短いですがキリがよかったので。

「すーちゃん、こっちでおはなししよー」

「さんすうおしえてー」

「……すーちゃん、おしっこ」

どうしてこうなった。とりあえず、そこでモジモジしてる子はさっさとトイレに行ってきなさい。もしかしたら赤ちゃん返りだろうか、このままだと教室の床掃除が大変になりそうなので、まとわりついてた他の子をやんわりと離して、先に彼をトイレに連れて行く。

何故こんな狀況になったのか、という原因は薄々とはわかっている。現世での子になった事が理由なのかはわからないが、どうも他の子の世話を焼いてしまう質が強くなっているのだ。

この子みたいにトイレに行きたいのを我慢してる子に気付けばトイレに連れていき、育の授業で転んで怪我した子がいれば保健室まで同行し、算數の授業で足し算引き算がわからない子がいれば教えながら一緒に勉強する。まぁ懐かれるわなー、と今更ながらに自らの行いを反省するが、気がつくと勝手に世話を焼いている自分がいるのだから仕方がない。もしやこれが母なのだろうか、前世で父すらじた事がなかったからわからんが、育ちきって凝り固まったアラフォーの自意識にまで影響を及ぼすとはなんと恐ろしい。

それとは別に『前世でこれだけの子に囲まれてたら』なんてハーレム願が一瞬頭をよぎるが、前世では皆と同じで小學１年生として懸命に頑張ってた俺には、他のクラスメイトを気にかける余裕なんてなかったのだから、こんな狀況になる訳がない。

ちなみに子だけじゃなく男子もたまに寄ってくるのだが、今はまだ１年生なので特に他意もなく可がれる。けれど明らかに自分より長が高かったり格が良い子は本能的な恐怖なのか、ちょっとだけビクリとが震える。うちの父親はスキンシップがない方だから助かっているが、もし人男にいきなり抱っこされたりしたら反的にビンタしてしまうかもしれない。こちらは恐怖からではなく、主に嫌悪が原因で。

現在の自分がである事は理解もしてるし納得もしているけど、だからと言って『はいそうですか』と男だったという前世や自意識を変える事はできないし、異だからと対象を男にする事は簡単にはできない。以前から人柄に惚れ込んで男にも憧れにも似たでドキリとする事があった為、もし現世でもそういう人に出會えた場合は男であってもをする確率はゼロではないかもしれないが、現狀では全く考えられない。可能ゼロだ。

むしろ今はまだに対してドキドキしてしまう事の方が多く、若いママさんにぎゅーっと抱きしめられたりすると、そののらかさに顔が火照ってしまうのだ。もちろんクラスメイトに対してそんな事は思わないけど、１０年後に同じ狀況になったら多分ドキドキしちゃうんだろうなとは思う。いや、そんな狀況にはならないだろうけれども。

そんな事を考えながらもついでなのでトイレを一緒に済ませ、教室に戻ってくる。すると今度はむぅ、と頬を膨らませて『私達不機嫌です』と態度で示すなおとふみかがいた。

「ど、どうしたの、二人とも？」

そのらかそうなほっぺを軽く突ついてみたい衝に一瞬駆られるけれど、そんな事をしたら更に不機嫌になりそうだから自重する。

「だって、さいきんすーちゃん他の子とばっかりはなしてる」

「……わたしたちがいちばんのおともだちなのに」

あ、これ面倒くさいヤツだ。前世からずっと思っているのだが、どうして子はやたらと友達に順番や優劣をつけたがるのだろうか。もちろん俺も前世では親友とそれ以外ぐらいのカテゴリ分けはしていたが、子は不思議なほど厳に順番をつけようとする。

「えっと、そんな事ないよ？」

「學校おわってもあそんでくれないし」

「４ねんせいのひとと、としょかんであってるのをみた」

なんだか會話が浮気の追及みたいになってるけど、こういう場合はどう返せばいいのか。人生でと接する機會もほとんど無く、アラフォーまで純潔を守ったおじさんには難しすぎる問題だ。

けれどもやましい事は何もないし、ここは普通に返すしかないだろう。

「ええー、二人とも遊べたならってくれたらよかったのに」

「だって、ならいごととかもあったもん」

あくまでってくれたら遊べたのにと消極的な責任転嫁をぶつけてみると、むくれたなおが拗ねながら答えた。ふみかも隣でこくりと頷く。どうやら遊びたい気持ちはあれど、やはりそのための空き時間はなかったらしい。そりゃそうだ、遊べる時間がしでもあれば、二人とも我先にとってくれているだろうし。

遊びたいのに遊べないもどかしさからの行。この子達も本當はわかっているのだ、別に友達が増えたところで、俺の中の二人の価値が下がったりなんてしない。ただ寂しくて、甘えているからこんな態度なのだろう。だとすれば。

「じゃあ、今度三人とも予定のない日に遊ぼ……ねっ？」

言いながら、そっとふたりの手を握る。こういう場合、きっと言葉よりも人の溫の方が説得力を持つんじゃないだろうか。ぷにっとしているふたりのらかい手のを指でじていると、戸いながらも握り返してくれた。ちょっとだけ照れたような笑みを浮かべるふたりを見れて、ホッと安堵のため息をつく。

もしかしたら甘やかしてる様に見えたり、俺に対する依存癖を強めている様にもじられるかもしれない。もしもそんな問題が起こったら、ふたりの將來のためにもそれなりの対応を取らないといけないだろうが、今はただこんな風に楽しそうに笑っていてほしい。強くそう思った。