《え、社システム全てワンオペしている私を解雇ですか?【書籍化・コミカライズ】》別とか関係ないし! 2

「あのさ、この資料、これ伝わると思ってんの?」

私は男が嫌いだ。

特に、このクソ課長が大嫌いだ。

「まあじゃこんなもんか。もういいよ。あとは直しとくから」

何かある度に「だから」と見下される。

このご時世によくこんなことが出來るなと思うけれど、私が何か訴えても社政治で封殺される。クソ課長が持つ唯一の特技だ。

「――以上が、私の提案です」

ゲーム會社。

新しい企畫の発表會。

報系の學部を卒業した私はプログラマ志だったけれど、いつ休むか分からないには厳しいという理不盡な理由でプランナーに回された。

即座に転職を考えたものの、それでは経歴に傷が付くと考えて一年は殘ることにした。

ヒトも環境も何もかも最悪な職場だけれど、大好きなゲームの企畫を考えるのは楽しい。それなりにやりがいをじていた。

負けず嫌い。何事もやるからには全力。

この日のプレゼンは、かなり自信があった。

しかし結果は落選。一票もらなかった。

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選ばれたのはベテラン社員による意味不明な企畫。

「おぅ本間、プレゼンおつかれ」

プレゼン後、クソ課長に聲をかけられる。

「まあ妥當な結果だったな。全く容が伝わってこなかった」

「……そうですか」

無視して仕事を片付ける。

あれもこれも次々と押し付けられるから、業務時間に終わらせるだけでも一杯なのだ。ハラスメントに付き合っている余裕は無い。

転職活はとっくに始めている。

しかし、なかなか思うような結果が得られない。

「良かったら俺が教えてやろうか?」

「結構です」

無遠慮に肩にれた手を払う。

普通ならばしは耐えるだろう。しかし私は、もう辭めると決めているのだ。遠慮なんか必要ない。

「……おい、なんだそれ。はぁあ?」

「セクハラですよ。社會的に死にたいんですか」

セクハラ、という聲を大きくする。

クソ課長は顔を真っ赤にして、ハッ、と吐き捨てるような聲で言った。

は何かあれば直ぐにセクハラ! こっちは指導してやろうって言ってるだけだぞ!? あ!?」

「パワハラです。管理職研修どうなってんですか。仕事の邪魔なので話しかけないでください」

「テメェなぁ!?」

一際大きな聲でんだところで周囲が止めにる。

「本間さん、押さえて」

「私は正しいことを言っただけです」

諭すような口調で、男社員は言う。

「課長はまぁ、あれだけど。君もほら、もうし言い方があるでしょう」

無視して仕事を続ける。

言い方。私が最も嫌いな言葉だ。

だっておかしい。どう考えても私が正しい。それなのに、悪意あるクズに対してヘラヘラ笑って上手に付き合うなんて無理だ。絶対に嫌だ。

「……この際だから言うけどさ、君のプレゼン、あれ普通なら通ってたよ」

思わず手が止まる。

社員は、退屈そうに言った。

「もう君も子供じゃないんだからさ。よく考えて」

――社政治。

あのクソ課長が持つ唯一の取り柄。

「……見てるだけですか」

拳を握りしめて、問いかける。

「いや、だってほら」

彼は當たり前のように言う。

「なんかメリットある? どうせ直ぐやめるでしょ」

あ、この仕事よろしく。

大量の書類を置いてどこかへ行くクソ男。

この書類は、もちろん私が処理すべきものではない。しかし無視すれば私が仕事を放棄したことになる。そういう環境が出來上がっている。

を噛んで手をかす。

この日の私は、終電を逃した。

「……早く辭めたい」

帰宅後、部屋の隅で膝を抱えて呟いた。

最近こんなことばかりだ。嫌になる。

だけど転職が決まらない。

お金に余裕なんか無い。

だから転職が決まるまで、続けるしかない。

「……負けるもんか」

これは戦いだ。

「……絶対、負けるもんか」

歯を食いしばって、心に蓋をして、また明日を生きる。

されども転職が決まらない。

不採用の文字を見る度に、まるで存在を否定されたような気分になる。

次がある。

大丈夫、きっと大丈夫。

――不採用。

慎重に検討しました結果――

誰も私を必要としていない。

私を求めている場所なんて、どこにもない。

……ああそうか、そうなんだ。

ここが最悪な場所なんじゃない。

私が、その程度の人間なんだ。

こんな場所でしか、私は……

……負ける、もんか。

心にともした炎が、消えかけていた。

その張り紙を見付けたのは、ちょうど、そんな時だった。

……真のプログラマ塾?

ダサい。でも、気になった。

転職が決まらない原因は、きっとスキル不足だ。

未経験NG。無料験あり。

場所は、ここから徒歩五分のところ。

ふらふらと、足を運んだ。

何か的な目的があったわけじゃない。ただの気まぐれで、だけど藁にも縋る思いだった。

――何年経っても思い出す。

この時の判斷が、私の人生を大きく変えたのだ。

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