《【書籍化決定】にTS転生したから大優を目指す!》25――帰省できないすみれと平時代開始

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今回は年末年始から春まで一気に進むダイジェスト回です。

――12月31日

大晦日の寮はシンとしていて、私がズルズルとソバを啜る音とテレビの音だけが室に響く。部屋で食べてもよかったのだけど、なんだか寂しくて談話室で過ごしていた。

ここならキッチンもすぐそこにあるので、あったかい飲みが飲みたくなった時も便利だし。

しかし12月は忙しかった、蕓能界にりたての私ですら結構な忙しさだったのだから、先輩達や大島さんは目が回る様な忙しさだっただろう。年末進行って大変なんだね。

まぁ私の場合は年末進行がどうこうというよりは、レギュラーりしたせいで雑誌の撮影が1週間ほど掛かった事と、前回代役として參加したCMのおもちゃ會社から新しいCMのオファーがあったからなのだけど。

モデルの仕事は前回より掲載ページ數が大幅に増えたそうで、んな場所でんな服を著せ替え人形よろしく著せられた。更に笑顔にもバリエーションがほしいと言われ、満面の笑みからお澄まし笑顔、微笑みなどんな表を浮かべたせいで顔が痛くなった。顔のかし方や表の作り方の練習にはなったのでそこはよかったと思うけれども、ただただ疲れた。

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CMは前回お偉いさんに自ら営業を掛けたのが効いたのか、それともスムーズに撮影できたのがよかったのか、とにかく指名でオファーが來たと安藤さんに聞いてびっくりした。話を聞いたら今回も撮影に1日しか取れないらしいので、多分選ばれた理由は後者なんだろうなと思う。

前回はお風呂で遊ぶおもちゃだったが、今回は児をターゲットにしたオシャレおもちゃである。ピンクを基調としたコンパクトに赤や青のアクリルビーズがいくつもついているカラフルなもので、付屬のリボンや髪ゴムをつけてオシャレごっこをして遊ぶだそうだ。可らしいと思うが、やっぱりおもちゃなので作りが安っぽかったのは致し方ないだろう。

今回は私と同い年ぐらいのの子がお互いの髪を梳いたり結んだりしながら遊ぶ構になっていて、素直ないい子だったので撮影もサクサク進んだ。ちょっと不満だったのはあちらの方が背が高かったので、相手の子がお姉ちゃん風をビュービューに吹かしてきて私を妹扱いしてきた事だった。まぁこちらの中は大人だし張り合っても仕方がないし、ちゃんと合わせて妹ポジションで頑張りましたよ。

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そんなこんなで仕事をこなしていると、あっという間に12月下旬。そろそろ帰省の相談をしようと実家に電話を掛けたら、母から帰省NGを告げられた。

両親としては私に帰ってきてしいのだが、姉の神狀態が最悪らしい。私が上京して1ヵ月ぐらいは落ち著いていたらしいが、出演したCMを見て狂ったように暴れだしたそうだ。雑誌の時も同じ様なじで、母が買ってきて引き出しの中に隠していたらしいのだが、外出して帰ってきたらボロボロに破かれて床に散らばっていたんだとか。

映像や寫真ですらそうなのだから、本の私を見たらどういう行に出るかわからない。なので落ち著くまでは実家に近づかない様にと言われてしまえば、私としても頷くしかない。逃げるようで悔しいが、私だって自分のが可いのだ。わざわざ痛かったり苦しい思いはしたくないしね。

ただもうそこまでの狀態になっているのであれば、素人では対処できないのではないだろうか。私としてはプロの力を借りてカウンセリングをけた方がいいのではないかと伝えたのだが、父方の祖父母が神科やそれに準ずるところに親族がかかる事を嫌がっているそうだ。舊財閥系の會社に勤めているからか、何よりも世間が大事だからねあの人達。

末期でも神科に対する偏見はずいぶん薄まっていたけれどまだまだ殘っていたし、この頃なら余計に世間の目は冷たいだろう。でもまったく関係ない他人に自分の気持ちをとりとめなく話す事で、気持ちを整理する事ができる。私も前世ではカウンセラーさんに話を聞いてもらって、気持ちがすごく楽になったから。

姉も多分自分の気持ちがグチャグチャに絡んでしまっていて、それを自分ではどうする事もできなくなってるのではないかな。そのやり場のない気持ちが暴発しないうちに専門家に相談しないと、その矛先が私だけじゃなく両親や近所の人達に向くかもしれない。そう告げると母は深刻そうな聲音で『お父さんと相談してみる』と呟いた。祖父母は外からヤイヤイ口出ししてくるが所詮は部外者だ、姉の両親は母と父しかいないのだから酷だとは思うがしっかりしてしいと思う。

そんな訳で私は現在寮にひとりで年越しそばを啜っている。もちろん小學3年生をひとりで留守番させるなんてとんでもないと思う人達ばかりなので、皆が口々に『一緒に殘ろうか』とか『よかったらうちの実家に來ない?』とか言ってくれたけど、さすがに年末年始の家族団らんを邪魔するのは気が引ける。大島さんも変更できない予定がっていて、年末年始は家にいる事ができないとの事で、私の留守番に対しては難を示していた。

一応次善策として、地元で泊めてくれるところがないか當たってもみた。なおやふみかの家はどうかなと思って聞いてみたのだが、彼達も田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家に帰るそうで、會いたい會いたいと電話口でゴネるふたりを押し退けたおばさんに申し訳なさそうに謝られた。だったらうちにおいでと裏のおばちゃんが言ってくれたのだが、実家の裏にいたら姉とのエンカウント率も跳ね上がるだろうし、帰省を控えた意味が無くなるのでこれも卻下。

結局意外と近くに住んでいるトヨさんが、1日1回程度様子を見に來てくれるという事になった。數日の留守番ぐらいならなんてことはないという私の主張は、最後まで認められなかった。やっぱり見た目がいと頼りないし心配かけちゃうんだろうね、早く大きくなりたい。

冬休みの宿題もとっくに終わっていたし、自主トレも1日中できる訳じゃない。暇を持て余した私は寮をピカピカに掃除する事で時間を潰し、年末年始を過ごした。

寮生も戻ってきてさぁ今年も頑張ろうと思っていたら、やはり前世の歴史通りに天皇陛下が崩され、平の世が始まった。前世ではどことなく他人事の様に思っていた子供の頃の私だったが、こうして東京にいると喪に服している世の中の空気を敏じる。1月は暗く沈んだ雰囲気の中で毎日を過ごした。

2月になってしずつ普段の毎日が戻っていき、私にとって念願だった教育ドラマの撮影が始まった。初回は撮影前に出演者達の自己紹介があったが、劇団や子役専門プロダクションのタレントさん、男アイドルプロダクション・ダニーズの研修生、一般応募の子と経歴は様々だった。

私がキャスティングされた引っ込み思案な子の親友役は、コミュ力が高いという設定なので他のクラスメイトとも仲良く話したり、一緒に遊んだりする畫を撮影する事が多いらしい。なので役作りも兼ねて、休憩時間や空き時間にも積極的に挨拶や會話をしにあちこちに移する。

子役をしている子達や劇団所屬の子はもちろん、一般參加の子達もなかなかにコミュ力が高い。子とはすぐに仲良くなれたが、男子はシャイな子が多いのかまだギクシャクしている。ただし主人公級の役にキャスティングされているダニーズのイケメンな子だけには、とある理由で懐かれてしまって事ある毎に私に話しかけてくる。

「なー、すみれ! お前出番まだだろ、こっちでボール遊びしようぜ」

「ゆっくん、こないだ監督に皆の事を役名で呼ぶように言われたでしょ。私の役名覚えてない?」

「そんな事言われてもさ、演技とかよくわかんねーんだよな。オレはオレだし、すみれはすみれだろ? なんで違う名前で呼んだり呼ばれたりしなきゃならねーんだよ」

ゆっくん――逢坂祐太(あいさかゆうた)は私の言葉にそう答えると困ったように眉を寄せた。ゆっくんはアイドル志なので歌やダンスは好きなのだが、それ以外にはどうも興味が薄いらしい。特に演技は自分には自前の名前や格がちゃんと備わっているのに、何故別の名前で呼び合ったり決められた言葉を喋ったりしなければならないのかと理解も納得もできないらしい。

事務所から期待されているのか、それとも別分野の仕事をさせて長を促そうとしているのかはわからないけれど、ゆっくんの事務所ももうちょっと適を見て仕事を振ればいいのにとため息をつく。だって彼がNGを出す度に他の出演者にも迷がかかるし、スタッフさん達もせっかくいい作品を作ろうと頑張っているのにやる気が萎えてしまう。

おせっかいな私はしでも狀況を変えようと、演技の事を教えたり臺本の読み合わせに付き合ったりして彼の意識を改善しようとしたのだが、さっきの彼の言葉を聞く限りうまくいってるとはとてもじゃないが言えない。最近ではとりあえず撮影がうまくいくように、ディレクターさんと一緒にきや段取りを説明してその場がうまくいけばいいやとやり過ごしている。

演技についてはどれだけ言葉を噛み砕いて説明してもまったく理解できていないけれど、私が一生懸命に自分のために何かをしてくれている人間だという事は伝わった様で、ゆっくんはこれまで以上に私に結構な頻度で話しかけてきたり遊びにったりする様になった。ちなみに彼を稱のゆっくん呼び出來るのも、実はクラスメイト役の中では私しかいない。他の人が呼ぶと怒るので私も名前で呼ぼうかと提案したのだが、そのままでいいらしい。うーん、多分すごく信頼してもらってるって事なんだろう。でもまぁ、嫌われるよりはいいよね。

そんな風に何回目かの撮影を終えると、既に季節は4月になろうとしていた。教育ドラマと平行して雑誌の撮影やスポットでドラマの撮影に參加したり、エキストラとして映畫の撮影にも參加したりで忙しくも楽しい日々を過ごしているので、あっという間に時間が過ぎていく。

4年生になってクラス替えがあったけど歌と一緒のクラスだったし、他にも前のクラスで仲良くしてくれた子達が數人いて、學校生活は問題なく過ごせそうだ。前世の勝手なイメージで申し訳ないが、この年頃から子はグループ間の爭いだったり男子との諍いだったりが増えた気がする。もしもそんな殺伐としたスクールライフに巻き込まれた場合、傷つきボロボロになった心やを癒やすベースキャンプが必要だと思うのだ。その観點から言えば、今回の新クラスは當たりだと言える。擔任も変わらず吉田先生だし、仕事で休む時も事をイチから説明せずに済む。

順風満帆だなぁと思っていたら、いつもの様に安藤さんが唐突に稽古場に現れてこんな事を言い放った。

「すみれ、歌に興味はない?」

作品の方向に悩む今日この頃。んなところに手を出しすぎて、結局どっちつかずになってる様な(汗)

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