《【書籍化決定】にTS転生したから大優を目指す!》閑話――松田月子の近況

あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願いします。

新年一発目ですが、學後の姉の様子を軽く書きました。

すみれと書き分けが出來てない? 進します(汗)

「マツ、そろそろ風呂行かないとまた混むぞ」

「ああ、うん。それじゃ、一緒に行こっか」

この山の奧にある中學にってそろそろ半年が経つ、生徒全員が寮で過ごすこの學校はこれまでの生活とは違って々と戸うところはあるけど、それなりに日常を楽しんでいた。

學してすぐの頃は新しい環境で不安だったからか私も気が立っていたし、先生に楯突いて反省室に送られた事もある。さすがに後から考えると私も先生に対して『うるさい、黙ってろ』はマズかったと思うけど、それだけでまさか地下牢みたいなところに一晩放り込まれるとは思わなかった。牢屋みたいとは言えどさすがに本の牢屋ではなく、地下なだけで4畳半ぐらいの何もない部屋だった。そこで反省文を何枚も書かされて、すごく面倒だった。

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今聲を掛けてきた子は杉下舞(すぎしたまい)という同級生で、寮の同室で一緒に暮らしている。とは言っても彼も私と同じで反省室仲間で、最初は違う部屋だったし面識もなかった。私も彼も最初は初等部からそのまま進級してきた人が同居人だったけど、反省室に送られた事で問題児というレッテルがられたのか、私達ふたりがペアにされた。外部學生を早く學校に慣れさせる為に、持ち上がりの生徒を同室にするという學校の建前はどこに行ってしまったのだろうか。まぁスギさんとは気も合うし肩肘張って生活しなくていいから、今の方が楽だしいいんだけどね。

この學校の生徒は大3パターンに分類される、過半數は初等部から通っている家柄もよくお金持ちな家庭のお嬢様達。次に多いのが元々は上流階級の人じゃないけど、り上がってお金を手にれたけど箔が足りないからと親のステータスの為に放り込まれた子達。まぁ子供達も他所よりレベルの高い教育がけられるんだから、親子それぞれに得な部分があるのかもしれないけども。

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そして極僅かいるのが、私みたいに親に持て余されて格や生活矯正の為に預けられた人間。私達は言うまでもなくこの學校の最下層だと思われていて結構風當たりは強いけど、與えられた課題をこなして生活態度を取り繕いさえすれば悪目立ちもせず空気みたいに扱われるから楽だ。學してそろそろ1學期が終わろうとしているのだから、それくらいの処世につけている。

その取り繕い方が地元で出來ていれば、こんな學校にれられる事もなかったんだろうにね……まぁ無理か、なくとも地元じゃこんなにも落ち著いた気持ちではいられなかっただろうし。

著替えとかバスタオルとか、必要なを持って大浴場へと向かう。金持ち學校だからか、ここのお風呂はめちゃくちゃ大きい。でも混雑する時間になるとまるで芋洗い場みたいになるので、私とスギさんはなるべく早い浴を済ませる事にしている。

「それにしても、マツは痩せたよな。最初はこーんなにプクプクしてたのに」

所で服をいでいると、先に素っになったスギさんが私の腹回りをラ・フランスみたいに膨らんだじに手で表現する。冗談でもなんでもなく、學してからしばらくはそれくらい膨らんでたんだから怒るに怒れない。

「ここの生活であの型を維持できる人なんていないでしょ」

ため息をつきながら答えると、スギさんは『それもそうか』と笑った。その笑顔につられて私も苦笑を浮かべると、タオル1枚だけ持って浴場へと向かう。この學校はお風呂もルールが厳しく決められていて、先に頭とを洗ってからでないと浴槽にはってはいけないのだ。お湯をなるべく汚さないためとか々理由があるらしいけど、まぁあの人數が使うんだからそれも納得できてしまう。

肩口で揃えた髪を洗い終えて、ボディソープでしっかりとを洗う。泡まみれになった自分のを見ると、確かに痩せたと思う。マイナス10キロぐらいかな、もしかしたらもうちょっとかもしれないけど。ゴールデンウィークにあったオリエンテーリングという名の軍事演習みたいなシゴキを始めとして、ここの育教育は下手したら拷問かと思うくらいのレベルでかされる。さらに毎日の食事は栄養を管理されているから食べ過ぎるなんて事もありえない。もちろんだけど、間食も止とくればそりゃあ痩せるよね。そもそも學校の近くは木ばっかりで店なんかないんだから、おやつなんて手にらないんだけども。

綺麗にを洗って、もうこれ小さいプールかなと思うくらいに広い浴槽にる。もう夏だから別にお湯にらなくてもいいんだけど、私達以外に誰もいないしせっかくだからお湯に浸かる。

私が先にお湯に浸かってリラックスしていると、遅れてを洗い終わったスギさんがザバザバとお湯をかき分けるようにこちらに向かってくる。ちょ、そんなに勢いよく來るとこっちに波が向かってくるから!

波が顔に直撃して私が恨みがましい視線を向けても何のその、マイペースなスギさんはそのまま肩までお湯に浸かって満足気にため息を吐き出した。

「マツはさ、夏休みどうすんの?」

ちゃぽん、と音を立てて腕をばしながらスギさんが言った。目下私の悩みはそれだったりする、帰省すべきかせざるべきか。ただサイズが合わなくなったせいで殆ど著れなくなった私服を補充したいから、數日は戻ろうかと思っているんだけど踏ん切りがつかない。

「前に言ってた妹ちゃんの事?」

私が返事をできずに黙っていると、めずらしくスギさんが踏み込んできた。あんまり他人の事に踏み込まない子なのにね。アイツの事は詳しくは話してないのだけど、妹と仲が悪いから帰省時期が重なった時は絶対に帰省しないという話はしてあるから、気になったのかもしれない。

「……うん、どうしようかと思ってさ」

なんとなく両手でお湯をすくって、顔を洗ってみる。それでこのモヤモヤした気持ちが晴れる訳ではないし、何の意味もない行だったりするんだけどね。

地元でアイツ――妹と一緒にいた時は、本當に殺してやりたくなるくらい憎らしかった。それは妹が実家からいなくなっても続いて、私はそのイライラをうまく処理できずに問題行を繰り返した。どれだけ親に窘められても、祖父母に蔑まれても、祖母に憐れまれても変わらなかった。でも、実家から離れてこの學校へ來てからわかった、アイツへのこのどうしようもない憎しみや嫌悪はあの家庭環境からきたものだと。何故なら現在彼らから離れてここにいる私は、ある程度ではあるものの冷靜に客観的に自分とアイツの関係を見つめることができているのだから。

かと言って直接會ったらまた同じ事の繰り返しだろうし、仲直りができるなんて馬鹿げた事は考えていない。私はあくまでアイツが嫌いだし顔を見れば殺してやりたいと思わずにはいられないだろうし、あっちだってあれだけ理不盡に私から暴言やら何やらぶつけられていたら好意など抱くはずもないだろう。

親や親類がいないこの狀況がすごく楽だし、地元にいた頃よりは神的にも的にもまともな狀態で生活できているのだから、私としては今すぐにでも自立して今後彼らとは會わずに生きていきたいのだけど、私はまだ中學1年生の子供でしかない。どうやったって自活していくのは難しいだろう、せめて中學を卒業するまではこの祖母が用意した檻の中で暮らすしかない。

「とりあえず、妹ちゃんが帰省するかどうか聞いてみたら? 最悪の場合は親にお金振り込んでもらって、一緒にアタシの家に行こうぜ。近所にスーパーもあるから、服も買えるしな」

私がぼんやりと考え込んでいると、スギさんが何の気負いもなくそう言う。スギさんとの出會いは、私に地元では気付けなかった事を教えてくれた。それは私が関わる人はこれからもっともっと増えていって、家族以外との繋がりだっていくらでも選び放題なんだって事だ。イライラしたり自分以外の人間に殺意を抱く様な繋がりを大事にしたところで、自分にとってはマイナスにしかならない。どうせなら私は自分が楽しくて長できて、何より自分らしくいられる繋がりを作ってそれを大事にしたい。

そもそも親達のせいでこんな事になってるんだから、學生の間は利用できるだけしてやろうと思っている。なんなら大學まで出て東京とかに下宿してやろうかな、お金はあっち持ちで。そのまま向こうで就職して次に會う時は両親どっちかのお葬式とかやると面白そう。そんな事を考えるぐらいには両親に対してもイライラがたまっているし、ムカつきや嫌悪を抑えられないくらい抱え込んでいる。

「ありがとう、スギさん。ひとまず親に連絡れてみるね、どっちにしてもお盆は寮から全員出ていかないといけないらしいし」

「いやいや、なんのなんの」

スギさんのおっさんくさい返事を聞きながら、私はお風呂から上がったら久々に母親に電話をする事に決めた。父親とは絶対話したくないから、母親が電話に出てくれたらいいなぁ。

次の更新は22日予定です。

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