《【書籍化決定】にTS転生したから大優を目指す!》43――久々の帰省 その2
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翌日、明け方近くに叩き起こされて、祖母に指示されながら家事をした。大正生まれの祖母には昔ながらの『家事はの仕事』という考え方が染み付いているので、親族のの大半はこの家を訪れると馬車馬の様に働かされる。前世の私は男だったので、逆に臺所にって怒られる事が多かった。そして前世の姉も祖母の言いつけを守って家事にを出していたが、現世の姉は反抗してサボっていたらしい。サボるというか、多分この家に近づかなかったというのが正しいんじゃないかな。怖いからね、島のおばあちゃん。
私が掃除と洗濯を済ませる間に祖母が朝食を用意して、朝の6時過ぎにようやく朝の家事が終わった。
「おばあちゃん、それじゃあ洋子さんを起こしてくるね」
「あの子は大丈夫なのかね、昨日は結構な量の酒を飲んでいたけども」
確かに浴びるぐらいに、という形容詞がピッタリ來るじで飲んでたよね。普段はキリッとしててちゃんと社會人してる洋子さんだけど、昨日はちょっと羽目を外しちゃったのかもしれない。私の祖母の家だし、お刺もつぼ焼きも焼き魚もみんな味しかったから。
「……ようこさーん、あさですよー」
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私と一緒の部屋で布団を並べて寢ていたのだけど、私は先に起きて布団を片付けてしまったので、今は洋子さんの布団だけが部屋にポツンと敷かれている。こんもりと掛け布団の中に閉じこもっている洋子さんに聲を掛けながらゆさゆさと優しく揺さぶる。
「うぅ、頭いたーい」
「あんなにお酒を飲むからですよ、朝ごはんなんですけど起き上がれます?」
「……だいじょうぶ、頭は痛いけどお腹はすいてるから」
洋子さんがゆっくりを起こすと、昨日頑張って著替えさせたパジャマ姿ではなく下著姿だったのでびっくりした。大人の下著というじのレースをふんだんに使った黒いブラとショーツに、ちょっとドキッとしてしまう。でもそれはイヤらしい意味じゃなくて、仲良くしている人が普段は見せないを思いがけず見てしまったという後ろめたいじの悸だった。
「もぉ、せっかく祖母とふたりで頑張って著せたのに、なんでパジャマいてるんですか?」
文句を言いながらもぎ散らかしてあるパジャマを拾って、畳んでいく。そしてまだ布団の上でぼんやりしている洋子さんを無理やり引っ張り起こして、カバンの中から適當に選んだ服を手渡した。私のセンスだしおかしなじになるかもしれないけど、気にらなければ後で自分で選び直してもらおう。
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洋子さんを洗面所に送り出してから、布団を畳んで押れに片付ける。使ったシーツや枕カバーなんかは取り外して洗濯場へ持っていき、かごの中に放り込んだ。朝ごはんが終わったら準備して出発するので私は洗えないのだけど、祖母がちゃんと洗濯してくれるだろう。手を洗って食卓につくと、髪のがボサボサになっている洋子さんがちょこんと座って私が來るのを待っていた。対面に座る祖母はすっぴん寢癖裝備の洋子さんを見て『大丈夫なのかい、この子は』と言いたげな不安そうな視線を私に向けていたが、苦笑しか返せなかった。何度も言うけど洋子さんは普段はちゃんと頼れる大人の人なので、大目に見てあげてほしい。
朝食もおいしい焼き鮭と味噌と白米という、THE日本の朝食と言うべきメニューをおいしく頂いた。ごはんを食べて頭にが回ったのか、洋子さんが恥ずかしそうにしながら支度を整えに行っている間に、祖母と片付けながら々と話した。多分今度會えるのは、年単位で先になると思う。実家に帰省できたとしても、島まで來るのはなかなか時間的にも余裕がないからだ。
「また時間が出來たら來るね、それまでを大事にしてね」
「年寄り扱いするんじゃないよ……まぁ、すみれも達者でやるんだよ。この島のテレビでもすみれの姿が見られる様になるくらい頑張っておくれ」
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「うん、おばあちゃんが見てる番組に出演できる様に頑張るね」
そんな會話をしながら片付けを終えて、居間に戻ってくると祖母がおもむろに斗を開けて封筒を取り出す。
「帰りの通費の足しにでもしな、ないけどね」
いやいや、その封筒の厚さはしじゃないよね? ないながらも仕事をしてギャラをもらっているからには、さすがにけ取るわけにはいかない。と思ったのだけど、『子供が遠慮なんかするんじゃないよ』と強めに言われて強引に押し付けられてしまった。話を聞くとどうやら姉の進學に祖母がし援助をしたらしく、片方だけ特別扱いするのは気が引けるんだって。それで祖母の気が済むならけ取って、大人になって安定して稼げる様になったら恩返ししようっと。
そんな風に祖母とのんびりとした時間を過ごして午前8時半をし過ぎた頃、ようやく支度を整えた洋子さんと一緒に祖母の家を発った。船著き場まで見送りに行くって言ってたんだけど、ここから遠いし帰り道が心配になるから遠慮する事にした。玄関で祖母にお別れの挨拶をして、またテクテクと船著き場まで歩いて船に乗る。今日は昨日よりも波が高くて大きく揺れる船旅をなんとかやり過ごし、船を降りて今度は駅へと向かう。
島の祖母のところに行ったからには、街の祖父母のところにも顔を出さなければ母や祖母のところに文句が行くかもしれないので、次の目的地は街の祖父母の家だ。前世では祖父の死後にこちらの祖母からは金銭的な事でとても迷を掛けられたので心は複雑なんだけど、現世ではまだ何もされていないので無難なじに接する様に心掛けている。ただ思い通りにならない姉を早々に切り捨てたりしている事から鑑みると、油斷はしない方がいいんだろうなとは思っている。何か問題が起こった時にすぐにき出せる様に、心の準備だけはしておきたい。
島の祖母に話したのと同じ様に東京での出來事を話したり、洋子さんから今後の活予定などを説明して1日を過ごした。夕食は回らないお壽司屋さんに連れて行ってもらいました、2日続けて魚介だったけれど味しかったです。洋子さんは昨日で懲りたのか、祖父にビールを勧められていたけど1杯だけで抑えていた。
そして翌朝、祖父に車で最寄り駅まで送ってもらって、今度こそ実家へと向かう。その電車の中で洋子さんが『なんか、お腹の中に一抱えてそうな人達だったね』と疲れた様に呟いたのが印象的だった。洋子さんも普段からテレビ局とかで、お腹が真っ黒な業界人を相手にしているからじるがあったのかな。面倒くさいところに付き合わせてしまって、本當にごめんなさい。
電車の窓に映る風景がビルや住宅街から山や田んぼに変わっていって、段々と地元に帰ってきたんだなぁという気持ちが強くなってくる。電車の中のお客さんも段々と減り始め、この車両に乗っている乗客は私と洋子さんだけになってしまった。
車両がゆっくりと停車してからホームに下りると、なんだかふわりと懐かしい匂いがした様な気がした。1年半以上離れていたのに、ホームから見える景は全然変わらないなぁと安堵と殘念さが半分ずつ混ざりあったため息をもらす。前世通りならあのクリーニング屋さんも、あそこの食堂も10年ぐらい先に行われる再開発で無くなっちゃうんだけどね。
階段を上がって改札まで行くと、切符を回収したりハサミをれる駅員さんがボックスの中に立っている。ハサミがハンコになって、それからしばらくして自改札に変わったと思うんだけどそれはいつ頃だったかな。そんな事を考えながら駅員さんに切符を渡して改札を通過し、タクシーが待つ小さなロータリーへと向かう。
さて、タクシーは乗せてくれるかな。地元のタクシー會社は客を乗せてやってるんだと勘違いしているみたいで、駅から私の実家までワンメーター足らずだから乗せてくれないのだ。荷を両手に抱えて子供連れな母に対して『それくらい歩け』とつっけんどんに言い放った景を、本當に鮮明に覚えている。しかもそれ、一度や二度じゃないんだよね。
今回は見た目が観客風の洋子さんが話し掛けたからか、行き先を告げても渋々とした様子でトランクを開けてくれた。ゆっくり歩いても20分かからない距離だけど、荷をたくさん持って歩きたくないもんね。タクシーだと本當にあっという間に実家の近くまで到著し、実家のおんぼろアパートの前にある駐車場に停めてもらいタクシーから降りた。
よいしょ、と荷を抱えて実家へと歩いていくと、見慣れない赤の自転車がアパートの前に停まっていた。『私も姉もいないのに誰のだろう?』と不思議に思いながら実家の呼び鈴を鳴らすと、ドアの向こうからバタバタと大きな足音がこちらに向かって近づいてくる。
「すーちゃん、おかえりー!」
勢いよくドアが開いて、誰かが私に飛びかかる様にして抱きついてきた。いや、聲で誰かはわかってるんだけど、記憶にある姿と目の前にいるの子が一致しない。
「な、なお!?」
「えへへ、びっくりした?」
「びっくりしたけど、なんでウチにいるの? というかなお、すごく大きくなってない?」
もともと去年の夏に會った時に8cm差だったんだけど、今はそれよりも差が広がっているじがする。それに私の顔の前で自己主張しているふたつの膨らみも気になる、すごく大きい訳じゃないけどちゃんとおっぱいの形をしてるのがわかる。
「今ね、148cmなんだよ。すーちゃんは……んだ?」
「んでない! すぐになおぐらいにびるもん」
私となおがキャッキャと玄関先で騒いでいると、母が奧から出てきて早く中にる様に言った。そう言えば荷を持たせた洋子さんを後ろに放置したままだった、慌てて謝って洋子さんに家の中へる様に促す。洋子さんは怒った様子もなく、『むしろ可い子達が仲良くしてるのを間近で見られて眼福よ』とか言ってた。大丈夫なのかな、この人。
家の中にると、どうやら母となおでお茶しながら話をしていた様で、テーブルの上に母の紅茶のカップとなおのコップが置いてあった。なおがいるならてっきりふみかも一緒にいるかと思っていたのにそうではなかったので、何かあったのかと不安になる。荷を部屋の片隅に置いて、クッションの上に座りながらなおに尋ねた。
「ねぇ、今日はふみかは一緒じゃないの?」
私が問いかけると、なおがちょっとだけ表を曇らせる。その反応にますます不安になった私は、母の方に視線を向けた。
「実はふみかちゃん、盲腸になったのよ。一昨日のお晝頃だったらしいけど、學校で倒れたんだって……ね、なおちゃん」
「うん、真っ青だったしすごく痛がっててかわいそうだった。一昨日の夜に手が終わって昨日はダメだったんだけど、今日は起きてて會ってもいいよってふみかのおばちゃんに聞いたから。すーちゃんと一緒にお見舞いにいこうと思って待ってたの」
盲腸かー、私も前世で小學4年生の頃になったけど、あれって痛いし気持ち悪いし大変だったんだよね……の子だし手のキズが大きく殘らなかったらいいんだけど。そう言えば生活環境が違うからなのか、それとも前世よりも痩せているからか。現世では盲腸になってないな、私も二度と免なのでできればこのまま罹らずにいられたらありがたいのだけど。
それはさておき。お見舞いは私も行きたいけど、洋子さんを放置して出掛ける訳にもいかないよね。帰省に付き合ってくれているのに、放ったらかしで自分だけ出掛ける様な不義理はしたくない。
そんな私の逡巡を察したのか、隣に座っている洋子さんが優しくポンと私の背中を叩いた。
「すみれ、私の事は大丈夫だから行ってきなさい。お友達も手が終わって不安でしょうし、せっかくこうやって迎えに來てくれているのだから」
「……洋子さん、いいの?」
「ただし、出発前に言った様にちゃんと約束は守ってね。あなたも蕓能人の端くれ、常にプロ意識を持って行してちょうだい」
洋子さんの言葉に、私はしっかりと頷いた。洋子さんとの約束とは『危ない事はしない、知らない人には著いていかない、何かあれば隠さずに相談する』という基本的なものだ。そもそも當たり前の事ばかりだし、言われるまでもなく守っているから今更改めて意識する事でもない。
「お母さん、洋子さんのもてなしをよろしくね」
「すみれに言われなくても、失禮な事はしないわよ。安心して行ってらっしゃい、でもあんまり遅くなっちゃダメよ」
私の頭をポンポンとでて、母が笑いながら言った。リュックにふみかとなおへのおみやげがっているのを確認して、よいしょと背負う。何かがあった時のためにお財布もっているし、ハンカチやティッシュなどの用意も抜かりない。
「なお、迎えに來てくれてありがとね。それじゃ、ふみかのお見舞いに行こっか」
「うん! あ、自転車で行こうと思うんだけど、すーちゃんはこっちに自転車ないよね。後ろに乗る?」
「転んだら撮影の仕事に影響が出るから、できればそれは避けたいかな……」
り傷なんて作ってモデルの現場に行ったら、多分カメラマンさんもメイクさんもコーディネーターさんも悲鳴をあげるだろう。それをどうにかする為に皆さんに迷を掛けるだろうし、できるだけ撮影に影響しないように行するのもプロ意識として大事なことだ。何より二人乗りは道路通法違反だしね、おおらかな時代でもできればルールは守っていきたい。
「すーちゃんすごいね、大人みたい」
何故かなおがキラキラした瞳で私を見ていたので、曖昧に笑みを返す。私としては何に憚る事もなく子供らしく自由にき回れるなおがちょっとだけ羨ましいけどね、言わないけど。
「ふみかが院してるのって、どこの病院なの?」
「ほら、隣の駅の駅前にある大きな病院だよ」
ああ、前世の私がお世話になったあの病院なんだね。じゃあ電車で行こうかな、自転車を置きがてらなおの家に行っておばさんに事も話せるし。なおが出掛ける前におばさんにお見舞いに行く事を話してるかもしれないけど、回しはしつこいぐらいにしておくぐらいでちょうどいい。
私がなおに意見を求めると、なおは『すーちゃんに任せるよ』と言うので電車で行く事にした。さっきいたばかりの靴を履いて、玄関のドアを開ける。
「それじゃ……」
「「いってきまーす!」」
なおと一緒に連れ立ってドアから外に出てくるりと振り返って、部屋の中に向かって聲を揃えて言った。
島の祖母と街の祖父母に対する溫度差が激しいって?
前世での仕打ちがよっぽどだったんでしょうね(汗)
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