《サモナーさんが行く》1300 蛇足の蛇足13 家族団欒?

「平和ねー」

「はあ」

平和、ですかのう?

儂の目の前に魔神がいる。

その魔神の目の前にキースもいる。

両者は戦っていた。

壯絶な格闘戦を繰り広げていた。

・・・

平和?

ジュナ様にしてみたらそうかもしれない。

魔神の名はハヤト、というそうだ。

魔神にも名前が?

それ以上に驚愕だったのはジュナ様の夫だという事だ!

しかもキースは息子なのだという。

・・・

親子?

ジュナ様、どうかしたんじゃろか?

最初はそう思ったものじゃが。

説明をけても半信半疑じゃった。

ただ今の有様を見ていたら納得する。

・・・確かに親子だ。

何故か、納得してしまった。

ところでオレニュー。

お前さん、観戦しに來たんじゃないじゃろが!

杖で頭を軽く叩く。

同時にゲルタ姉の杖もオレニューの頭を叩く。

実の姉弟、変な所でタイミングが合ってしまう。

「ルグラン! ゲルタ! 痛いぞ!」

「「用件が先じゃ!」」

「むう・・・」

シルビオは見て見ぬふりか。

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ジュナ様が連れて來いと言うから同席させているが・・・

油斷ならない。

同じ立場にありながら我等とは異なる行をとりたがる。

いや、その前提が間違っているのか?

立場は同じでありながら目指すものが違う。

そんな気がする。

「ジュナ様、キースは放っておいていいんですかの?」

「都合いいでしょ?」

「まあそうですが・・・」

キースだけではない。

他のプレイヤーにも関わる。

そして儂等にも無関係ではない。

ジュナ様、ゲルタ、オレニュー、シルビオ、そして儂。

それぞれが別の平行宇宙からこの世界に來た。

いや、儂とゲルタ姉は同じじゃが・・・

共通するのは元の世界は剪定されずに済んだ事。

そしてこのゲーム世界で生き続ける事を選んだ事。

元の世界の本がどうなっているのか、儂は知らない。

一つの人格が分割され、それぞれ意思を持ち、行する、か。

・・・

今でも思う。

謎じゃ。

どうして可能なんじゃろ?

ジュナ様も明確に説明出來ないらしい。

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・・・

まあ、そうじゃろ。

自ら検証は無理のようじゃしな。

ジュナ様の本は既に死んでいるに違いない。

それだけの年數をここで過ごしている。

儂の本だって數十年経過している。

いや、各々の平行世界では時間の経過が異なるらしいが・・・

このゲーム世界とはどうなんじゃろうか?

「また世界が剪定されたと聞きましたが?」

「ええ、ルグラン。だから皆をここに呼んだんだけど」

ジュナ様の足下にはキースの召喚モンスターがいる。

大神だ。

儂等にではなくその大神に言い聞かせるかのようだ。

「但し、その世界からここに接続はなかった」

「は?」

「その世界からは誰も來なかった、と?」

「選定と剪定。前段階が省略された例は私も初めてだわー」

「気付かなかっただけでは?」

「それはないわね」

ジュナ様が斷言する。

それだけの確証があるのだ。

だけは儂等の中でも特別な存在だから。

管理者。

あの黃金に輝く人形は儂も數回、遭遇している。

ただの依代であり管理者そのものではあるまい。

いや更なる上位者がいる。

間違いなく、いる。

傀儡とはよくも言ったものだ!

そんな管理者達の報ソースにジュナ様はアクセス可能だ。

但し、見るだけ。

改竄や消去といった編集は出來ない。

いや、出來るけどしない、と言うべきか?

知られたらマズい存在がいるからだ。

だから見るだけ。

この世界に來たプレイヤー達をそれとなく導く。

それが今の儂等に出來る、唯一の事じゃが・・・

「接続と同時にキースに遭遇したプレイヤー達がおりましたな?」

「ええ。でもその世界とは違うわ。選定が今も続いている」

「ほう。管理者にいいように使われているんですかの?」

「多分、オレニューの予想通りよ」

「世界観が異質に過ぎましたからの。それに特異點が違うようじゃし」

「違う、というよりいなかったみたいだけどねー」

オレニューが急に真面目になっとる!

全く、こ奴は・・・

・・・

特異點、か。

接続された世界から送り込まれる特異點を早急に見つける事。

それが儂等の最優先事項でもある。

特異點の行結果によって世界が一気に剪定される可能が高いからだ。

キースが特異點である事をオレニューが早期に見出せたのは幸運だった。

だが、キースが突っ走り過ぎるのは不運だった。

しかも剪定寸前の狀況に陥っていたらしい。

キースが魔神となる事を承諾していたら?

即時に剪定が進んでいた事だろう。

それにしても恐ろしい話だ。

キースに魔神に勧したのは別世界の存在ではあるが父親か。

家族揃って特異點か?

そうとしか思えない偶然だ。

そもそも、このゲーム世界に接続された場合、特異點と言えば?

あの謎の老人だ。

但し名前は知らない。

儂は一度遭遇したが【識別】が効かなかったからの。

儂が見たその老人は殺し合いをしていた。

相手は自らと同じ姿をした老人。

共に作務姿で得は刀。

両者が浮かべる不気味な笑みが印象的だった。

そして狂騒とも言うべき戦い振り。

それでいてしい獣のように思えたものだ。

「ジュナ様。本題を」

「あら、いけない」

ゲルタ姉はやんわりと先を促す。

我が姉ながら恐ろしい。

多分、一対一で戦えば儂が勝つ。

間違いなく勝つ。

じゃが恐ろしくて戦う気になれない。

「キースの世界は剪定保留扱いだったけど維持が正式に決定したわ」

「朗報ですな」

「うむ」

「でもね、その世界は今や滅亡に向かっているのよねー」

「はあ?」

「朗報か悲報か分からない話よねー」

相変わらずジュナ様は大神をでる手を止めない。

言葉遣いも普段通りだ。

真剣な表だ。

その視線がシルビオを貫く。

「ねえ、シルビオ。貴方はどう思う?」

「どう、とは?」

「羨ましい?」

シルビオの様子が、おかしい。

いや、以前からおかしいとは思っていたのじゃが・・・

「自らの世界が滅びる所を見屆けたい。そう思っているのかしら?」

「・・・ジュナ様なら可能かもしれませんね」

「違うわね。貴方は自らの世界を自らが滅ぼしたいんじゃない?」

何?

どういう事だ?

シルビオを見る。

苦いを口にした、そんな表

ゲルタ姉とオレニューの視線もシルビオに集中する。

共に険しい表

多分、儂も同様じゃろう。

「何故、そう思うので?」

「勘よ!」

ジュナ様は冗談めいた口調のまま。

カマをかけたのじゃろうか?

じゃがシルビオの反応が全てを語っていた。

剪定を免れた自らの世界を、滅ぼす?

何の為に?

「だとしたら、どうなのです?」

「何もしないわよ?」

「信じられませんね」

「貴方の行を制限するつもりはないけど?」

「奴隷のように酷使しておいてですか?」

「あら、そうだっけ?」

ジュナ様も酷い。

からかっているだけに見えてしまう。

但し話の容は深刻じゃな。

シルビオの真意は何じゃ?

「なら私はここで失禮します」

「どうぞ。でもね、管理者の上位の存在に迫れるにも限度があるのよ?」

「・・・」

「管理者の側に付くのは傀儡になるって事、忘れないでねー」

シルビオは無言のままだった。

席を立ち一禮すると姿が消える。

転移したのだ!

「ジュナ様、行かせても良かったので?」

「ええ」

「紐は付いているのでしょうな?」

「外してあるわよ?」

「追えないではないですか!」

「ルグラン。私達は管理者とは違うのよ?」

紐とはシルビオの影の中に潛ませた召喚モンスターの事だ。

多くはジュナ様配下のバンパイヤデューク。

だがオレニューやゲルタ姉の配下にも紐となれる召喚モンスターはいる。

オレニュー、そしてゲルタ姉に視線で問う。

どちらも首を橫に振るだけだった。

「ま、傀儡じゃないけど管理者の力を持つ者はいるけどねー」

「ジュナ様がそうなのでは?」

「私以外にもいるのよねー」

「ほう?」

「狙って得られるようなら貴方達に取らせているわねー」

確かに。

じゃが他にジュナ様のような存在がいる?

だとしたらそれこそ朗報?

「ま、今はちょっと家族団欒を楽しみたいわねー」

「はあ」

家族団欒?

これが?

魔神とキースを見る。

キースが魔神の背後から絞めを極めている。

魔神は平然としているが・・・

ジュナ様には息子をおんぶしている父親の図に見えるらしい。

「勝負の行方はどうですかの?」

「今のキースちゃんじゃまだ無理ねー」

「今の、ですか?」

「まあいいんじゃない? キースちゃんはより強い存在がいた方がいいんだし」

「業が深いですな」

「そのうち名前持ちのドラゴン達にも対戦させてあげたいわねー」

「本気ですか? 勝てませんが・・・」

「それでもよ! ルグランもやってみる?」

本気じゃろうか?

じゃが儂に格闘戦は無理じゃし魔法戦にしかならない。

その場合、儂が勝つ。

間違いなく、勝つ。

オレニューは勿論、勝つじゃろう。

ゲルタ姉は拮抗するように思う。

いや呪符を使えば圧倒するかもしれん。

ジュナ様の場合は論ずるに値しない。

魔神の強さはどれ程であるのだろうか?

多分、名前持ちドラゴンですら単獨では勝てない。

ジュナ様でも難儀するじゃろうな。

・・・

まあこの両者が戦う所は想像できないのじゃが。

どんな夫婦喧嘩になるんじゃろ?

「平和ねー」

「とてもそうは思えませんが」

「反抗期だと思えばいいのよ!」

気の毒に。

キースも大変な家族を持ったものだ。

で、そのキースを見る。

魔神に抑え込まれてジタバタしていた。

・・・

平和、なのじゃろうか?

多分、そうなんじゃろう。

魔神の満足そうな表を見てるとそんな気がしてきた。

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