《サモナーさんが行く》1319 蛇足の蛇足28 レゾンテートル

オレの名はアイソトープ。

その由來は・・・同位

意味は・・・オレの頭では理解出來ない。

ただ確かなことがある。

オレはかつてマスターの手を大いに煩わせた。

記憶は曖昧だが、確かに煩わせた筈だ。

魔竜になりかけたのだと後で知った。

オレを救うためにマスターは奔走したのだと思う。

・・・

そしてオレを救ったのは最長老様であった。

今のオレは魔竜ではない。

だがいつ魔竜となっても不思議じゃない。

最長老様の処置により安定してはいるが魔竜になる可能がある。

そのトリガーはもう分かっている。

だ。

を喰らい過ぎてはいけない。

自らにそう枷を嵌めた。

この點に関してはメジアンがいい手本になった。

あいつはオレの後輩ではあるが見習うべき存在だ。

だから奴に頼んだ。

オレが暴走する前に止めてくれと。

もし魔竜になるようなことになったら・・・

いや、そうなることはあるまい。

オレにはマスターがいる。

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そして仲間がいる。

理由はそれだけで十分。

勿論、自重するのは當然。

・・・たまに海魔の島で羽目を外しそうになるけどな!

あそこは危険だ。

んな意味で、危険だ。

要するにオレは飽食に溺れた罪を背負った訳だ。

そこから逃げるつもりはない。

恐れねばならないのはオレ自

確かにオレ自だ。

同時に恐れてはならない。

魔竜、か。

・・・

オレが普段見ている魔竜なんだが、ああはなりたくない。

いや、雲母竜殿や琥珀竜殿といった魔竜は確かに恐るべき存在だ。

オレなど片手間でも圧倒する力量がある。

・・・

最近の様子はどうか?

金紅竜様や柘榴竜様、黒曜竜様といった面々と遊んでおられる。

アレを遊んでいる、と言うのはどうかと思うが遊んでいるのだと思う。

周辺の被害が甚大になることも多いが・・・

最長老様に言わせれば仲がいいらしい。

・・・アレで?

最初はそう思ったが最近は納得している。

日常化してしまったからな・・・

それに魔竜となってもあの程度で済むのだ。

恐れる程じゃない、そう思えた。

・・・いや、違うな。

の権化となって生きる淺ましさを見せつけられた。

本當にああはなりたくない。

そういう意味では金紅竜様達も同様なのだが・・・

つまり魔竜と化してもどうにかなるらしい。

そう考えるようになってからは気分が楽になった。

ついでにオレの食い気も収まったようだ。

程々に喰うと十分に満足するようになっていた。

・・・

パンタナール程には食が細くなってはいない。

ただ、食に執著しなくなったのは確かだ。

今はこれで十分だろう。

では、行こうか。

いつもの散歩だ。

塔の上にいるメジアンに合図を送ると飛び立った。

召魔の森の門番、酒船の頭上を何度か旋回する。

そこから徐々に高度を上げていった。

・・・上へ。

もっと上へ!

オレが目指す先にあるものは何か?

そこには何もなかった。

宇宙だからだ!

眼下に遠く地表が見える。

雲の切れ目から召魔の森が見えた。

點にしか見えないが、オレには知出來る。

今は夕刻、もうしで夜の領域にるだろう。

召魔の森、そして海魔の島の番人はその行範囲に制限がある。

一定の距離を離れることが出來ない。

その筈だ。

だが真上であれば制限がなかった。

だからどこまで行けるのか、試してみたんだが・・・

試すうちに宇宙まで到達していた。

仲間もここまで到達出來ていない。

オレだけだった。

・・・多分、名前持ちのドラゴン達なら大丈夫?

最長老様や転生煙晶竜様なら大丈夫だろうけど。

いや、ここまで來る理由がないか・・・

宇宙。

何もない空間だった。

となる魔はいない。

仲間も來ない。

退屈かって?

そうではなかった。

地表の様子を見るのは楽しかった。

そしてオレは自らが矮小な存在であることを思い知らされる。

魔竜がどうこうと悩んでいた過去が洗い流されるようだった。

・・・そして漆黒の宇宙空間、その向こう側からの聲に耳を傾けると?

今日も聞こえる。

何も聞こえないようで、聞こえていた。

誰かがオレを呼んでいる!

オレの名はアイソトープ。

その種族はアポカリプスドラゴン。

アポカリプスドラゴンはオレ以外に見たことがない。

最長老様によれば過去に何頭も存在したというが・・・

彼等はいずこかへと消えたそうだ。

・・・

何となく分かる気がする。

宇宙の果てから聞こえる、この聲に応じて行ってしまった。

誰が、なんて多分関係ない。

呼ばれたから行ってみた。

多分、そうなのだろう。

オレだから分かる。

今はこの聲に応じる訳にいかない。

オレにはマスターがいる。

そして仲間がいる。

孤獨であったならオレも行っていたのだろう。

でもそうじゃなかった。

それは僥倖としか言い様がない。

ここには確かめる為に來ているようなものだった。

何を?

それはオレの存在意義を確かめる為だ。

そしてそれはもう果たされていた。

ここにはもう用はない。

オレは一気に高度を下げていった。

僅かにある重力にを任せる覚は好きだった。

何しろ空気抵抗がない。

・・・おっと、そろそろ時空結界を形しとこう。

ここに來るのはいいんだが帰りがし手間なのが難點だった。

名前持ちのドラゴン達のように転移門を使えば楽な筈なんだけどね・・・

今のオレはまだ習得出來ていない。

いずれ覚える、とは最長老様の言葉だ。

それがいつになるのか、楽しみだった。

サモナーさんが行くⅥ、9月25日発売です。

間が空きましたが宜しくお願いします。

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