《《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜》無雙への序章

「はぁ!? ブラックタイガーですかい!?」

「ええ……。信じがたいことに、Aランク級の魔が出現してしまったのです」

――やはり、尋常でない事態が起きていたようだな。

馬車を出てみると、者がなにかを言い合っているのが見える。

しかももう一方のほうは……冒険者だろうか。

頑丈そうな防にまとっているし、武も上等そうなものを持っている。そのなりからして、おそらく上位クラスに位置する冒険者だろう。

それに、さっき聞こえてきた《ブラックタイガー》という言葉……やはり、尋常でない出來事が起こっていると思わざるをえない。

「あ……あの、どうされたんですか?」

俺がそう話しかけると、

「お……お客さん。すまねえ、びっくりさせちましやしたね」

まずは者が頭を下げてきた。

「い、いえ。それはいいんですが……。どうされたんですか? ブラックタイガーという言葉が聞こえてきたんですが……」

「ああ……そう。そうなんだよ」

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代わりに答えたのは冒険者のほうだった。

俺より年上の……25歳くらいだろうか。整った顔立ちの男で、なりも清廉されている。

「この近辺にブラックタイガーが出現してね……。それがAランクの魔ともなれば――君にもその脅威度がわかるだろう」

「Aランクの、魔……」

となると、さっきの巨大ミミズ――デスワームと同じ危険度ということか。

それほど兇悪な魔が、立て続けに二度も――

なんだかきな臭いな。

たしかに最近は魔が大量発生しているとはいえ、Aランク級の魔が、こうも立て続けに現れるとは――

「Aランクの魔となれば、私たち冒険者も油斷はできない。戦線はSランクの冒険者たちに任せて、私たちは民間の人に危害が及ばないよう、こうして見張っているわけさ」

なるほど……そういうことか。

通行止めの理由は最も。冒険者を責めるいわれはないのだが――

「……ルリス。遠回りをするとなると、ここから王都まではどれくらいかかる?」

「そうね……。三日はかかるかも……」

帽子を目深にかぶったルリスが、小聲で答えた。

「み、三日か……」

けっこう遠いな。

本來は橋を渡っていくはずのルートを、ぐるっと遠回りするわけだからな。それくらいかかるのも無理ないか。

「お客さん、代金は返卻しやす。ここは引き返したほうがいいんでねえでしょうか」

「はい。そうですね……」

さすがにAランクの魔となれば、俺の出る幕はない。

さっきのデスワームだって、ほぼ偶然倒せたようなものだし――

――――

【全自レベルアップ】によってアルバートのレベルが上がりました。

レベル:313

攻撃力:29490

力:28201

魔法攻撃力:38821

魔法防力:31906

速さ:57812

神域覚醒まで:あと687

★レベル向上により、使用可能なスキルが追加されました。

使用可能なスキル一覧

・【鑑定】

★【闇屬魔法】

――――

「…………っ?」

なんだ? またなにかが見えたぞ。

率直に言えば、さっきからずっと同じような文字列が視界に浮かんでいるような気はしていた。

レベル313……全然よくわからないが、そんな文字が見えた気がする。

しかも《使用可能なスキル一覧》に、【鑑定】と【闇屬魔法】という項目があったんだよな。

てんでおかしい。

俺のスキルは《全自レベルアップ》という、明らかな外れスキルなのに。

――と。

ゴォォォォォォォォォオオオオン!!

けたたましい轟音が響きわたってきて、俺は思わず肩を竦ませた。しかも心なしか、周囲一帯が激しく揺れたような気さえする。

「な、なんだいまのは……!?」

知らず知らずのうちにそう呟く俺。

もしかしなくても、いまの轟音、ブラックタイガーの出現地點から聞こえてきたような……

「ま、まさか……!? Sランクの先輩たちでさえ……!!」

冒険者が顔面蒼白になり、ぶるぶると全を震わせた。

「くっ、仕方ない……! ここは私が出る! 君たちは絶対に引き返すんだ!! いいね!」

最悪の狀況を想定したのか、見張りをしていた冒険者たちが続々と走り出していく。見張りに人員を割いている余裕さえもない……といったところか。

「こ、ここは危ない! 逃げましょう、お客さん!」

者も顔面蒼白といった様子で引き返そうとする。

――が。

「……行くの? アルバート」

ルリスが、ぎゅっと不安そうに俺の手を握ってきた。

「ああ。戦闘経験もない俺だけど……一応《勇者》を任されるだし。できることはしておきたいと思ってね」

「うん……わかった」

なんだろう。

一瞬だけ、ルリスの聲に《切なる》がこもっている気がした。

――俺たちは、仮初の人のはずなのに。

「絶対、帰ってきて。負けたら許さないから」

「うん。負けないさ。絶対に」

俺はルリスの頭をぽんとでると――

気持ちを切り替え、戦線へと走っていくのだった。

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