夜が明ける。

地平線に幾つかの影が浮かんでいた。

既にかないガラクタでしかないが、確認は要る。

使える部品が殘っていたらいいのだが・・・

停滯フィールド展開は続行。

學迷彩も続行。

パワー消費は半端ないが問題ない。

この義の主力は反質だ。

小型ハンドガンの弾倉程度の大きさの容に収まっている。

力ユニット、とオレは呼んでいた。

停滯フィールドと學迷彩の同時展開もこれ一つで長期間、維持可能。

ただ、念には念をれてガラクタから反質は収集している。

どこで必要になるのか、分からないからな！

義もチェックしておこう。

特に左腕は念に。

一昨日、換したばかりだ。

四肢は全てユニット化されていて換裝が容易になっている。

アップグレードされた腕を拾った場合、換裝するようにしていた。

兵裝も幾つか、用途を絞って換している。

メインはハンドガンサイズの電子銃。

それにライフルサイズの小型レールガン。

そして高周波ブレード。

いずれも反質が出力源で義と同じ力ユニットが収まっている。

最近、質量共鳴砲を手した。

使ってみたが使い勝手は悪い。

一定時間の貯めを必要とするからだ。

しかも程も短い。

戦闘中に撃対象に照準し続けるのは至難なのだ！

しかも敵の裝備品が殘り難い。

ただ姿を消して接敵、葬るには便利。

砲と呼んでいるがサイズは小さく手狀の音叉みたいなものだ。

今は左腕の外裝に取り付けてあるが、戦闘中でも邪魔にならない。

力ユニットが備わっておらず義からパワー供給が要るけどね。

まあそのうち慣れるだろう。

問題が大きい兵裝もある。

空間歪曲砲。

いや、これは停滯フィールドの応用で砲塔はないけどね。

その効果は一定空間を封鎖、一點にまで凝。

當然、ガラクタすら殘らない。

範囲にもよるが、力ユニットの消費が目に見えてある。

これまで二回しか使っていない。

不なので使う機會がない。

何よりも戦っているという実が、ない！

當然だがお気にりの兵裝は高周波ブレードだった。

ただこれにも不満がある。

斬れ過ぎる。

それに刃が短い。

ああ、最後の手段とも言える兵裝もあったな。

それは力ユニットそのもの。

通常は安全裝置が働いていて、中の反質が何かと接する事はない。

だがオレは試行錯誤の上、細工を施した。

反質が対消滅する、その現象を利用しない手はない。

手榴弾や地雷のように使える。

そう思ったものだが・・・

全然、違いました。

ロボット兵団の駐留基地で試したけど、大きめのクレーターが出來たし。

いや、地殻を破壊したかのような・・・

停滯フィールドが無かったらオレの義も消滅していただろう。

以降、この細工を行うに際してはより慎重になった。

力ユニットの反質をもっと小さくするようにしたのだ。

反質上限の１パーセント以下に調整した力ユニットは三つ、攜行してあった。

これ一つで都市を壊滅させられるだろう。

まあその意味は既に無いのだが・・・

多分、現在の地球上にまともな機能を維持した都市は皆無。

あるとしたら？

それは敵だ。

地球をこんな有様にした連中がいる筈。

出來れば高周波ブレードだけでで斬りにしたいが・・・

逃がしていい訳でもないしな。

用意はしておくべきだろう。

チェックを続ける。

報収集だ。

兵裝以上にこれが重要。

オレの義、その頭部と郭は敵と認識されている筈。

だからガラクタから拾った敵味方識別コードでネットに繋ぐ。

そう、ネットは健在だ。

ロボット兵団の運用にも必要だからだ。

全てスタンドアローンで運用するレベルに達していないのは幸運だろう。

だからオレもまた、健在でいられる。

オレはここ數日、南へと向かっていた。

北米大陸から、南米へ。

運営が何かを建設しているからだ。

かつて千島列島にあったと思われる運営の拠點は既にない。

アラスカから海を渡り、実際に確かめた。

その跡地を丹念に調べた結果、どうやら運営は移し続けているらしい。

何を使って移しているのかは不明。

ただ、元運営拠點の規模から見て船である公算は高い。

これから向かう場所はどうだろう？

運営がそこで拠點を建設している可能は捨てきれない。

そうでない可能も高い。

分からない。

分からないから、確かめる。

それだけだ。

問題は？

大いにある。

メキシコを抜けた先、パナマ周辺に展開する敵戦力だ。

敵味方識別コードの數が半端じゃない。

地形的に見ても難所なのは確実。

・・・

さて、どう攻略しようか？

期待は大きい。

可能なら格闘戦も楽しみたい所だが。

最近は人型ロボットの比率が低くなり続けている。

要塞に至っては蜘蛛型や蛇型がメインだ。

地上戦力も戦車が多過ぎて面白くない。

実際、兵裝が強力過ぎて分厚い裝甲が意味を為さないのだ。

・・・

どこかでこういう戦場を経験したような？

ゲームの中ではあったけど、近未來兵を相手にした記憶。

得は全く異なるけど、類似點は多い。

その時の経験が今になってオレを生かしているような？

夜が明けた。

報収集を続けよう。

膨大な敵味方識別コードの分布、その集地域を査する。

運営は衛星をそのまま利用している。

位置報は全て、把握可能だった。

但し、その量が膨大。

これらを処理する為に背中には報処理ユニットを二つ、裝備してある。

オレは計算を報処理ユニット任せ、ガラクタ処理に専念する。

使えそうな兵裝がないか確認。

義がアップデートされてないか確認。

そして力ユニットの回収。

頭脳ユニットから敵味方識別コードの吸い出し。

まあ適當な所で切り上げる事も多い。

時間が幾らあっても足りなくなるしな！

ん？

脳に警報。

どうやら位置を察知されたか？

まあこれはいつもの事だ。

最近、敵の初手は遠距離からの狙撃が主だった。

今回もそうだろう。

大抵は反質弾頭を使ってくるが問題ない。

停滯フィールドで防げる。

問題があるとしたら、周辺の被害が甚大になる事だけだ。

そしてここは何もない荒野。

気にしなくていい。

いや、待て。

センサーがじ取る空気の振がおかしい。

異様な低周波。

その原因は、何だ？

考える前にいていた。

振が止まる。

質量共鳴砲だったのかな？

どうやら捕捉されていたらしい。

敵もまた、停滯フィールドと學迷彩を展開しているのだろう。

どう始末しようか？

無論、近接戦闘に持ち込むのだ！

停滯フィールドは強力な防力を誇るがその中に侵されたら無力だ。

相殺するには手間が要るが、オレには気にならない。

地平線に幾つもの土煙が疾っていた。

笑いたくなった。

ではこっちからも仕掛けよう。

義は笑えないのが殘念だ。

脳で歓喜のび聲！

それはきっと、猿聲であるに違いない！

敵味方識別コードを切り替えつつ、電子銃を手にする。

ヒートガン設定のまま、銃口を薙ぐ。

地表が沸騰、凄まじい勢いで煙が生じた。

ただの目眩ましだが、多はセンサーを狂わせる筈。

両腳のホバー機能を全開にして前進。

後退はしない。

ロボットの人工知能なら絶対にしない行だ。

だからこそ効果がある。

『シャァァァァァァ！』

この義の発聲はダメだな。

猿聲を使うと割れたかのようにしか響かない。

これ、もっといいパーツはないのかね？

経験則で知っている。

発聲のモジュールを持つロボットの數は圧倒的にない。

しかもこれまで、アップデートされていない。

最初から期待していなかった。

期待するのは苦戦。

いや、大苦戦だ！

それは今も昔も変わらない。

オレには変えようがなかった。

では存分に楽しもうか。

ここまで接敵を許したのは久し振りだ。

オレの期待を裏切らないでしい。

荒野を征く、オレの進路を邪魔する奴は敵だ！

簡単に止まると思うなよ？

止めたいならより強力な敵を寄越すがいい！