《[完結しました!] 僕は、お父さんだから(書籍名:伝子コンプレックス)》[4a-17]小男

「やっぱり、有能すぎましたね」

海面からひょっこりと顔を出したニィは、向こうに行ってしまった揚陸艇を見て言った。

「有能すぎる、って?」と、これも顔を出した布津野が問いかける。

「ええ。もちろんですが、皮ですよ」

「それは気がついていたけど、どういう事?」

「相手が布津野さんみたいな愚か者だったら、こっちが負けてしまったかも知れない、って事です」

「馬鹿なのに?」

「俺、馬鹿の相手は苦手なんですよ」

ニィは笑って布津野のほうを、じっ、と見た。

つまり自分のことを馬鹿にしているのだろう、と布津野はすぐに見當がつく。なるほど、ニィ君は自分のことを苦手に思っているのか。

「それは、行が読めないから?」

「それもありますね」

「他には」

「例えば貴方みたいな愚か者だったら引き分けでもいいや、などと思っちゃうでしょ?」

「ニィ君が相手だったら、負けてもしょうがないよ」

「そうそう、そんなじで最善を目指さないものだから、まっすぐに突っ込んでくる」

「うん、まあ、そうかも……」

布津野は頭をひねった。

もし自分だったらまっすぐ突っ込むだろうか? それ以前に、船をまっすぐかすことが出來ない可能すらある。先ほどの銃撃戦の最中は、海中でじっと我慢していたが、あんなに沢山の人を整然とかすことも自分には出來ない。

「そうなれば、いきなり戦です。數は圧倒的に不利ですからね」

「でも、そうなれば榊さんたちが、」

「榊の位置からここは2.5キロもある。この距離で狙撃できる人間はほんの一握りです。いくら榊たちでも、船が停止していて相手が狹い甲板に集していなければ無理ですよ」

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「……なのに、相手は突っ込まずにあそこまで迂回しちゃった」

「そうです」

ニィはくるくると回した指を揚陸艇のほうへと向けて、布津野の視線をそちらに導した。そこには揚陸艇の防壁が降りてそれを橋にして砂浜に降り立つ兵士たちがいた。ぞろぞろ、と押し出されるように兵士は船から降り立って林のほうに駆け込んでいく。

「ああやって、林の中から徐々にこちらに向かって攻め寄せるつもりなのでしょう。狀況的に正しい選択です。相手の士を部下にしたいくらいです」

「……もし、相手がまっすぐ突っ込んできたらどうしてたの?」

「現実として、相手は馬鹿じゃありませんでした」

「いいかげんだな〜」

布津野がそうこぼすとニィは、むっ、と顔をしかめてみせた。

「いいかげん、とは言いますね。貴方に言っても理解できないから言わないだけですよ」

「ええ〜」

布津野は聲をしめらせて疑いの目を向けてみた。

ニィはその様子に、はぁ、とため息をつく。

「しょうがありませんね。じゃあ、貴方が理解できないことを承知の上で、無駄にちゃんとした説明をしてあげましょう」

「ほう」

「いいですか。相手はGOAの戦力分析のためにこの模擬戦を設定したのです。それもアメリカの最鋭の海兵隊ですよ。であれば、一流の人材が優先的にアテンドされる可能が高い。敗因が自軍の不手際だった、なんてことになればGOAの戦分析にもならないのです。よって、相手の指揮には貴方のような愚か者ではないことが期待できるのです。

さらに、アメリカ軍は兵士の損耗を極端に嫌う傾向にあります。これはその短い歴史の長い期間、自國が優位な戦爭しか経験してこなかったのが原因です。兵士の損耗を前提とするような戦経験が圧倒的に不足しているのです。それゆえ、損耗の危険の高い突撃を彼らは嫌う傾向にあります。

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それに、いいですか、どうせ突っ込まれても勝つのは俺たちなのです」

ニィは、ぴっ、と人差し指をたてて布津野に向かってつきつけた。

「そうなのかい」

「もちろんです」

「どうやって」

「それは、すぐに分かりますよ」

ニィは歯を見せて笑うと指を、くい、と曲げて揚陸艇のほうに向けた。

「だって、今からあの船がこちらに突っ込んできますから、ね」

「総員、衝撃に備え」

「「アイ、アイ、サー!」」

ロジャース中佐はそう吠えて自ら甲板に飛び降りた。

そのまま防壁の隅にうずくまるようにして、アサルトライフルを抱え込む。その先端には模擬戦用のコンバットナイフを取り付けてある。本來は鋭利な刃があるべき部分にはナイフ狀の接センサーで覆われていた。周囲を見渡すと同じようにアサルトライフルにナイフを取り付けた歴戦の隊員たちが數名いた。やれ、銃剣(ベイヨネット)なんざ訓練以外で取り付けたのは初めてだ。

船の針路は陣地にめがけて直進するように設定しておいた。林の中を進軍している味方がこの地點に到著する前に陣を破壊しなければならない。防壁の手すりを摑んで、をぴたりと寄せ付ける。

うなり上がるエンジン音に、破れる波の音。

ガンッ、と鈍い衝突音が船頭から響いて、がくん、と船が揺らぐ。慣を前に押しやって、ふわり、と浮く。から落ちて腰に響いた。ちくしょう。俺はもう歳だ。前線はもう引退かもしれん。

「前の防護壁、開け!」

「サー!」

「急げ! 的の手榴弾(グレネード)が來るぞ。來たら投げ返せ!」

「サー!」

「総員、突撃準備!」

ガコッ、と前方の防壁が落ちる。もしこれが模擬戦ではなくノルマンディーだったら、目の前には真っ赤なで染まった地獄のビーチが広がっていて、機関銃のが飛び込んできたはずだ。そうなれば、俺たちはミキサーにかけられたトマトペーストみたいに、船の中にパック詰めにされたに違いない。

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しかし、目の前のビーチは折れた丸太とか、破れた土嚢などがごちゃごちゃとしていたが、地獄ではなかった。発砲音もビープ音も手榴弾もない。想定した敵からの攻撃は何一つない。俺たちは奴らの裏をかいたのだ。

「突(チャー)ッ、」

ロジャース中佐の號令はそこで止まった。

開いた前方の甲板に「よっこらしょ」という、ずいぶんとのんびりした聲を発しながら、海中から甲板の上に乗り上がろうとしている男が現れたからだ。

それは全員の意表をついた。

その男はまるで庭のプールサイドによじ登ろうと必死になっているみたいに、のっそりと甲板の上に乗り上げていた。まるでここがバカンスのような平和なじを漂わせている。全員が一瞬、こんなところに民間人が紛れ込んだのか、と疑ってしまった。

その男はようやく甲板の上に立った。二三歩はよろめいて、海水をたっぷり含んだ戦闘服をぶかぶかにしていた。こちらのほうを見て、まるで道に迷った観客のような曖昧な表を浮かべている。背の小さな男で中國人(チャイニーズ)のような顔をしている。おかしい、日本人なら形に作られているはずだ。

「布津野さん」

その小男の後ろから、海中から一足で飛び上がってそのまま甲板に著地した影が現れた。その恐ろしい腳力に驚愕するまえに、その異様に整った顔と白い髪とに目を奪われる。

あの亡霊(ファントム)だ、と中佐は気がついた。

「武、忘れてますよ」

亡霊は手をばして男にナイフと拳銃を差し出した。

その仕草にはまるで騎士が王に捧げるようなうやうやしさがある。男は差し出された武に顔をしかめて、口を下にカーブさせたが、やがてナイフだけを片手にとって一歩前にでた。

その一歩がまるで合図だったかのように、時がき出した。

先にいたのは先頭で待機していた隊員だった。

銃口をしたにして構えていたアサルトライフルを、テコを押し下げるようにして銃口を跳ね上げて、パン、と発砲した。

パン、だ。

突撃前に連(フル)に設定していたはずのアサルトから、パン、と単発しか発されなかった。

男はすでに隊員の側面にり込んでいた。そのまま空の手でアサルトの銃を上から摑んでひねりあげて、まるでチキンの手羽をもぎ取るように、奪い取ってしまった。

唖然とした隊員の首筋を、やさしく男のナイフがなでる。

ビープ音。

ビービー、とうるさい音が波の音に混じる。向こうから、くすくす、と笑う白い年の聲も聞こえた。

気がついた時には、男は二歩目を踏んで次の隊員の目の前に立っていた。まるで、男が目の前に來て初めてくことができるルールなのかのように、ようやくその隊員もきだした。

両手で抱えたアサルトを持ち替えて、訓練通りに銃剣の構えをとる。教に教え込まれたものだ。さっと前にでて真っ直ぐ突け、と。じゃなきゃ、俺がお前のにぶっさすぞ、と。

スウィング気味に突き上げられる銃剣。

男は逆手にもったナイフをかぎ爪のようにして、銃剣を下からすくい上げた。ひょい、ってじだ。まるで赤ん坊のゆりかごを揺するような軽いいなし。それだけで隊員は足下に、すてん、と転んだ。

そして、転んで起き上がった時にはビープ音が鳴り響いていた。

隊員は何をされたか分からず、きょとん、と目を丸くしている。まるで生まれたての赤ん坊がはじめて、いないいないばぁ、をされて反応に困っているように。

ここに來てようやく、そこにいる全員が目の前の現象が現実らしいことに気がついた。

何が起こっているのかはまだ理解できていない。しかし、目の前にいる男は敵だ。すでに二人やられている。あっという間だった。ナイフ一本だけなのに。

口を開いたのはロジャース中佐だった。

「お前はGOAか?」

布津野はその英語を理解出來なかった。

海水に浸かったら壊れるとおもって、翻訳機はバックにしまい込んでしまったのだ。さて、なんと答えたら良いのだろうか? それとも、さっさと全部倒してしまってからのほうが良いのか?

「ちがうぞ(ノー)」と、ニィの聲が後ろから答える。

彼は背後から布津野に近寄った。ロジャース中佐は不思議な気持ちになった。この亡霊は英語をしゃべるのだ。

「彼はタダヒト・フツノだ。GOAを一人で壊滅させた男」

「……なんだと」

布津野は周りの隊員が気ばむのを見て、ニィがまた適當なことを言っている事を直した。自分が英語が分からないことを良いことに、適當なことを言って遊んでいるのだろう。これは早く終わらせたほうが良さそうだ。

「布津野さん」

ニィは急に日本語に切り替えて橫に並ぶ。橫目だけでこちらを見て問いかけてくる。

「ご一緒しても良いですか?」

「ああ、もちろんだけど。……危ないよ」

くはっ、とニィは破顔した。

「では、お先に」

ニィは斜め前に飛び上がった。まるで貓のようなしなやかさで、一足で防壁の飛びつくと、組み変えた足で壁面を蹴って駆け上がる。そのまま中空に飛び出して、太を背にする。

それを見上げた隊員たちは目をくらました。そして、ニィの拳銃から銃聲が二発分上がり、ビープ音が二つ鳴り響いた。

ニィはそのまま反対の防壁の縁の上に著地すると、また別の方向に飛び上がる。その度に銃聲をまき散らしてビービーと音を重ねていく。

辺りは騒然と沸いた。

布津野はニィの曲蕓じみたのこなしに舌を巻いた。壁とは蹴って登れるものだったか、と初めて知った。生徒たちの育は何年も見てきたが、あんな事ができる子は誰一人いない。あれはニィ君だからこそなのだろう。だとすると、ロクも出來たりするのかな。

そんな思いを巡らしていると、前方から三人同時に襲いかかってきた。

左側からの撃を直で躱しつつ、正面の銃剣を手で払いながら脇下から模造のナイフを突きおした。

すぐに致命傷をしらせるビープ音がなる。

本當に良くできた模擬戦だ、と布津野は心した。脇下に流れる脈は心臓に近く、ここを突き込まれると大量出で死ぬ。そういった人間の急所もちゃんと知して反応するのだ。素直に心してしまった。

次に、右側の相手が飛びかかってくるのが見えた。

よい判斷だな、と布津野は思った。この狹い船での戦だ。相手が數なら一人が決死の覚悟で飛びついてきを止めてしまうのは有効だ。

布津野はあえて、相手に背を見せて組みつかせた。

それを見た周囲の敵が銃口を前にして、わっ、とこちらに寄る。

その一瞬を見極めて、布津野はまるで上著をぐように敵の組み付きをはがし、すぅ、とを真下に沈ませた。

組み付いていた敵は支えを失って前によろける。足下に沈み込んだ布津野はよろめいた敵の足を腕で跳ね上げて、迫り來る敵に向かってに投げつける。

殺到してきた敵が投げつけられた仲間を抱え込むようにして転がる。何人かがそれに足を引っかけて重なるようにしてまた転ぶ。

その重なったを布津野は飛び越えて、さらに奧に踏み込んだ。

さらに敵の中央にり、それを予期していなかった敵のきが止まる。布津野はナイフを左右にふるって、相手の手首と首筋をなでた。

また、ビープ音。

戦に混戦して、線が絡まる。

そこからはもう消化試合のようなものだった。

布津野は敵を盾にしたり、投げたりして相手の連攜を崩しながら、一人一人をナイフで優しくでていった。またニィも人間とは思えないそののこなしで相手を翻弄しつつ、その銃撃でビープを重ねていく。

終わってしまえば、あっという間。

十數名いた隊員は全員がビープ音を鳴り響かせて呆然と立ち盡くしたり、崩れ落ちたりしている。

最後に殘った一人はロジャース中佐だけだった。

彼はアサルトを肩に據えて銃剣を布津野に向けていた。その皺深い目は、それでも闘志を失ってはいなかった。

布津野は改めて足場を払って殘った中佐を見る。

おやっ、と思った。

この人は出來ているな、と引っかかることがあった。まっすぐにびた背筋や、こちらに向ける気の充実、ゆるやかに落としている重心。何よりも銃を構えているのに、それに頼るところがない。彼には染みついているのだ、握りしめたそれが道であり、依存すべきものではないことを。

「指揮が殘りましたか」とニィが布津野の橫に飛び降りた。

「指揮?」

「なんかそんな雰囲気でしょ」

あいかわらず、いいかげんだな〜。

と布津野は思ったが、じっ、と前から目を離さなかった。目の前の指揮らしき男は眉をよせてこちらに問いかけてきた。

「まだだ」と英語で言う。

「まだ?」

ニィは呆れたように顎をあげた。

「やれやれ、アメリカ人はハリウッドの見過ぎですね。ここからの形逆転はありえませんよ」

「まだ、林を侵攻中の部隊がいる」

はっ、とニィは鼻で笑い飛ばした。

「貴方はもっとも愚かな選択をした。合衆國は合衆國らしく、無駄な火力を浴びせとけば良かったものを、苦し紛れに林の中に侵した。見晴らしが悪く連攜が難しい地形にい込まれた」

「……」

「つまり、この俺たち相手に、貴方は近接遭遇戦を挑んだ、ということです」

ニィは自分の肩につけてある無線機を、トントン、と指で叩いて、中佐に指図をした。

「なんだ?」と中佐は顔をしかめる。

「確認したらいい、別働隊の狀況を」

中佐はうなりながらも、ゆっくりと自分の無線機を取り出してそれを口元にあてる。

「こちら、ロジャース」

「こ、こちら、第一分隊……。申し訳ありません。我が分隊は全滅です」

「なんだと! 他の分隊は?」

「第二、五も全滅です」

「馬鹿な。敵への損害は?」

「……確認できていません」

くっくっ、とニィはわざとらしく笑いをらす。

「愚かなことだ。お前は俺たちがもっとも得意な戦局を選んだ」

「……」

「あのタダヒト・フツノが育て上げた部隊に、近接格闘戦を挑んだ。」

そう言ってニィは、ちらり、と布津野のほうを見た。

一方の布津野は、じっ、としていた。何やら大切な話をしている雰囲気だ。英語が分からないのでさっぱりだ。これ、攻撃しても良いのだろうか? もし攻撃したら、後からニィ君に「空気を読めない愚か者」と怒られてしまいそうだけど……。

しかし、まだ話は続いているらしい。目の前の兵士さんはニィ君に問いかける。

「特殊部隊、か?」

「ああ。そして、お前の目の前に立っているのがその指揮だ」

中佐はあらためて布津野を見た。急に注目されて布津野は戸った。もう、再開してもいいの?

「終わった後に國防総省から問い合わせてみるがいい。日本の軍事関係者にタダヒト・フツノの名を知らぬものはいない」

ニィは今度は日本語で布津野に言う。

「さぁ、布津野さん。お待たせしました」

「あ、終わった?」

「ええ。もういいですから、早くやっつけちゃってください」

「簡単に言うね」

「言うのは簡単ですからね」

ニィはそれだけ言うと一歩後ろに下がって、間合いのの中から抜けてしまった。その戦いの場に立っているのは、ロジャース中佐と布津野の二人だけになった。

ニィ君が黙ると、波の音がに染みこんでくるみたいに靜かだ。

布津野はナイフの柄を握り直した。目の前の銃口は、ピタリ、とこちらを睨みつけている。ふと思うことがあった。覚石先生も戦爭に參加された時、このような狀況に陥ったのだろうか、と。

そう思うと、自分のの息と溫度が、すとん、と落ちていくのをじた。見るともなく、目の前の相手をもう一度見た。二人の間には一人分の間合いしかもうない。

その時、

ロジャース中佐の銃口が、すぅ、と橫にそれた。

布津野は降參するのかと思った。しかし、意識の底に沈みこんでいたは備えを解かなかった。それゆえには反応した。

パンッ!

と、火を吹いた銃口の先には背後に控えていたニィがいた。

一瞬の間、沈黙が流れた。

波の音さえも、そこにいる全員に聞こえなくなった。

靜寂。

驚くべき事が起きていた。

ニィの死亡を告げるビープ音は、いくら待っても鳴らなかった。

わずかな煙を吐く銃口と呆然として立ち盡くすニィの線上を、ナイフが遮っていた。布津野の手がびていて、握られたナイフがレーザー線を遮っていたのだ。

「馬鹿な(ジーザス)……」

と、中佐はつぶやいた。

目を思いつくよりも前に、布津野は踏み込んでいた。

中佐は銃剣を突き出そうと引く。

その引き終わりの前手を、布津野は抑えて、突きだそうとした瞬間にをひねり込んだ。

まるでアサルトライフルがシーソーの棒になったような錯覚を中佐はじた。自分よりも重が軽いはずの相手が、シーソーの遠い縁にのって自分を持ち上げる覚。自分のがゆっくりと空に上がって、地面が反転する。

落下する世界。

そして、その男は私を背中から、ゆっくりと優しく甲板に降ろしたのだ。

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