドラゴン達が相手では怪しいと思えるが・・・

オレが同じ立場であったならどうなるだろうか?

ダメだな。

きっと笑ってしまうに違いない。

ついでに挑発してたりするだろう。

あの筋バカ相手にするのと同じように、だ。

その筋バカがいた。

琥珀竜の頭上で結跏趺坐か。

・・・

あ、ダメ。

が自然といてしまう。

『・・・?』

『キース?』

「これ、キースよ! 待たんか!」

雲母竜と金紅竜の橫を通り過ぎる。

オレニュー師匠の聲は確かに聞こえている。

だが、ダメだ。

己の歩みを止められない!

バカは結跏趺坐を解いて地表に舞い降りた。

僅かな笑みを浮かべている。

余裕か?

その笑みを消してやろうか?

いや、獣のような笑みにしてみせよう。

オレにとってはその方がいい。

絶対に、いい!

「どうやら、ここに來る事は陛下も承知だった訳か」

「そうとも。本來は王家との渉を先にすべきだが・・・」

「やるか?」

「それもいいがな。先に用件を済ませておこう」

「用件?」

「大した事ではない、な。渉、といいうのも正確には違う」

「では、何だ?」

「宣言、だな。我は今後も魔神共の殲滅にく。邪魔せぬ限り敵対はせん」

そうか。

魔神殲滅、か。

問題は後半部分だな。

邪魔せぬ限り、か。

つまり魔神共は己の獲で橫取りは許さない。

そういう事だろ?

不満だ。

オレにも寄越せよ!

「不満そうだな、キースよ」

「ああ、不満だとも」

「我が適時、相手をしてやってもよい。それで我慢しないか?」

「無理だな」

それはそれ。

これはこれ。

オレは贅沢なのだ!

強敵であるならばその全てを獲としたい。

無論、目の前にいる筋バカの魔神も含めての話になる。

『魔神よ。勝手は許さぬぞ!』

水晶竜がく。

だがその周囲に幾つものが生じ、魔法円と化した。

魔法円と差するように幾つもの魔方陣が生じる。

結界、だな。

多分だが琥珀竜の仕業だ。

「水晶竜、だったか? キースの方を先に片付けさせて貰う。し待て」

『何!?』

「焦るな。そう長くはかからん」

そうか。

オレを相手に長くかからない、と。

安い挑発だ。

分かってる。

冷靜に。

努めて冷靜に。

なれるかっ!

オレの中にある熱がそれを許さない。

「來い、キースッ!」

「フッ!」

軽く息がれる。

我ながらまるで炎のようにじられた。

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