《サモナーさんが行く》1324 反撃編3

『第二遊撃軍、敵陣の中央を突破ッ!』

「ジュナ・ブラボーへ! 敵右翼集団の後背に回れッ! 再突撃は可能か?」

『大丈夫よーッ!』

「では再突撃を! タンゴ、第五軍は後退! ズール、替で第七軍は前進!』

『『ラジャー!』』

「フィーナ・デルタ、左に転進! 敵右翼を半包囲せよ!」

『了解!』

中央にゆっくりと巨大な楔が打ち込まれていた。

第二遊撃軍の後を追う形で第一軍から第三軍が侵攻し続けている。

そこから第三軍が分かれて分斷した敵右翼集団に襲いかかった。

敵軍の戦力は上空から追加される心配はないだろう。

序盤に投されたメルカバーは第八軍により壊滅狀態にあった。

テスカトリポカはまだ二、殘っているが支援戦力が不足している。

ドラゴン達のいい的になっていた。

敵右翼がいる地表は一面真っ黒で鏡面は全て消えている。

地表から追加される戦力もない筈だ。

敵左翼側は攻勢に出ていたけど第四軍は防戦に専念、混は起きていない。

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戦力を用いて前進と後退を繰り返し完全に包囲させていなかった。

私の目論見は単純、敵右翼を先に潰す。

地表が黒いまま、という事は黃金人形もいないと考えていい。

戦況は圧倒的に優位だ。

だが、敵右翼も放置するには危険な戦力規模をまだ維持している。

早めに潰す。

そうすべき狀況が眼下に展開し始めていた。

本部があった地表は小さな鏡面の円が多數、出現していたけど・・・

今や巨大な一つの円になっている。

そこから浮かび上がる白い影。

スローンだわ!

「天使が來るわよ! キース・ケベック、確認出來る?」

『スローン中央にミカエルを確認! 追加でまだスローンが來るぞ!』

「こっちでも確認したわ!」

『護衛役はサンダルフォンにメタトロン、それにマスティマ多數!』

「キース・アルファ、現狀報告を!」

『地表の黃金人形は三確認! 護衛はアダムカドモンにマスティマ! それに・・・』

「それに?」

『見逃せない奴がいた!』

報告が途絶えた。

気になる。

キースの口調が急変していた。

その聲に混じっていたは何なのだろう?

殺意?

いえ、狂気?

どこか嬉しそうなじもしたけど・・・

いずれにしても嫌な予がした。

見逃せない奴って、相手は誰なの?

心配だった。

でも総指揮は継続せねばならない。

『各スローン中央にラファエル、ガブリエル、ザドキエルを確認!』

「了解! キース・ケベック、第三遊撃軍は任せます!」

『承知した! キララ、コーパル、手近な所から潰す! 続け!』

『『ラジャッ!』』

多分、この勢いなら有名な天使も勢揃いかしらね?

が多くて結構、と言いたいけど・・・

確認出來た黃金人形がまだ三だけ?

それが不安だった。

もう一人のオレ、キース・ブラボーと視線が合う。

考えている事は同じだろうな。

の黃金人形がいた。

後方で控えていてこうとしない。

こいつは最優先で封印し捕獲せねばならない相手だ。

だが、その護衛戦力が問題だった。

アダムカドモン?

マスティマ?

その數は確かに多いがそれは問題じゃなかった。

爺さんがいた。

アダムカドモンの群れを率いているようにも見える。

黃金人形の護衛でもしているのか?

いや、そうじゃないな。

何故、いる?

だがそんな疑問など些末なものだ。

殺す。

あんたは、殺す。

殺さねばならない!

周囲に殺意が充満していた。

発しているのは、オレ。

もう一人のオレ、キース・ブラボー。

父である魔神ハヤト・アルファ。

殺意が暴風となって渦巻いていた。

それだけじゃない。

オレの召喚モンスター達も同様だった。

殺意が、そして狂気が伝染していた。

「バウッ!」

ヴォルフが短く吠える!

これに護鬼、戦鬼、獅子吼、テロメア、雷文が応じた。

「使え!」

護鬼に束ねたグレイプニルを投げる。

黃金人形の捕縛には必要だろう。

そして剣豪の英霊達がヴォルフの後に続く。

オレの視線をけ護法魔王尊が手にした刀を掲げて応じた。

・・・今日は稽古をする時間は殘らないな。

頭の片隅でそんな事を考えていた。

戦いはもう始まっているが、けない。

爺さんを囲むアダムカドモン達がかない。

何故、こうとしない?

オレ、それにもう一人のオレも、魔神もかない。

三人が三人とも爺さんを狙っている。

だからこそけない。

同士で爭いが始まりそうでけなかった。

アダムカドモンの能力は封じられている。

もう一人のオレが太公釣魚の英霊を召喚しているからだ。

最も消耗していないのは父である魔神ハヤトになる。

爺さんを仕留めることだけを念頭に置くなら父が適任なのは分かっていた。

実力順でもそうなる。

否、爺さんを殺すだけなら攻撃呪文を立て続けに叩き込めばいい。

でも出來ない。

この手で殺さねば気が済まない相手だった。

・・・いっそ三人がかりで殺すか?

いや、それはそれで恨を殘す。

出來ない。

どうしても出來なかった。

だからけなかった。

「・・・そうか、別世界の儂の息子に孫達が相手か」

「「「・・・」」」

「全員を同時に相手するのはちと面倒じゃな・・・」

「「「・・・」」」

「それに儂好みの相手が他におるようじゃしのう・・・」

爺さんの視線の先には何が?

護法魔王尊がいた。

マスティマの群れの中、舞っているかのように戦っていた。

そうか。

爺さん、オレ達は眼中にないのか。

中から何かが噴き出している気がする。

勿論、汗なんかじゃない。

もう一人のオレも、そして魔神ハヤトも怒気を発している。

それは當然のように狂気をも含んでいた。

「我等では不足か?」

「不足はせんじゃろうがの。不満はある」

「何?」

「儂が楽しめるかどうかじゃよ。もっと面白い相手がおるからの」

爺さんは刀を抜いていない。

抜こうともせず、傍らにいたアダムカドモンの肩を軽く叩く。

・・・何だ?

アダムカドモンの姿が変化した。

その姿は・・・

爺さん、だと?

「今は代理に任せておこうか」

「「「?!」」」

オレ達は同時にいた。

どうやら爺さんはオレ達の誰とも戦う気がない。

代理、というのがアダムカドモンなのは明白。

但しその姿は爺さんそのもの。

アダムカドモンもレプリカント同様の能力があるのか?

分からない。

分からないが、アダムカドモンが次々と爺さんの姿に変化している。

各々が刀を攜えていて、臨戦態勢。

數は・・・いや、今は目の前にいる爺さんを仕留めに行け!

「「「チェァァァァァァァァァァァァァァーーーッ!」」」

猿聲が重なる。

同時にオレ達の中の狂気が解放された!

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