《[完結しました!] 僕は、お父さんだから(書籍名:伝子コンプレックス)》[1-07]優しい人
◇
――とても優しい人
はじめて會った時からそうじた。でも実際はもっともっと優しい人だったの。
布津野に初めて會ったのは、ロクと怖い人に追いかけられていた時。公園から見たことも無いくらい深いをした人がいたのを見つけた時。
人にはがある。そのはや格によって変わってしまう。優しい人のは特に好き、布津野は吸い込まれるような深緑。まるで、油絵を沢山混ぜて、偶然できあがった抹茶。綺麗じゃないけど、素樸で落ち著く。ずぅっと見ていたくなる。
でも、このは他の人には見えないらしい。が見えないのにどうやって人のことが分かるのだろう。それはとても難しいと私は思うのだけど……。ロクは「見えないから、話すのさ」といった。でも、その後「でも上手くいかない事が多いな」と表は変えなかったけど、し悔しそうなを見せた。
『人の可能』――研究者たちは私のことをそう呼ぶ。
ロクが言うには、普通の人間同士では相互に理解しあえることは非常に難しいらしい。長い時間をかけてようやく出來るかどうかで、それでも上手くいかないことが多いらしい。
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これはスゴイことなんだ、とロクは言う。
「有史以來、人類が大小様々に悩んできた問題は互いの相互不理解がその大きな原因であることは否定し難く、それを見るだけで出來るという事は……」
私には、そんな難しいことを考えられるロクの方がずっとスゴイと思う。
私はんな人のを見て來た。研究者の人たちも私にいろんな人間のを見てしいといってきた。良い人だと有名な人のも沢山見て來た。綺麗なもそうじゃないも沢山あった。
でも、布津野だけは特別だった。
布津野の抹茶が黒になったのは、港で怖い警に囲まれたとき。
それは吸い込まれるような黒。全ての怖いものを塗りつぶして、私を包み込んでくれる。
「キャッ、イヤ!」
私は突然後ろから、大人に押し倒されて、上から押付けられた。
怖かった。思いっきりコンクリートに押し付けられて頭からが出たけど、痛みよりも恐怖ばかりでしょうがなかった。
周りの大人たちはみんな怒っていて、私たちの事を嫌っていた。
大人たちのは薄くてけて見えた。嫌な事を考えている人はみんなそう。が無くなっていってしまう。それはもう、人じゃないの。他人のことを人として考えてない人はみんなが無くなってしまう。
「ナナを離せ、撃つぞ!」
「撃てよ、さっきから、そう言ってんだろうがよ!」
特に怖かったのが、さっきから大聲で怒鳴っている人。もう完全にが無くなって、明になっていた。ロクを蹴飛ばして、毆りつけた。
いや。ロクにひどいことしないで。
痛い、
怖い、
やめて……お願い。神様。
目をつぶった。まわりの怖い、のない世界を見たくなかった。毆られるロクも、殺されそうな布津野も、見たくなかった。
パンッ
その音に驚いて目を開けた。
世界は漆黒に染まっていた。
目の前には背中があった。黒金のように堅く、冷たい黒い背中。
優しい抹茶を、深く濃く重ねて、漆黒に変えた布津野の。
怖い人が倒れて、漆黒がこっちに駆けて來た。
私を押さえつけていた人が、漆黒に攫われた。自由になった私がそっちを見ると、布津野がその人を倒していた。
布津野はそのまま、のない人たちの中に飛び込むと、次々と倒していった。
まるで、黒い獣が群衆を蹴散らすように。
まるで、神様が私の助けを聞きれて遣わした獣のように。
しなやかでしい黒い獣。
目が離せなかった。
ロクが私に覆いかぶさって、
ドン、ドン、ドン
と大きな音と眩しいが見えた。あまりにも眩しくて、ロクが目を塞いでくれなかったら目が見えなくなってしまったと思う。
気が付いたら、嫌な人たちはみんな倒されていて、布津野が真ん中で立っていた。
布津野に向かって走りよる。
「良かった、無事だった」
さっきので目が見えないようで、布津野はこっちを半分閉じた目で振り返った。途端に黒が薄まっていつもの抹茶に戻った。マリモみたいなユラユラとした。
「良かった、良かった」
布津野にギュッと抱きしめられた。布津野のがのように打ち寄せてきて、それがにしみ込むようで、暖かかった。
――この人は優しい人。多分、世界で一番の優しい人。
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