《【書籍化】學園無雙の勝利中毒者 ─世界最強の『勝ち観』で學園の天才たちを─分からせる─【コミカライズ決定!】》第2話 「ご名答」

すべき弟子にして、最強の信念を勝ち取った、レイラの激戦からおよそ2週間が経つ。

霧生の致命傷(ユクシアによる正不明の一撃によるもの)は癒え、レイラの名譽ある負傷も今や完治が近い。

そんな中、兼ねてより延期を重ねていた『勝利學』の講義が、3ヶ月ぶりに開かれることとなった。

座學棟102大講義室の教壇に立つ霧生の前には、初回をゆうに超える人數の生徒が集まっている。

レイラの序列戦でい立った學園の熱気と興は未だ冷めやらぬようで、まさしくその影響がこの盛況ぶりだ。

そう、レイラが魅せた件の勝利は生徒達に面白いほど上昇志向をもたらしていた。

そんな彼を鍛えたことに加え、天上序列一位であるユクシアに勝利したことで、今や霧生の実力は皆が認めるものとなっている。個人的に弟子りを志願してくる者も後を立たない。

それらの要因が、かつてほとんどの生徒が去った『勝利學』に再びの注目を呼び戻したのだ。

Advertisement

「まずは講義に間が空いてしまったことに謝罪の意を示そう。知っての通り、手の離せない勝負があったんだ」

「何回目だよ……。存在ごと忘れてただけだろ」

早々にヤジが飛んでくる。

聲の主に視線を移すと、そこには天上生クラウディア・ロードナーが貧乏ゆすりをしながらしっかりと最前列に居座っていた。

そのに流れる《気》はさらに洗練されており、なりふり構わない研鑽は変わらず続けているようだ。

「…………」

確かに彼の言う通り、レイラの勝負に熱中しすぎて勝利學のことを忘れていた節はある。

休講を繰り返し、生徒達を翻弄した『勝利學』が、他の講師達のバッシングによって月に一度の頻度に減らされてしまったのもまた事実であった。常に己の勝負を優先する霧生の質上、真っ當な措置だと言えよう。

つまり図星である。

「これ程多くの生徒が集まってくれたことを嬉しく思う」

咳払いで誤魔化しつつ、霧生は言葉を続けた。

その後教壇から下り、張した面持ちの講者達を見渡しながらゆっくりと歩んでいく。

Advertisement

前列にはクラウディアの他に見慣れたメンバーが見けられた。ニースやノア、レイラやリューナといった勝利學皆勤組である。付近ではレナーテも常連顔で席についていた。

「さて、改めて説明する必要はないかもしれないが、まだ勘違いしている奴もいるだろうから、一応言っておく」

人差し指を立て、気を取り直して語気を強める。

「他の講義とは違い、勝利學は諸君に何かしらの學びを與えることを目的とした場ではない」

霧生が試すように放った《気當たり》に背筋をばす生徒達。ニヤリと口元を歪め、また続ける。

「外(ほか)でもないこの俺が、自分のためだけに勝利を得る講義だ。この場に集まって貰った諸君には俺と勝負をしてもらう」

「つまり……先生が雑魚狩りをするための講義ってこと……?」

大多數の生徒には周知のものであったが、知らずに足を運んだ者の一人が疑問の聲を上げた。

「ご名答」

霧生は全く悪びれずに肯定する。

圧倒的な勝利は極めて爽快だ。

そのを否定することは、手にした勝利に対する侮辱であり、それゆえに霧生が愼むことはない。信念に基づいた雑魚狩りなのだ。

何より手當たり次第に得る勝利にも學べることはある。

とはいえいつも圧倒的になってしまいがちなだけで、まだ見ぬ猛者が挑んできてしいという想いも強い。クラウディア達のような、際立って熱い視線を向けてくる彼らを雑魚とは呼べない。

「勘違いしていた奴は今から逃げ帰ってもらっても一向に構わない。その場合、俺の不戦勝になるがな」

軽くざわつく大講義室。だが前とは違って席を立つ生徒は一人もいなかった。多くの生徒が覚悟を決めてここにやってきているため、多の同調圧力もあるだろう。

念の為しばらく待ってから、霧生はパンと手を打った。

「じゃあ早速始めようか……と、言いたい所だが、ここにいる全員を相手にするのは流石に時間がかかりすぎる。

そこで今日は諸君に、俺への挑戦権を賭けたバトルロワイヤルを行ってもらう」

「まず勝負の容を教えてくれよ」

待ち切れないといった様子のクラウディアが口を開いた。逸る気持ちも分かる。この3ヶ月の研鑽を試したくて仕方がないのだろう。

説明するよりやって見せた方が早いかもしれない。そう思った霧生は講義機からしスペースを挾んで彼の正面に立った。

「いいだろう。クラウディア、前に出てくれ」

「ああ」

席を立ったクラウディアが側面まで來る。を開き、彼と向かい合った霧生は両の手を脇に差し込み、仁王立ちをした。

「今日の勝負は《無抵抗(ノーレジスト)》の打ち合い────ビンタ勝負だ!」

「……相変わらずイカれてるな、お前」

「ルールは簡単。魔強化による補助は一切無し。どちらかが負けを認めるか気を失うまで、ひたすら頬を互に打ち合うのみ。鍛え上げたを競い合う勝負だ」

告げると、そのタイミングでそこそこの數の生徒が次々と講義室を抜け出していく。

ビンタ勝負となれば、武側か魔側かどうかで得手不得手もあるので致し方ない反応だ。

しかし勝利學は霧生のための講義。配慮無く霧生が好きな勝負を選ぶ。

「よし、手本も兼ねて実際にやってみるぞクラウディア。先手はそっちでいい、打ってこい」

に左頬を差し出す霧生。

「じゃあ、本気で行くぞ」

「當然だ。遠慮するな。

タイミングを伺って、思い切り助走をつけて、そう、最高の條件で打て」

クラウディアが後退し、構えを取った。

平手に備え、霧生はぐっと歯を食いしばる。目を確実に見開き、肺に空気を目一杯溜め込む。

《抵抗》無し、補助無しで行うビンタ勝負は、《気》の総量や質といった、的な才能の差を大きく埋める。

……かといって純粋な腕力だけでは決して勝てない、奧の深い勝負である。

間に存在する膂力の差も、人間が本來扱える力を全て引き出して比べれば無いに等しいものだ。

それを知らない者は、たかが生のビンタだとタカをくくって霧生への勝利に甘いみをじるだろう。

ジリジリと適切な間合いを注意深く慎重に測るクラウディア。

そして力の直後、彼が大で踏み込んでくる。しなる右手が迫り、その作を隅々まで目に捉える。

フェイントを予想し、見てからでも遅くはないが、どのように踏ん張りを効かせるか直前まで決めない。

「だァァァァッ!!」

バチン!!

霧生の左頬にクラウディアの平手が衝突した。グンと視界がぶれ、平手の進行方向に勢い良くが傾く。

その姿勢のまま、霧生はジンジンと熱を帯びてきた頬をった。

「いいねぇ」

を起こし、クラウディアを見やる。

はみるみる険しい表になっていった。

おそらく、たった一度打っただけで、素の技量が未だ掛け離れていることを悟ったのだ。

やはり彼にはんなものが見え始めて來たようだ。格の割に丁寧で、かつ大膽さもある研鑽には優秀な師の存在が伺える。

杖、お前が遠い」

俯き、力無くらすクラウディア。

「なんだ、もう降參か?」

消沈するクラウディアの瞳を霧生は覗き込む。

拍子抜け、というわけではない。力が実る前に、先んじて目が養われていることに心していた。

「……いいや、打ってくれ。お前への対抗心を失いたくない」

それを聞いて霧生は迷わず踏み込んだ。

手刀で空を切り、衝突の間際に合わせて向きを変え、力を込める。剛力ではない、當ての中には相手の重心に合わせた力加減がある。クラウディアの左頬に、一瞬にして霧生の平手が吸い込まれた。

バチィィィィン!

問答無用で吹き飛んだクラウディアが講義室の壁にぶち當たる。天井からはパラパラと砂埃が落ちてきた。

砕」

「ぐ、……あ……」

「またいつでもかかってこい。お前が強くなるのが楽しみだ」

それだけ言ってクラウディアから目を離した霧生は、すっかり靜まり返った講者達へと向き直った。

「とまあ、こんなじだ。ようこそ、勝利學へ」

    人が読んでいる<【書籍化】學園無雙の勝利中毒者 ─世界最強の『勝ち観』で學園の天才たちを─分からせる─【コミカライズ決定!】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください