《【書籍化決定】にTS転生したから大優を目指す!》64――裝合わせと突然の來訪者達

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今年の更新は今話で終了です、來年もまたよろしくお付き合い頂ければ嬉しいです。

1月更新分は7日までにはアップできるはず、多分(汗)

ゴールデンウィークが間近に近付いてきた4月下旬、私は都にあるし広めの會議室にいた。以前出演依頼にOKを出した映畫の裝合わせに參加するためだ。

今回の役は容姿はいけれど仕事のできるOLさんとの事で、白のブラウスに紺のベストとスカートという事務服スタイルで裝擔當の方の前に立つ。

「うん、よく似合ってるわよすみれちゃん」

「あの、それはすごく嬉しいんですけど……」

そう、服はまったくもって問題はないのだ。問題があるとすれば、靴である。普通オフィスで履く靴ってパンプスとかローファーじゃないの? なんでピンヒールなのか、しかも見たじ踵の高さが明らかに10cmを超えてるのがおそろしい。おかげで立つだけでやっとの私は、まるで生まれたての子鹿みたいに足をプルプルさせながら抗議の視線を目の前のに向けた。

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「普通、職場でこんな高いヒールの靴を履いてたら周りの人達からヒンシュク買いますよね? それに申し訳ないですけど、これを履いてまともに歩ける気がしないですよ、わたし」

「えー、慣れないだけだって。慣れたら速歩きだって駆け足だってできるようになるわよ」

不満そうにぷくーと頬を膨らませるのはかわいいけど、私だって引けないのだ。こんなの撮影の間ずっと履いてたら、足をひどく痛めそうだもの。なんとしても他の靴に代えてもらわなくては。

私達が睨み合っていると、裝がっている段ボール箱を運んできたお姉さんが地面に下ろしながら口を挾んできた。

「ほらリーダー、だから言ったじゃないですか。私らだってさすがにその高さのヒールは履くの躊躇するんですから、小學生の子にはキツイですってば」

「でもせっかく用意したんだよ、小學生用でこんな高さのヒールなんてなかったから特注したのに」

「それはリーダーが先走ったのが悪いんでしょ。ごめんね、この人すみれちゃんに絶対似合うからって暴走しちゃったのよ」

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そう言って苦笑したこの人は、どうやらアシスタントさんらしい。リーダーさん、お仕事に熱心なのはいいけど暴走に巻き込むのはやめてほしい。普段使ってない筋がピクピクしてる気がするから、多分間違いなく明日は筋痛になりそう。

私が演じるヒロインが長が低いのを気にしている役なので高さがある靴を使いたかったみたいだけど、結局全的にソールで高さが底上げされたパンプスを使う事に決定した。男だとこういうシークレットシューズ的なはありふれているけれど、だとヒールで高さは誤魔化せるから珍しいみたい。洋子さんが『こういうのもあるんだね』なんて言いながら、手にとってあちこち眺めていた。

映畫『CHANGE』でバッサリ切った髪も、それなりにびてきて今は肩と背中の真ん中との中間ぐらいまで長くなってきている。定期的に容室に行って整えてもらってるんだけど、費用は事務所持ちなのに先だけちょこっと切ってもらっただけで1萬円近いお金が1度で飛んでいくのはなんだか申し訳ない気分だ。前に容室へ通う頻度を減らしてもいいんじゃないかと洋子さんに相談したんだけど、私は事務所の商品であってその手れにお金と手間暇を掛けるのはこちらの義務なのだから気にしなくていいと言われてしまった。それで一応納得はしたんだけど、やっぱり元々貧乏な私としては気になってしまう。他にもおの手れとかね、事務所にはいつもお世話になっています。それが私の役割だと言われれば、従うしかないんだけどね。

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とりあえず今は試著だから、髪は軽く結んで首の橫からの方に垂らす。事務服の上から薄いピンクのカーディガンを羽織って、用意されている大きめのスタンドミラーに自分の姿を映した。うん、格好だけなら立派なOLさんだ。実年齢は小學生なんだからどうしてもコスプレが出てしまうけど、そこは見なかったことにしよう。

「きゃー、すみれかっわいい! 寫真撮ろ、寫真!!」

ドーンと橫から飛びついてきた洋子さんにギューッと抱きしめられながら、アシスタントさんが構えるカメラの前に移する。いつの間に渡したんだろう、それ洋子さん用のお高いカメラだよね。デジカメじゃないんだから、そんなにパシャパシャ撮ったらすぐにフィルム無くなっちゃうよと思いつつ、言われるがままにポーズを取った。

なんだか先行き不安だけど、映畫って初めてだし頑張らなくちゃ。そう決意を新たにしながら會社以外のシーンで著る私服を數著合わせていると、後からやってきた共演者の方々と挨拶をわして、無事に裝合わせを終える事ができた。

ゴールデンウィーク初日、私は東京駅のホームにいた。ゴールデンウィーク4連休に仕事がらなかった私は、レッスンしたりピアノを弾いたりしてのんびり過ごそうと思っていたのだけど、一昨日に思わぬ人から電話がったのだ。

なおとふみかのおばさん達からで、無理なら斷ってくれて全然構わないんだけどと最初に言った後に、娘ふたりがこのゴールデンウィークに東京に行きたがっているのでそっちで面倒を見てくれないかというお願いだった。え、なおとふみかが東京に來るの? 私としては是非ふたりに會いたいので喜んでお世話するけど、一何の用事で來るんだろう。

ホテルとかもこちらで準備するからと言われたんだけど、ひとまず待ってもらってトヨさんとあずささんに相談したら、私がちゃんと責任を持ってふたりを監督するなら寮に泊めてもいいという許可をもらえた。おばさん達も子供料金とは言え新幹線代とか結構負擔が重いだろうし、ちょっとでもそれを軽くするお手伝いができたならよかったかな。

「それで、ふたりはせっかくのゴールデンウィークなのにわたしに付き合ってよかったの?」

し振り返ってそう尋ねると、後ろをトコトコと付いてきていた歌とはるかがにっこりと笑った。

「すみれのなじみ達が來るんでしょ、せっかくだしどんな子達か見ておきたいじゃないの」

「……どうせ帰省しなさいってお母さんがうるさく言ってただけだから、それならすみれ達と一緒の方が楽しいし」

二人がいいなら私としてはなおとふみか、歌とはるかをそれぞれ紹介するのもやぶさかではない。どちらもいい子達だから、仲良くしてくれると嬉しいんだけど。心配なのは人見知りなはるかと引っ込み思案なふみかかな、いつでもフォローできる様に注意しておかないと。

そんな事を考えていると、いつの間にかふたりが乗っているはずの新幹線がホームにってくる時間になっていた。到著の合図が鳴り響き、ゆっくりと新幹線がホームにり込んでくる。大丈夫かな、なおとふみか。多分あの子達、大人がいない狀態でこんな風に遠出したの初めてだと思うんだよね。張してないといいんだけど。

乗っている車両と席番號は聞いているから、下りてくる人達の邪魔にならない場所で二人がホームに出てくるのを待つ。今日はどちらかというと東京に來る人よりも地方に出掛ける人が多いのか、新幹線から下りてくる人達はそれほど多くない。時間が早いっていうのもあると思うけどね、まだ朝の10時だもん。早起きして始発に近い電車に乗ったみたいだし、中で寢てなければいいけど。

一通りお客さんが下り終わったのか人の流れが途切れても現れない二人が心配になって、中まで見に行こうかなと思っていたらようやく目をりながらなおとふみかがちょっと大きめのリュックを背負って下りてきたのを見て、ホッと安堵の息を吐いた。

「なお、ふみか! こっちだよ~!!」

手をブンブン振りながらそう呼びかけると、まるで飼い主を見つけたワンコみたいに目を輝かせてこっちに向かって走ってくる。え、ちょっと待って、その勢いはさすがにけ止められないって!!

まずはドーンとなおが飛びついてきて、なんとかたたらを踏んでそれをけ止める。でもその後にふみかが続いて、しっかりと踏みとどまれなかった私はなおとふみかと一緒に倒れそうになった。でも後ろにいた歌とはるかが慌てて背中を支えてくれて、なんとか転ばずに済んだ。

「ちょっとアンタ達、久々に友達に會えて嬉しいのはわかるけれど、し落ち著きなさいよ。自分より背の低い相手に二人がかりで抱きついたら、倒れそうになるのなんて考えなくてもわかるでしょうに」

歌が腰に手を當てて、ため息を吐きながらなおとふみかを窘めた。さすがクラスのまとめ役、初対面の子達でも遠慮なく冷靜に諭すことができるのはすごいと思う。逆に窘められた二人はちょっと興が冷めたのか、きょとんとした表歌を見ると聲を合わせて『……誰?』と尋ねた。お互いを紹介するにはちょうどいいタイミングだよね、私は心配してくれたはるかにお禮を言うと3人の方に1歩分歩み寄った。

「なお、ふみか。この子はわたしの東京で初めてできた友達の木村歌ちゃん、しっかり者で時々厳しい事も言うけど優しい子だよ。歌、こっちはわたしのなじみの岡本なおと高橋ふみか。お互いに仲良くなってくれたら嬉しいな。あと、こっちの子はわたしと同じ事務所所屬で同じ寮に住んでる佐々木はるかちゃんだよ」

私がそれぞれを紹介すると、4人は何故かモジモジと顔を見合わせた後で小さく『よろしく』と言った。なんでそこで照れるかな、特に歌となおはそういうキャラじゃないでしょうに。

大丈夫かな、仲良くなれるかなってちょっと不安になったけど、そんな心配はどうやら無用だったみたい。新幹線のホームから駅の中を移して山手線のホームに到著する頃には、なおは歌とかしましいじで話をしてるし、人見知り同士何か通じ合うものがあったのかふみかとはるかもなんだか楽しそうに言葉をわしていた。

なんだか共通の友達である私が一人ぽつねんと放置されちゃってるけど、こうして校外の人達との友関係を広げるのもなおとふみかにとってはいい経験になるんじゃないかな。私が引っ越してからも會えばずっとくっついてきてた二人が離れていくのはちょっと寂しいけど、私の存在が二人の足かせになって長の邪魔になる事の方がもっと嫌だものね。

「すーちゃん! 歌ちゃんいい子だね!!」

「……はるかちゃんも、いい人」

私が思いに耽っていると、不意に両方の腕になおとふみかがしがみついてくる。背もとっくに抜かれちゃったし腕に當たっているもふにゃふにゃとの子らしくらかく長した二人だけど、やっぱりもうちょっとだけこんな風に一緒にれ合っていられたらいいなと思う。

「そう言えばまだ聞いてなかったけど、今日ってどこに行くつもりなの?」

「まずは原宿! クレープが味しいって聞いて、絶対行きたかったの!!」

歌の質問に、首だけでちょっと振り返りながら元気いっぱいになおが答えた。その後も東京タワーに上りたいとか淺草寺に行きたいとか、東京の主だった観スポットが候補に挙げられる。

「原宿って、すみれは大丈夫なの? バレない?」

最初の目的地が原宿と聞いて、歌はし心配そうな表を浮かべながら尋ねてきた。私も蕓能人の端くれ、一応顔が割れない様に伊達メガネと前にも被ったキャスケット帽を用意してある。

髪型だって普段はあんまりしないツーサイドアップにしてるし、そもそもそんなに知名度もないんだから見破れる人なんていないと思うよ。

「すみれだとは気付かないかもしれないけど、普通に可の子としてスカウトとかされない? 大丈夫? クレープならわざわざ原宿まで行かなくても、他にも売ってるところがあるでしょ」

「せっかくなおが自分で調べて來たんだから、できるだけ希に添ってあげたいの。むしろ4人の方がわたしより可いんだから、スカウトとかそういう心配は自分達にした方がいいんじゃないの?」

私がそう言うと、何故か歌はふいっとはるかの方に視線を向け、それをけ取ったはるかがまるで『処置なし』と言わんばかりに首をふるふると橫に振った。そんな二人のやり取りを追求しようとした途端にホームに電車の到著を告げるメロディが鳴る。仕方なくまだ私の両腕に抱きついているなおとふみかの方に視線を向けて、これから來る電車に乗るからねと説明する。

電車の中はゴールデンウィークの初日だからか程よく空いていて、座れなかったけど5人でまとまって立っていられる場所を確保する事ができた。電車の窓から見える都會の景にテンションを上げるなおを宥めつつ、電車にガタンゴトンと揺られながら私達は原宿へと向かうのだった。

1991年當時のホームの到著音がベルだったのかメロディだったのかを調べたのですが、資料がなかったのでその辺りは想像で書いてます。

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