《【書籍化決定】にTS転生したから大優を目指す!》閑話――母と娘のふれあい

いつもブックマーク&評価、誤字報告ありがとうございます。

短いですので、閑話ですが明日も更新します。

來週からはすみれ視點に戻りますので、よろしくお願いします。

「あっ! すーちゃんの映畫!!」

喜びの聲を上げながらテレビの前に駆け寄っていく娘達を見ながら、私は目の前にいる涼香(りょうか)さんと顔を見合わせて小さく笑った。

涼香さんの娘さんであるなおちゃんとうちの娘のふみかとは稚園の頃からのなじみで、私達の付き合いもそれから始まった。學生時代はやんちゃだったと自分で言う涼香さんは考え方も基本的には前向きで、子育てで々と悩むタイプだった私は々と助けられた。ううん、現在進行系で助けられている。

「すみれも元気そうでよかった、アタシは去年の夏にちょっとだけ會ったきりだったから心配だったんだよね。いろはサンはふみかの院中に會ってるんだっけ?」

「うん、ふみかのお見舞いで病室に通ってくれてね。せっかく帰省してるのに娘に付きっきりでいてくれて、なんだか申し訳なかったわ」

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「アイツは友達想いというか、義理堅い子だから……大人のアタシよりナンボかしっかりしてるし」

笑いながら言う涼香さんに、私は小さく笑った。先程から話題に上がっているすみれちゃんとは私の娘と同い年で、涼香さんの娘さんのなおちゃんと同じく稚園の頃からのなじみだ。もちろんすみれちゃんのお母さんとも親はあるが、松田さんのおうちはし家庭環境が複雑なので涼香さんほどは仲良くなれていない。

おそらくそういう家庭環境だから、すみれちゃんは大人みたいに振る舞う様になってしまったんじゃないかな。私と涼香さんの想像だけど、そう大きく外れてはいない気がする。私達大人が舌を巻くぐらい大人びていて、しっかりしているなのだ。

「ママ、やっぱりすーちゃんの舞臺挨拶見に行きたい」

「しかたないでしょ、その回の席が取れなかったんだから」

タタッ、と駆け寄ってきてわがままを言う娘の頭をでながら、私はため息をついた。ちなみにテレビのCMで試寫會のお知らせも流れていたので応募してみたが、殘念ながら外れてしまった。すみれちゃんが人數分の前売り券を送ってきてくれたのだけど、殘念ながらすみれちゃんが出演する舞臺挨拶の回は席がすべて埋まってしまっていた。

やはり地元に映畫館がないのが重いハンデだったかなぁ、娘のお願いだからできるだけ葉えてあげたかったんだけど、こればかりはどうしようもない。

私の返事を聞いてしょんぼりした娘が、テレビの前にいるなおちゃんのところに戻っていく。なおちゃんも娘と同じ様にしょんぼりとした表をしていて、ちょっとだけ良心が痛む。

子供達から視線をズラしてテレビの畫面を見つめると、そこにはインタビューに答えるすみれちゃんが映っていた。お化粧しなくても白いにパッチリと大きな瞳、相変わらずのっぷりに思わず口から息がれる。

「プロの技ってすごいわね、すみれちゃんって前から可かったけどここまでになるなんて」

「今度すみれが帰省してきたら、手れの仕方とか教えてもらおうかな」

私達が冗談めかしてそんな事を話していると、ふみかとなおちゃんが怒ったような表でこちらに近寄ってきた。並んで私達の前に立つと、腰に手を當てて口を開いた。

「すーちゃんは寮のお姉さん達に教わって、おのお手れとか頑張ってるんだよ! 努力してキレイにしてるんだから」

「そうだよ! 頑張って可くなってるんだから、簡単じゃないんだよ!」

ぷんぷん、と音がしそうな態度で言う娘達がおかしくて、私と涼香さんは聲を上げて笑った。でも確かにふみか達が言うように、簡単ではないよね。私も華やかな業界にいた事はないけれど、として生まれてウン十年だ。貌を維持するならまだしも、向上させるにはかなりの努力が必要な事はに沁みてわかっている。それを小學生のすみれちゃんが先達に學びながら行っているのだから、尊敬の念すら抱いてしまう。

どうやら自分達の主張を私達に屆いたのだと理解したふみか達が満足そうに頷く。しばらく親子二組で笑い合った後、しだけ戸った様になおちゃんが口を開いた。

「あのさ、ママ。もしもわたしがすーちゃんとおんなじところで仕事をしたいって言ったら、どう思う?」

「……あぁん?」

突拍子もない事を言い出したなおちゃんに、涼香さんがの奧から絞り出す様に聲を出す。やんちゃしてた頃はきっと常にこんなじだったんだろうなと容易に想像できる剣呑な目つきで、彼娘を睨みつけた。その迫力に怯えたふみかが、私にぎゅっとしがみついてくる。

「なお、アンタすみれと一緒にいたいから大學は東京のガッコを目指すって言ったばっかりじゃん。なんなの、そっちはどうすんの?」

「そっちも頑張るよ、でも演技してるすーちゃんがすごく楽しそうだから。わたしもやってみたいなって思ったの」

無邪気に両手をぎゅっと握って言うなおちゃんに、涼香さんはまるで見せつける様に大きなため息をついた。

「あのねぇ、何の結果も出してない人間がアレもコレもやりたいってユメ語んのは勝手だけど、結果どれも葉えられなくてダメになって困るのはアンタだよ?」

「ママはわたしにはできないって思う?」

「現在(いま)のなおには無理だね、次々にやりたい事に目移りするって事は、結局どれも本気でやりたい気持ちが弱いんだとママは思う。そうやって結果も出さずに次々やりたい事に手を出して、何ひとつも実らなかったヤツを、これまで何人も見てきたからね」

そう言って涼香さんは寂しそうに笑ってから、なおちゃんの頭をでた。その手がるように頬へと下りて、軽くほっぺを摘む。

「大ねぇ、すみれが出來てるから自分もやれそうなんて勘違いしちゃダメ。なおの方が知ってるだろ、すみれは努力する事を面倒に思わない格だって。才能があって努力も當たり前にできて、人間関係もうまく調整できる子なら功して當然なの。あんな風になれるのは、本當にひと握りの子だけなんだからな」

「いっ、痛い! ママ、痛いってば!!」

ほっぺを摘まれて痛そうにしているなおちゃんと、手加減しつつもなおちゃんの無邪気な言葉にちょっとイラッとしたのか、しずつ指に力を込める涼香さん。一瞬ピリッとした空気になったけれど、最終的に微笑ましい親子のじゃれ合いに落ち著いてこちらもホッとひと安心。

涼香さんの最初の睨みに萎したのか、ずっと私に抱きついていたふみかが『私も演技やってみたいって言わなくてよかった』と小さく呟いたのが聞こえた。本當なら私も言い聞かせるべきなんだけど、まぁ涼香さんの言葉で現実は厳しいってふみかも解っただろうし。今回は聞かなかった事にしてあげよう、本當にやってみたかったらきっと自分の口でもう一度お願いしに來るだろうし。

本當なら子供のむ事はなんでもやらせてあげたいのだけど、現実はままならないものだ。その世知辛さに、私は思わず深くて重たいため息をついてしまうのだった。

ちなみに、

いろはさん=ふみかのママ

涼香さん=なおのママ

ですので、念の為。

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