《《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜》尊敬される意味がわからないんですがそれは

「ギュウアアアアアアアアアア!」

依然としておぞましい雄びをあげるブラックタイガー。

――相変わらず、すさまじいまでの音圧だな。

あいつがぶだけで周囲の空間が歪んでいるし、木々でさえ大きく揺れている。至近距離であの咆哮を喰らってしまったら、間違いなく鼓を持っていかれるだろう。

見るからにヤバい魔だ。

けど――あいつのレベルは145で、俺はその倍近くある。

もしさっきの《鑑定》容が本當だったら、もしかすれば……

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!」

俺も負けじと大聲を張り、側からありったけの力を解放する。

たったそれだけで――驚くべき現象が発生した。

周囲に激震が発生し、突風が舞い……まさに嵐と地震が同時に起こっているかのような天変地異が引き起こされたのである。

――いや。

「嵐」と「地震」という言葉ですら、生溫いかもしれないな。

まさに世界そのものが悲鳴をあげているような、この世の終わりかのような――大激震が引き起こされたのである。

「……わわわっ!」

「噓……。人間に、これだけの力が出せるっていうの……?」

エリを始めとする多くの冒険者たちも、この現象には戸っているようだ。

そりゃそうである。

俺だって驚いているからな。

「信じられない……。わ、私は、あんな強者(つわもの)を帰そうとしてしまったのか……」

さっき見張りをしていた冒険者でさえ、戸いの聲を発している始末だ。

「あ、あの! アルバートさん!」

ふいに、エリが背後から話しかけてきた。

「よろしければ、剣、お貸ししましょうか!? いま、なにも持ってないですよね!?」

「剣……?」

そうか。たしかにそうだな。

一般に冒険者というのは、なんらかの武を用いて戦うものだ。もちろん例外の冒険者もなかにはいるが、その場合でも魔師だったり支援役だったり、どちらかというと後衛タイプに屬するはず。

俺のように素手で戦う者は、たしかに多くないかもしれないな。

知らんけど。

「いや……いいですよ。剣は邪魔になる」

「へ……? じ、邪魔?」

「はい。無駄なきが生まれてしまうので」

殘念ながら、俺は剣を握ったことがないからな。

慣れない武を扱うよりは、そのままぶん毆ったほうが効率がいいだろう。特にブラックタイガー相手には、決して油斷はできないしな。

「む、無駄なきが生まれるって……。なんて渋いことを……」

「あれが高みに立った達人の戦い方か……」

――のだが、冒険者たちにはよくわからない方向で捉えられてしまっていたらしい。

どういうわけか、尊敬の眼差しで見つめられてしまっている。

なんか知らんが、誤解を與えてしまったのかもしれないな。あとできちんと訂正しておかねば。

「さて……」

俺は改めてブラックタイガーと対峙すると。

「さっきの鑑定結果が正しいのか……レベルっていうのはいったいなんなのか……確かめさせてもらうぞ」

俺はぼそりとそう呟くと。

咄嗟に駆け出し、瞬時にしてブラックタイガーの後ろに回り込んでみせた。

「ギッ!?」

だが當のブラックタイガーはまったく気づいてないようだな。

俺を見失ったとばかりに、きょろきょろと左右を見渡している。

「こっちだ!!」

俺は大聲を発するや、そのまま奴の尾めがけて毆打を敢行。【全自レベルアップ】のおかげか、今までで一番力を出せた一撃だった。

「ギュアアアアアアアアアアアアアア!!」

ブラックタイガーは先ほどよりも數倍苦しそうな悲鳴をあげ、またも吹き飛んでいった。

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