《《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜》抱きつかれて呼吸困難

「遠慮させていただきます。王殿下はきっと、なにかを勘違いしていらっしゃるのかと」

しばらく考えたのち、俺はそう提案した。

――今まで剣もったことのない人間が、《勇者》の稱號を授かる……

そんなこと、てんでおかしいもんな。

俺はたいして強くない。さっきのデスワームだって、みんなに恐れられるほど強くなかったのだから。

「そ……そんな……」

俺の斷りに、ルリスが絶に陥れられたような表を浮かべる。

「あなたしかいないと思っていたのに……絶対、あなただと思ったのに……」

「う、うぐ……」

泣きそうになるに、わずかながら心が揺らいでしまう。

繰り返しになるが、俺の異経験はほぼゼロ。

こういうのには本當に弱いのだ。

「お願いします。普通の勇者よりお金をもらえるように計らいますから……どうか、勇者になっていただけませんか?」

「ふ、普通の勇者より……?」

「はい! 五十倍……いえ、百倍は上げてもらいます!!」

「いや! いやいやいや! ちょっと待ってください!」

さすがに百倍はいきすぎだ。

たしかに金はほしいが、別に大金がしいわけでもない。両親の生活をしでも助けることができれば、それだけで嬉しいのだ。

「でも、そうか……。お金もらえるのか……」

勇者――

常に死の危険と隣り合わせの、危険極まりない稱號。

改めて考えてみても、俺にはまったくの不釣り合いだ。

それでも……両親は苦しいなかでも手をかけて俺を育ててくれた。自分も腹を空かせているのに、それでも俺に食事を分けてくれていたのだ。

俺の長のために。

俺の笑顔のために。

だったら――俺だって、命を張るべきかもしれないな……

「わかりました。報酬は倍にしなくて構いませんので……。俺に、勇者をやらせてください」

「…………! 本當ですか……!?」

「ええ。力不足だとは思いますが、俺の力が、しでも役に立つのなら……」

「やったぁ! ありがとうございます!!」

「――――っ!」

にいきなり抱き著かれ、俺はしどろもどろになってしまう。

その、なんだ……ルリスはスタイルがめちゃくちゃいいからな。

もびっくりするくらい大きいので……當たってしまうのである。

しかも顔に。

「ふがふが……! お、王様、呼吸が……!」

「これで國も私も(・・)安泰です! ありがとうございますっ!!」

「わ、私も……?」

なんだ。ルリスはなにを言っている。

理解に苦しむところだったが、ここは衆人環視の真っただ中。

王族に抱き著かれている俺を見て、男は羨ましそうに……そして(なぜか)も羨ましそうにしている。

「お、お、王殿下……! そろそろ窒息してしまいます……」

「はっ!!」

やっと我に返ったのか、ルリスが慌てたように俺からを離した。顔が真っ赤っかである。

「ご、ごめんなさい……。これでやっと、レオンの魔の手から逃れられると思いまして……」

「レ……レオン?」

気息を整えながら、その名を反芻する俺。

……驚いた。

そこでその名が出てくるか。

ここ一帯の領地を収める、レクドリア家……

レオンはその領主の息子である。

そしてまた、でっぷり太ったが特徴の、なんとも意地の悪い奴だ。

しかも俺と同い年ということもあり……事あるごとにちょっかいをかけてくるのだ。

――おまえ、そんなことも知らねえの? 貧乏人は勉強もできなくて可哀相だねぇ?――

――かはは、なんだそのダッセェ恰好はよぉ! 親が貧乏だと可哀相だよなぁ!? 生きてる価値ねぇんじゃねえのぉおおおおおおおおお?――

――えっ、おまえのスキル《全自レベルアップ》だってぇ? 貧乏人はスキルもクッソザコだなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!――

こんな意地の悪いセリフを、何度も吐いてくる男だった。

だが……腐ってもこいつは領主の息子。

そしてまた、大貴族の息子でもある。

筋だけはたいしたもので、授かったスキルは《魔法の全使用可》。

この世のありとあらゆる魔法を使いこなすことができる、見るからに最強格のスキルだった。

だから出世は間違いないと思われたのだが――どうしてその名が王から出てくるのだろうか。

「つ、積もる話は馬車でしましょう。王都まではそこそこ距離がありますから……」

そう言って、ルリスは近くの馬車屋まで歩いていくのだった。

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